第一章8 アラクネ
四人は洞窟の最奥部へとたどり着いた。そこはドーム状のだだっ広い空間で、至る所に蜘蛛の巣が張っていた。一見、何もいないようだ。
「何よ、何もいないじゃない。」
カテリナがつぶやいた。と、その時-ーー
「よく来たわねェ!」
上から女の声が聞こえた。四人は見上げた。すると、天井に何やらデカい化け物が張り付いていた。
「ちょうどお腹が減ってたトコなのよォ!」
そう言って化け物は天井から地面に落ちてきた。
ドーーーン!
化け物は地面に着地した。土煙がおさまると、その全貌が明らかになった。
それは体長5メートルはある巨大な蜘蛛だった。それだけでも十分化け物なのだが、その蜘蛛の背中からは人間の女の上半身が生えていた。どうやらそいつが本体らしい。
「あらぁ、アンタ中々いい男じゃない。おいしそうだわぁ。」
「お生憎、俺らはアンタを倒しに来たんだぜ。」
「あら、冷たいのね、アタシはアラクネよ。よろしく。」
「へえ、そうかい。」
そう言ってカズキは剣を構えてアラクネに突進した。すると、アラクネは蜘蛛糸の弾丸を吐き出して攻撃してきた。カズキはそれを華麗に回避すると、アラクネに一閃をお見舞いした。
「ぐあーっ!」
アラクネは痛そうに呻いた。かなり効いているようだ。
「おのれ~っ!」
アラクネは恨めしそうにカズキを睨んだ。
「へへ。どうだ?効くだろ。」
しかしその瞬間、アラクネはにやりと笑った。
「何だ。何がおかしい。」
「確かにアンタは中々強いわ。でも仲間を見てみな!」
「ま、まさか!」
カズキは後ろを振り返った。すると先ほどアラクネが吐いた蜘蛛糸弾が女の子三人に命中し、三人は壁に貼り付けられ身動きが取れなくなっていた。
さらに、蜘蛛糸はどういうわけか女の子たちの体に縦横無尽に絡みつき、亀甲縛りの形で女の子たちを緊縛していた。
ああ、仲間がこんな辱めを受けた時には、男たるもの怒りで燃え、すぐにでも助けようとアラクネに襲いかかるべきなのだが、カズキは違った。彼は正直興奮してしまっていた。仲間の女の子があられもない姿になっているのを見て歓喜し、その光景に数秒見入ってしまった。そして天罰が下った。
「隙ありっ!」
アラクネはカズキに蜘蛛糸弾を発射した。カズキは女の子の痴態から目が離せず、反応が遅れた。そして蜘蛛糸弾はカズキに命中した。糸はカズキの体に絡みつき、やはり亀甲縛りになった。
「ぐあーっ!」
「アハハハ!いい気味ね!」
「ちょっと!アンタまで捕まってどうすんのよーもう!しかも男の縛りプレイとかだれに需要あんのよ!」
カテリナが叫んだ。ユイが顔を赤くしてカズキをガン見していた。不覚だ。なんて様だ。元魔王ともあろうものがこんな辱めを受けるなんて!
「その糸わねぇ、どんなに強く引っ張っても決して切れない特別な糸なのよ。」
確かに、この糸は超硬合金のように硬く、とても筋力では切れそうになかった。
「さァ、それじゃゆっくり頂くとしようかしら。おいしそうな坊やは後にとっておいて、まずは不味そうな女どもからね。」
そう言って、アラクネはカテリナに近づいて行った。
「イヤー!来ないで―っ!」
カテリナは頭を振り、足をばたつかせてもがいた。やはり糸は切れない。アラクネがカテリナに手を伸ばした。
やれやれ仕方ない。この力はまだ使いたくなかったんだが、状況が状況だ。少し本気を出させてもらおう。カズキは魔王の力を解放した。
バアアアアアン!!!
激しい爆発が起こった。爆風でアラクネは吹っ飛び、壁に激突した。そしてカズキの体は黒い炎に包まれ、カズキを縛っていた糸は黒炎で焼かれ消失した。この地獄の炎に燃やせぬものなどない。
「何だ?何が起きた?」
アラクネは叫んだ。
「ククク・・・お前は俺を怒らせた。地獄の業火で焼かれて死ねェ!」
「そんな、この力は・・・まさか!」
「ヘル・フレイム!」
そう叫び、カズキは手をアラクネに向けた。カズキの手から黒炎の渦が放出され、アラクネを飲み込んだ。
「ぐあああーっ!熱いーっ!」
「フハハハハ!よく燃える奴だ。よほど人を食ってきたと見える。灰になれ!」
「ぎゃああああーっ!!!」
アラクネは灰になった。カズキは我に返った。
「みんな!大丈夫か!?」
見ると、三人は先ほどの爆発で気を失っていた。良かった。俺が魔王の力をつかっていたところは見られていないようだ。
そしてカズキは再び、亀甲縛りで気を失う三人の女の子を眺めた。
「絶景だ。」
ーーーいかんいかん。これ以上何かすると18禁ゲームになってしまう。カズキは理性を取り戻し、三人の緊縛を解いた。