メロスのメロスによる人民のための王様暗殺計画
メロスのつぶやき
「やれる、やれるぞぉぉぉ・・・」
メロスは激怒した。
かの邪知暴虐の王・ディオニスをこの手で殺さねば、国に平安は訪れぬと。
街で聞いた噂とセリヌンティウスの助言を聞いたとき、腹は決まった。
とは言え、メロスも妹の結婚式を控えた身である。
式は四日後を予定しており、それまでにことを済ませて家へ戻らなければならない。
なにより、毎日のように人が吊るされているのだから、ことを起こすのは早ければ早いほど良い。
暗殺の手順は簡単だ。
王宮へ乗り込み、王の左胸にナイフを差し込むだけである。
問題は、王宮へ乗り込む方法だ。
街で野宿をしつつメロスは考えた。ヒントは街で聞いた噂にあった。
『王は人質を求めている』
これに気づいたとき、メロスは自身が天才なのではないかと思った。
そして、暗殺は必ずや成功するだろうと確信を得た。
翌日、日が高く昇ってから行動に移した。
メロスはナイフを片手に王宮の門番へ高らかに名乗りを挙げた。
「煉瓦職人セリヌンティウスの差し出す人質として、羊飼いメロスが来た」
「王よ!その面を見せろ」
びっくりしたのは門番である。
煉瓦職人の人質などという訳の分からない男が、凶器を片手に不遜にも王へ顔を見せろと宣うのである。
帰れ、帰らぬと押し問答をした結果、メロスは、兵隊に簀巻きにされて牢にぶち込まれたのである。
報告は王にも届いた。
これまで、王宮に引きこもり臣下を信じれず吊るし続けた王は、国民の不満を知る機会がなかった。
そもそも、王自身を取り巻く権力闘争が人間不信に陥れたのだから、王の標的はあくまで権力者だけだった。
そこへもって、メロスの騒ぎはまさに寝耳に水で、ますます人間不信をこじらせてしまう。
「早急に手を打たねばならぬ」
「見せしめにしよう」
「二度と暴動が起こらないよう、恐怖を煽らねば・・・」
門番のつぶやき
「メロス君、王が人質を求めているのは王宮の権力者に対してなのだよ・・・」




