↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
54/67

第31話

――三智慧人


 6月18日、金曜日、午後5時。

 今日も俺達は神戸市灘区の契約駐車場に止めているハッキングカーに集まって、通信データの解析に勤しんでいた。

 ただし、今日は昨日までと決定的に違うことがある。

 俺達は、火曜日から3日間、パケットキャプチャーツールが収集した通信データをチェックして被疑者と無関係な生徒が使ってる端末を除外し続けた。

 そして、ついに俺達は青山由紀、菅野直美、野田佳代の3人が使っている端末の特定までたどりついた。


「このチャットアプリのメッセージ、『ユッキー、部活のあとカラオケ行かない?』は、青山由紀をカラオケに誘うために送信されたものだと思います」

「で、このメッセージに対する返信が『オッケー、午後6時まで練習あるから、終わったらナミのところにいく』だから。これは青山由紀が、菅野直美宛に送ったメッセージね」

「ということは、このメッセージを送信したアイフォンが推定、青山由紀と菅野直美のパルスフォンだな。でも、大丈夫か?」


 メッセージに記載されているのはあだ名なので、似た名前の別人の可能性がある。


「100パーセント確実とはいかないですが、可能性は高いと思います。青山由紀と菅野直美は、SNSでも同じように「ユッキー」と「ナミ」というあだ名呼びで会話しています。

 パケットキャプチャーツールが受信している通信データは星華高校の教師と生徒に限定されているので、同じ学校に同じあだ名で呼び合う生徒が2組存在する可能性は低いと思います」

「確実とまではいかなくても要監視対象とするには十分だな」


 3人目の野田佳代についても、青山由紀と菅野直美の二人からカヨと呼ばれている生徒宛のメッセージを見つけたことで、彼女が使っている通信端末を特定することができた。

 『売春強要グループ』の中心メンバー3人の使用端末を特定できたのは大きな進歩だ。

 しかし……。


「こいつら犯罪の手掛かりになりそうなメッセージ送ってないな」


 3人を要監視対象として、過去三日間にパルスフォンから送信された通信記録を全て確認したが、いじめや犯罪を匂わせるメッセージは見つからなかった。


「青山由紀はダンス部の練習や動画配信活動で忙しそうだし、ほかの二人も毎日イジメの相談するほど暇じゃないのかもしれません」

「でも、三日間イジメについて話題が出ないのはさすがに不自然よ。イジメをする奴は弱い子を踏みつけることに快感を得る狂人なの。わかりやすく言うと薬物中毒者に近い、イジメ中毒者。そんな奴らが三日間一度もイジメのことを話さないなんて考えられない」


 イジメ中毒者か。

 『売春強要グループ』が亜沙美の言うような狂人なら、イジメによって快楽を得ることが頭から離れなくなって、イジメについて頻繁に仲間と話し合おうと思うはずだ。


「おそらく、イジメや売春の強要に関する相談は常に口頭で行って、証拠の残るSNSやチャットアプリではイジメや売春に関する話題を出さないようにしているんだと思います」

「でも、こいつらに、そんなこと思いつく知能があるとは思えないんだよな」


 理不尽に他人に暴力を振るうゴミは基本的にバカだ。

 被害者の辛さや悲しみを思いやる想像力がある人間は、イジメや売春の強要なんてバカなことはやらない。

 少なくとも俺の知ってるゴミは短絡的なことしか考えないバカしかいなかった。


「確かにメッセージの内容を見るに3人ともバカっぽいですね……いや……でも……」


 桜歌は両目を閉じ、人差し指を顎に当てて、『売春強要グループ』の頭の中身について考え始める。


「確かに変です。そもそも彼女達が、イジメ被害者に売春を強要しているのだとすれば絶対に必要な通信記録があります」

「絶対に必要な通信記録って?」

「売春の相手方。要するに女の子を買う男性に対するメッセージ送信です」

「あっ、確かに!?」


 金を脅し取るにしろ、仲介料を取るにしろ、買う側の男と連絡しなければ売春の斡旋は成立しない。


「おそらく買う側の男性への連絡はマッチングアプリを使っている可能性が高いです。しかし、3人の通信記録にはマッチングアプリを使った形跡はなかった」

「そもそもマッチングアプリって登録に身分証が必要じゃなかった?」

「はい、大手のマッチングアプリは18歳以上でなければ登録できないし。加えて、未成年者がウソをついてアカウントを取らないように身分証の提示が必要です。私、この点が事件解決のカギになると思うんです」


 桜歌が人差し指をピッと立てる。

 彼女の言う通り、『売春強要グループ』がどうやってマッチングアプリを利用しているわかればシッポをつかむことができる。


「由紀の彼氏が、彼女達の手伝いをしてるとか……」


 香織さんがポツリとつぶやいた一言に俺達は一斉に反応する。


「香織さん、由紀の彼氏を見たことがあるんですか!?」

「いや、無いけど。由紀は人気者だし彼氏くらいいても不思議じゃないと思って」


 香織さんは憶測を口にしただけだったが、彼女の言う通り青山由紀の性格や経歴を考えたら恋人がいても不思議じゃない。


「香織さん、いい推測です。彼女達に成人男性の恋人がいて、その人物が裏で糸を引いている可能性はあると思います」

「でも、チャットアプリには男性と連絡を取り合っている形跡はなかったわよ」


 ここでまた壁にぶち当たる。

 青山由紀または他の二人に成人男性の恋人がいて、その人物が裏で糸を引いている可能性が浮上したが3人が怪しい人物と連絡を取っている形跡がない。


「成人男性が、未成年と交際すると犯罪として処罰されるので、黒幕は普段使っているパルスフォンで自分に連絡をしないよう指示してるのかもしれません」

「チャットアプリでいじめに関する話題を送信しないのも、黒幕の指示だろうな」


 『売春強要グループ』の3人がゴミのくせに用心深いのは、悪い大人が指示を出していると考えれば合点がいく。


「どうする? 3人が使っている端末以外の通信記録をもう一度洗ってみる」


 亜沙美が全ての通信記録をしらみつぶしに調べることを提案すると桜歌は静かに首を振った。


挿絵(By みてみん)

ご拝読ありがとうございました。 私の作品が、皆様の日常のちょっとした楽しみになれば幸いです。


【読者の皆様へのお願い】 下にあるポイント評価(星マーク)は、作品のランキングに直結する非常に大きな力になります。 「面白かった」「今後に期待」と思っていただけましたら、応援のつもりで星をタップしていただけると嬉しいです!


頂いた評価や感想を糧に、さらに面白い物語を届けていけるよう頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。