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十兵衛、木曽路を駆ける

 武田家が小笠原家に策謀を仕掛けて、大量の国人衆を離反させてしまい小笠原方の勢力を大幅に小さくさせられた頃、武田家と同盟を結んだばかりの木曽家では、天文十四年以来従属させてた東美濃の三塊と呼ばれてる遠山氏(明智遠山氏、岩村遠山氏、苗木遠山氏)が美濃斎藤氏と対立する様になった。


 木曽家当主中務大輔義康は、度々明智城を攻撃してくる斎藤勢を幾度も交戦して追い返していた。しかし斎藤家当主斎藤山城守利政は、今まで争ってた尾張の織田三河守信秀に対して婚姻同盟を結ぶ事に成功した為、斎藤城州は美濃統一障害は離反していた国人衆の討伐を行い始める。


 その中で、東美濃遠山氏は明智遠山氏当主明智兵庫頭光安は、己の妹小見の方を斎藤城州の正室として嫁いでたが男子を産めなく、さらに労咳を患った事で、小見の方が産んだ娘帰蝶姫を織田家に嫁がせた後に明智家に帰されてしまった。


 事実上の離縁を言い渡され、斎藤家と遠山家の主従関係が解消されたのは、木曽家の支配下にあった東美濃を攻める為と言われており、実際に兵六千を庶子長井隼人佐道利に預けて明智城を包囲させた。


 明智城城主明智兵庫頭は、今は亡き兄光綱の子供達十兵衛光秀、藤兵衛信教、作左衛門貞連、佐馬助康秀の四人を援軍要請の使者にして、岩村遠山氏、苗木遠山氏、木曽氏、伊那遠山氏に派遣された。


 四人を援軍要請に派遣する時、明智兵庫頭は甥四人に語り始めた。



「いいか、十兵衛、藤兵衛、作左衛門、佐馬助、もしお前達が援軍要請に失敗してもここには戻らず、明智の血を残して生きろ。お前達は、兄光綱が残してくれた大切な子だ。決して死を急ぐな、泥を(すす)っても明智の血を残すんだ。」


「叔父上、我々はきっと援軍を連れてきますので、早まった事はしないでください。」


「もし明智城が落ちたなら、儂の母上。つまりお前達の祖母は武田家の血が流れてるので、武田に仕官しろ。武田家の甲斐なら、美濃から遠いので斎藤家の追手はやってこられん。」


「・・・・・・・・判りました。それでは叔父上、行ってまいります。」



 長井勢が明智城を包囲する直前に明智兵庫頭の甥達は、早馬として援軍要請に駆けて行った。



 ____________________________________________________________




 十兵衛は、弟達に各遠山家に向かわせて、自分は各遠山家が従属していた木曽家に援軍要請を行いに向い、明智遠山家の急使だと木曽家の関所の代官に伝え、すぐに関所を通り抜けて、木曽谷に入り木曽中務代輔義康とすぐ面会した。



「拙者は、明智兵庫頭光安家臣明智十兵衛光秀也、主君明智兵庫頭から木曽中務大輔様に斎藤山城守が送った軍勢兵六千に攻められてるので、援軍を送ってほしい。」


「何?!斎藤山城守が六千の大軍を東美濃へ派遣しただと!!」


如何(いか)にもその通りでございます。」


「待て待て、明智勢は幾らの兵で籠城しておるのだ?」


(おおよ)そ、千人余りが籠城を行っております。何卒(なにとぞ)木曽中務大輔様の力を御貸しください。」



 十兵衛は、床に頭を擦り付けながら木曽勢の出兵を願い出たが、しかし中々良い返事が木曽中務大輔から貰えないので、どう言う訳か聞いてみた。



「実は十兵衛殿、同盟国の武田家が現在小笠原家を攻めておる。その武田家の要請で、小笠原家の封じ込めに兵を出しており、手持ちの兵が足りぬのじゃ。」


「ならば、明智は斎藤家に降りまするぞ。」


「それは困る・・・・そうだ、もし其方(そなた)が良ければ、一緒に武田殿から兵を借りようぞ。」



 十兵衛は、木曽家が度重なる美濃への援軍で、木曽領内に負担がかかってる事を悟ってか、武田家への援軍要請に承知する事になった。


 こうして明智家の危機を救える武田晴信の元に向かった木曽中務大輔と明智十兵衛は、塩尻の戦いを終えたばかりの武田家への急使として向かった。


 武田晴信は、先程諸将を集めて、対小笠原攻めの軍議を終えたばかりでの所に木曽家から当主義康が訪れた事を知らされた。


「御屋形様、こんな夜更けですが木曽家から当主木曽中務大輔様が訪れました。」



 近習の甘利藤蔵昌忠が木曽家当主が急使となって晴信に面会を求めてる事を求めた為、只事(ただごと)ではないと思い面会を許した。



「武田大膳大夫殿、こんな夜更けに訪れた事誠に済まない。まずこちらの若武者は、明智遠山家の明智十兵衛光秀と申す。実は木曽家に臣従している東美濃の遠山三家に最近尾張の織田三河守と同盟を組んだ斎藤山城守が明智城を包囲した。そこで兵を送りたいのだが、木曽家は今、対小笠原家への封じ込めに兵を出してる状態なので、満足な援軍を送り込めないでいる。そこで大膳大夫殿と相談したいのだが、木曽家の兵を引き上げても宜しいか?」



 木曽中務大輔がその様に申し上げると晴信は思案顔になり、考えを(まと)めた後、木曽中務大輔に聞いて来た。



「木曽中務大輔殿、明智城に援軍を送ると申したが、其方(そなた)は蝮殿と戦うのなら勝機は御座るのか? 中務大輔殿がもし破て東美濃或いは木曽谷まで、斎藤家の版図と化してしまった場合、我が武田への影響も大きくなろう。それならば我が武田からも同盟国木曽家に対して、援軍を送ろうぞ。」



 晴信の言葉に二人は大変感謝し、すぐにでも領国へ知らせると言うので、晴信は子飼いの百足衆岩本右近丞正孝を呼びつけ、明智十兵衛と共に美濃明智城への援軍の急使へ向かうように伝えた。


 さらに現在高遠城から、小笠原勢迎撃の為に出撃中の秋山伯耆守虎繁が小笠原勢が引いた為、丁度遊兵となった為、この場に秋山伯耆守を呼んだ。



「秋山善右衛門尉、其方(そなた)には急であるが、木曽中務大輔殿と一緒に東美濃へ襲来した蝮退治へ向かって貰いたい。こちらも一息着いたなら、さらに増援を送るので明智城を救って貰いたい。」



「分かりました御屋形様。伊那衆と春近衆をお借りして、救援に行くのを御許しください。」



 明智十兵衛は、このやり取りを見てて、秋山伯耆守が自分の変わらぬ年齢なのに、もう一軍を預かる才能を持ってる事に大層驚いていた。


その驚いた明智十兵衛に気づいた秋山伯耆守は、そこで初めて急使に来てた十兵衛に声をかけて不安な気持ちになってると思ってる十兵衛へ、安堵させようと声をかけてやった。



「初めまして木曽中務大輔殿、明智十兵衛殿、(それがし)は秋山伯耆守虎繁と申す。たった今から御屋形様より、明智城救援の将を任じられたので、蝮の軍勢だろうが御屋形様が来るまで命に代えてでも明智城を御護り通すので、安心していただきたい。」



秋山伯耆守は、そういうと木曽中務大輔と明智十兵衛に深々と頭を下げて挨拶を交わした。












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