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「サン・ジェルマン少年と謎の妖精」(セーラー服と雪女 第15巻)  作者: サナダムシオ


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⑨ 彼女の出身地

「ただ、肝心のタイムマシンのバッテリー性能が、この時代の材料で作ると限界が有るから…手巻き充電に頼らなければならないっていうのが、がっかりポイントなのよねえ。」

 妖精さんは最後に、残念そうにそう言った。


「…ねえ、妖精さん。」

 おもむろにサンジェルマン少年が訊く。

「なあに?私のサン・ジェルマン。」

「貴女は何処からやって来たの?この地図でいうと、どの辺なの?」

 当然湧いてくる疑問であった。

 妖精さんは、彼にヒントを与えることにした。


「それはね…。」

「…うん、うん。」

「…秘密よ。」

「え~。」

「ウソ、ウソ。貴方たちが、ジパングとかジャポンとかって呼んでいる場所よ。」

「…聞いたことがあるぞ。確か…ここだね?」

 彼はそう言うと、スペインより遥か東の、小さな列島を指さす。


「そうよ。いつかきっと、貴方の方から私に逢いに来てね?」

「うん。でもこんなに小さな島なら、妖精さんを探すのはきっと簡単だね?」

「…そうかもしれないわね。」

 そう言うと、彼女はにっこり微笑んだ。


「それでね…貴方の時間であと5年もしたら、私は元の世界へ帰るわ。」

「えっ、そうなの?」

 彼女からの突然の別れの予告に、びっくりする少年。

「実はここに顔を出すことだって、ルール違反なのよ。」

「あっ、タイムトラベルのルール…。」

「そうよ。貴方も分かって来たじゃない。上出来よ。」


「…でもね、貴方の青春時代は史実に出ていないのよ。だから私がコッソリ貴方に関わっても、ギリギリセーフかなって…。」

「…。」

「そして、貴方がタイムトラベラーになるのは、確定された史実なの。ところが、そこに至る過程は誰も知らない…と、言う訳なの。」

「…なるほど。」


「そんな訳だから、これからも暫くは、貴方にタイムトラベルの手ほどきをしてあげるわ。」

「うん、ありがとう。よろしくね?」

 彼にカワイイ顔でそんな風に言われると、彼女の心にも若干の罪の意識が湧いてくるのであった。


「そうと決まれば…。」

 彼女は慌てて話題を替える。

「なあに、妖精さん?」

「貴方…外国語は得意かしら?」

「将来、社交界で必要だからって、家庭教師がフランス語を教えてくれているけど…。」


「…他には?」

「芸術の勉強に必要なイタリア語とラテン語を少々…。」

「スペイン語、フランス語、イタリア語、ラテン語かあ…まあ上出来ね。でも英語とドイツ語、ギリシア語、それに中国語と日本語の勉強もやっておきましょうか?」


「…どうして?他の時代の人とは関わっちゃダメなんでしょ?」

「ここからはルールの第二段階よ。その原則は踏まえた上で、大きな歴史の変動が無いように配慮しつつ、貴方の良心に従って行動するのよ。それが正しいオトナの振る舞いよ。できるわね?」

「ええっ!?」

 突然の要求のレベルアップに、当惑してしまうサン・ジェルマン少年であった。



挿絵(By みてみん)


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