急使
その日の夜、王の宣言通り宴が開かれた。はじめにクロエの旅立ちが発表され別れを惜しむ声が上がったが、彼女の決意が固いと分かると応援する声に変わった。
王族の旅立ちということもあり、宴は盛大に催された。テーブルにはブレーメンに伝わる様々な料理が並べられ、高価な酒なども数多く用意された。
参加した人達はみな大いに楽しんでいた――そんなときだった。
部屋の扉が勢いよく開かれ、一人の兵士が室内に飛び込んできた。王もその様子に何かを感じ取ったのかすぐさま立ち上がった。
「ご報告致します! ただいまセントシュタットから急使が参りました!」
「なに、急使じゃと!?」
「はっ! 通しても宜しいでしょうか?」
「構わん、今すぐここへ!」
「かしこまりました!」
和やかだった室内が一気に緊張に包まれる。やがてブレーメンの兵士に連れられて傷を負ったセントシュタット兵が姿を表した。
「ひどい怪我じゃ……誰か、直ぐ医者を!」
「わ、わたしが診ます!」
王の言葉に直ぐにサーニャが反応して治療にあたる。
サーニャが魔法を発動すると淡く白い光が兵士を包み、少しずつではあるが傷を癒していく。時間はかかったものの、何とかセントシュタット兵はしゃべることができるまでに回復した。
「……と、突然のご無礼をお許しください。我が王から文を預かってきております。詳細はこちらに」
「うむ」
セントシュタット兵から手紙を受け取ると、ブレーメン王はその中身をあらためていく。そして、その表情がすぐに曇った。
「なんということじゃ……」
そう呟くと、よろめくように椅子に崩れ落ちた。
「王、どうなさいました」
大臣の言葉にしばらく何事かを考えていたブレーメン王だったが、やがて立ち上がるとこう言い放った。
「みな、すまぬが今日の宴会はここまでじゃ。フリッツ殿……相談したいことがある故、玉座の間までご足労頂いても良いですかな?」
「わ、分かりました」
こうして予想外の事態で、宴は急遽お開きとなった。
そのあと直ぐに俺たちは玉座の間へと移動した。そこには国の重臣と思われる人が勢ぞろいしており、先ほどの報せがよほど悪いものであることを示していた。
そして王の口から語られたのは、想像以上に深刻な事態だった。
「セントシュタットが魔物の軍勢に攻められておる」
「なんですって!?」
その反応は誰のものだったろうか?
ただ、この場にいる全員が同じことを思ったのは間違いないだろう。この世界で一番の大国が攻められているのだ。しかも急使を寄こしたということは――。
「状況は劣勢ですか」
「うむ。戦況は極めて不利。至急、援軍を送られたし……とのことだ」
「では叔父上、早々に援軍を送らねばセントシュタットが陥落してしまいます!」
クロエが真っ先に提案するが、ブレーメン王の表情は暗い。
「できることならそうしたい。だが儂は、王としてブレーメンが魔物たちに攻められる可能背も考えねばばらん」
確かにブレーメンとセントシュタットは隣国で、距離もそこまで遠い訳ではない。もし援軍を出した隙を狙われたら、さすがにひとたまりもないだろう。
「儂は王として、自国を最優先で考えなければならない」
「ではセントシュタットを見捨てるおつもりですか、叔父上!?」
「待って、クロエ」
食って掛かろうとするクロエをなだめる。おそらく王も、見捨てるつもりはないのだと思う。援軍は送れなくても、ここに戦力が無い訳ではないのだから。
「俺たちであればセントシュタットに向かえる。そうですよね、王」
「……さすがですな。心苦しくはありますが、現状を考えると儂にはその方法しか思いつかんのです。愚かな王とお思いでしょう」
「いえ、自分もその方法しか思いつきませんでした。それに自国を最優先するのは、王として当然の判断だと思います」
「行ってくれますかな、フリッツ殿?」
「俺は大丈夫です。エレノアは?」
「無論、魔物に苦しんでいる人がいるならば向かおう」
「ありがとう。サーニャは大丈夫?」
「はい! きっと先ほどの兵士さんみたいに、怪我している人がたくさんいますよね。わたしにできることは限られてますが、出来ることをやりにいきます!」
「サーニャに救われる人はきっとたくさんいるよ。ティルは?」
『いいから行くわよ。世界一の大国が滅んだとあったら、目も当てられないわ』
「助かるよ。じゃあ最後に……クロエ、大丈夫かな?」
「も、もちろんです! せっかくわが国を頼ってきたのです。見捨てるわけにはいきません!」
よし、これで全員の確認が取れた。ここから先は、今までにないような厳しい戦場が待っているはずだ。もちろん俺も不安が無い訳じゃない。むしろ不安しかない。
それでも自分が手にした魔剣の意味を、重さを勇気に変えなければいけない。
「よし、行こう! 王、馬車を用意してもらえますか?」
「直ぐに用意させよう。感謝するぞ、勇気ある者たちよ」
王は言葉通り、セントシュタット行きの馬車を半刻で用意してくれた。城門まで出ると日は既に落ち、ここから夜が更けてくるという頃合いだった。
だというのに――。
「空が……」
遠く南西の空が赤らんでいるのが見えた。その方角にはセントシュタットがある。
「急ごう」
御者の人が鞭を入れ、馬車が出発する。ここからセントシュタットまでおよそ3日の行程。それまで何とか持ちこたえてくれるよう、そう願わずにはいられなかった。
何か今回短い……短くない?
とまあ作者の文章作成能力の低さは置いといて、何とブックマーク100に到達しました!
わーぱちぱち。
これもひとえにこんな不定期更新の小説を読んでくれるみなさんのおかげです。
有難うございます有難うございます。100人の人には足向けて眠れないですねー。
このシリーズを始める前に一つの目標としてブックマーク100があったんですが、
10万字超える前に達成できるとは思いませんでした。
今この物語がどれほどの進捗状況なのか作者も分かっていませんが、とにかくエタらないようにだけ頑張りたい気持ちでおりますので、これからもお付き合い宜しくお願い致します。
そして最後にちょっと欲を出しまして……
もし良ければ感想とかレビューとか貰えると作者はそれだけでしばらく頑張れます!(チラチラ)
……やっぱ見なかったことにしてください(;・∀・)




