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破邪魔法

 破邪魔法――言葉だけなら聞いたことがある。


 一般的に使用されている魔法とは異なり、破邪魔法とは古代呪文(エンシェントスペル)の一種では今はほとんど失われたと聞く。しかし一部の人間には未だ受け継がれており、最も有名な使い手が聖地『セフィラ』にいる聖女セレスティナ様だ。


 最も魔界門に近い場所にあるセフィラが平穏を保っているのは、セレスティナ様と側近の大魔導士(アークウィザード)大僧正(アークプリースト)が都市全体に破邪魔法で結界を張っているからである。


 もちろん俺なんかには使えないはず……だよね? そうティルに問おうとすると、


「ムリね。残念ながらコイツには破邪魔法の適正まではないわ」


 彼女はわざわざ人間の姿に戻り、メディナさんに答えてくれた。


「もしや……貴女様はっ!?」


 いきなり姿を現したティルに、会議の場が騒然とした空気に包まれる。


 まあ、そういう反応にもなるよね。というかティル、毎回人の姿になるタイミングを見計らっていないだろうか? 何か狙っているようにも感じるのだけど。


 (気のせいよ)


 声には出していないければ、視線でそう言ってるように感じられた。そんな俺の心情を余所に、彼女は室内にいた面々を見渡しながら名乗りをあげた。


 「初めまして、 私はティルヴィング。ご存知の通り魔剣よ」


 対して名乗られた人々は理解が追いつかないのか、しばらく呆気に取られた様子だった。しかしメディナさんが我に返ると、ゆっくりと立ち上がりながら口を開いた。


「おお、おぉ……。まさか生きている内にお目にかかることが出来るとは……」


 その言葉には、まるで神に向けるかのような畏敬の念が込められていた。他の将校たちも言葉はないものの、メディナさんと同じ視線でティルを見つめていた。


「まあアタシのことはどうでもいいの。それよりも、破邪魔法だったわね」


 しかし、ティルはそれらを全く気にすることなく話を進める。


「破邪魔法が使えるかは、血筋で決まっている。魔法使いとしての素養がどれだけ高くても、それは覆せない。 だからフリッツには使えない。 簡単な話でしょ?」


「そう、でございますか……。マリク様の後継者たるフリッツ殿ならばもしやと思いましたが……」


 その説明を聞いて、メディナさんの表情にも少し落胆の色が浮かんでいた。


 今の状況を打破する一手になったかもしれないだけに、その反応も当然かもしれない。もし努力で何とかなるものなら、出来る限りのことはやったと思う。だけど使えない理由が血筋とあっては、頑張りようもないのだ。


 室内にまた重苦しい空気が立ち込める。誰もが顔を伏せ諦めの境地になったこの状況で、しかしティルはとんでもない言葉を続けたのだ。


「話を最後まで聞きなさい。フリッツは使えないだろうけど、使えそうなニンゲンに心当たりがあるわ」


「えっ!?」


「な、何と! それはまことでございますか!?」


 あまりの衝撃発言に、メディナさんと揃って声をあげてしまう。


 破邪魔法を使えるかもしれない人物? 確かに長い時を生き続けるでティルならば、一人くらい知り合いがいても不思議ではない。


 しかし魔物たちがいつ攻めてくるか分からないこの状況下では、近くにいなければ意味がない。ティルもその辺りは十分に理解しているはずだけれど……。


「断言はできないけれど、可能性は高いと思うわよ。個人的には、彼女を巻き込むことはしたくなかったけれど……こうなってしまった以上もう避けられないでしょう」


 その言葉を聞いて、頭の中で何かが繋がった気がした。


 この戦いにすぐに参加することができ、ティルが戦いに巻き込むことに引け目を感じる関係。また『彼女』ということは、性別は女性であるということ。


「アタシも前々から気にはなっていたの。()()の回復魔法は、もともと『聖女』の血筋のみ扱うことが許されたもの。でも本人が出生のことを気にしていないようだったから、無理に詮索するようなことはしたくなかったんだけどね……」


 そして回復魔法という神秘の技が使え、出生が謎に包まれた人物。


「こうなってしまったからには、()()のためにも色々とはっきりさせておいた方がいいと思ったわけ。だからフリッツ……」


 それは、もう間違いなく――。


「彼女……サーニャを、ここに呼んでちょうだい」

急遽転職することになりましたので、しばらく転職活動をしながらの投稿となります。

やや更新頻度が遅くなる可能性がありますが、ご了承いただければ幸いです。

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