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「サン・ジェルマン少年と謎の妖精」(セーラー服と雪女 第15巻)  作者: サナダムシオ


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⑦ 彼の理論

 周りの景色が見る見る滲み出す。

 まるで自分が凄いスピードで駆け抜けているようだった。

 そんな現象に対して、おっかなビックリの少年の心を落ち着けるように、妖精さんが彼の耳元で、優しく話しかける。


「この機械の基本理論を考えたのは、貴方の時代から200年以上後のニコラ・テスラという科学者なの。でもそのままでは危険な現象が起きるので、未来の貴方自身が、装置に改良を加えて完成させたのよ。その事実を、貴方は誇るべきだわ。」

「えっ、僕が?ホントに!?」

「いつも言ってるでしょ。私は貴方にウソをつかないって。」

 まあ、その情報を、杉浦鷹志君からリークして貰った件については、言わないんだけどね…などということを彼女は思っていた。


「今この装置を中心とした半径1mの空間ごと、別の時空に移動しているのよ。だから離れたら危険なの。分かるわね?」

 ああ、だから抱きしめられたのか。少年は少しがっかりした。

「あら、がっかりした顔ね?」

「えっ、ああ、ううう。」

「そんなことが無くても、あなたのことは抱きしめたくなるくらい好きよ。」

「…。」

 少年の顔は真っ赤になった。


 彼がそんなことを囁かれている間に、周囲の風景の滲みが無くなり、すっかり落ち着いたモノになった。

 二人は無事に目的地に到着したようだった。


「さあ、着いたわよ。」

 妖精さんはカバンのフタを閉じると、それを右手に下げて歩き始めた。

 どうやら目的地は、目の前の洞窟のようだ。 

 妖精さんの色香にアテられて、ボウっとしていた少年は、慌ててその後をついて行く。


 洞窟の中に蠟燭の灯かりが見えて来た。

 二人は足音を立てないように立ち止まり、コッソリと奥の様子をうかがった。

 地面には藁が敷き詰められ、女性が横たわっていた。

 その傍らに桶のようなものがあり、中には、やはり藁が敷き詰められ、その上に布にくるまれた赤ちゃんが寝ていた。

 そしてその二人を跪いて見つめる、長い髭を生やした一人の男性が居た。


 あれっ?どこかで見たような場面だぞ。少年はそう思った。

 そしてそれが、自分が生まれたばかりのあの場面に似ているのだ、ということにすぐに思い当たった。

 少年は妖精さんの方を振り返ると、彼女も黙って頷いていた。


 そしてマシンに入力した日付を思い出した彼は、身体に震えが走るのを覚えたのだった。

 ここは、ベツレヘムの洞窟だ。

 そして今、目の前に居るのは、ヨセフ、マリア、そして赤ん坊は、あのイエス・キリストだ!


挿絵(By みてみん)

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