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高遠家臣団

 俺は早速高遠家の人々に逢おうと思ったら、傅役の安倍加賀守宗貞に止められてしまった。



「四郎様、いくら高遠の名跡を継いでるとは言え四郎様の祖父諏訪刑部様と違い、恐らく武田家への牙を立てる事を未だ忘れてない御仁だと御屋形様は考えてるのだと思います。」


「高遠頼継は、そんなに危険か?」


「危険かと言われれば、危険でしょう。」



 うーむ、俺が高遠家当主として、伊那の家臣達や民衆に認められるには、どうしたら良いだろうか?


 前当主高遠頼継が降伏したのち、俺に名跡を継がせる事を条件に命を助けられ、甲府に出仕させられている。


 その時に高遠頼継と一緒に甲府に上林上野介宗俊、黒河内隼人政信、座光寺頼近、座光寺貞信親子、山田伯耆守頼実、山田弥介実家親子、溝口民部少輔正慶、白鳥四郎重継、桜井源之助重久、春日大和守重慶等が随行してきてる。


 そしたら、まず彼等に認められるか味方に付けるのがいいのか。



「加州よ。今。頼継に随行してる家臣達の代表と話がしたいので、呼んでもらえないか?」


「承知しました。彼等ね一年以上音沙汰なく、甲府に出仕させられてるのも不安でしょうから、呼び出しに承諾するでしょう。」


「呼び出す理由として、今後僕の元で高遠に仕え続けるのかどうか、意思確認を行いたいと。」


「分かりました。これから、彼等に告げて参ります。」



 そういうと安部加賀守は、部屋を出て高遠頼継等に与えられた甲府の屋敷へ向かった。




 ____________________________________________________________




「安部加賀守殿、今回はどのような要件で、この高遠家屋敷へ参られたのか?」



 加州が今話している相手は、前当主高遠紀伊守頼継、つまり四郎の養父になってる人物である。


 本当は、家老職の重臣と話を付けたかったが、武田家からの訪問者が来たとの知らせを聞いた頼継が直接話たいとの要望をされて、今話し合いを行ってた。


 安倍加州は自分がしくじったと思いながらも、四郎が初めて高遠家の者達と話し合いの席を設けたいと言う事を伝えた。


 頼継は、面白くなさそうに鼻をフンっと鳴らして答えた。



「二歳の四郎が家臣共と話をしたいだと? 現当主はあ奴だから、好きにするが良い。」



 そういうとさっさと奥の部屋に入って行ったので、加州は残された家臣達に話を続ける事にした。



「皆様、前当主の頼継様は貴方達にどうやら好きにして良いとの事を言われてましたので、現当主である高遠四郎様が貴方達との面会を求められております。」



 すると高遠家家老の上林上野介を始め、皆が戸惑ってるので、加州は続けて話す事にした。



「四郎様は、御屋形様の血が半分流れてるとはいえ、残り半分の血は諏訪惣領の血。つまり諏訪庶流高遠頼継よりも(とうと)き本家の血が流れてるのです。貴方達は、皆が諏訪庶流で諏訪大明神を護る寄子(よりこ)なのでしたら、高遠家を四郎様が継承する事を(むし)ろ喜ばれるべきでしょう。」



 加州は、頼継と一緒に甲府へ付いてきた家臣団に、明日四郎様の所に出仕するようにと伝えて館を後にした。


 安倍加賀守が去った後、家臣団達は今後どうするかと言う談義が始まった。


 まず最初に語り始めたのは、上林上野介が言う。



「我々が殿と一緒に甲府へやってきてそろそろ二年余りになる。形式上は、武田家へ出仕してるのだが、この度の志賀城攻めにも呼ばれず、我々は武功を上げる機会が無かった。その間にも同じ立場だったはずの諏訪刑部大輔(寅王丸の父)は、従軍を許されて武勲も上げてる。このままだと、幽閉と何ら変わらん。」



 そういうと上林上野介は、床に拳を叩きつけた。


 次に発言したのは、黒河内隼人だった。



「明日、四郎様は出仕する様にと仰せられてるが、我々を家臣として必要としてくれるのなら、領地へ戻る事も許してくれるかもしれん。」


「確かに必要としてるから、御声をかけてるのだろう。」



 皆がこの二年間甲府に滞在してて、最初の頃は武田へ力を貸すものかと意地を張ってたが、最近は逆に我々が居なくても武田家は伊那の統治に困ってないのではないかと、疑ってる雰囲気になってただけに四郎が明日御呼びになった事は、彼等にとってはやっと我々を認めてくれたのかと言う心境だった。


 そしてすかさず大和守が言う。



「我々は、この二年間武田への反骨心を保って、決して協力しないと言う決意で殿の傍から離れなかったが、この二年間武田からは、一切協力を求められなかった。無論、この二年間の間に何らかの圧力もなかったし、伊那の我々の領地からの年貢にも武田家は一切手を付けず、我々の手元に送ってくれた。しかし唯一我々には、何ら従軍の要請も仕事も与えられない為、ただ時を過ぎようとしてる。このまま無役で良いのだろうかと思ってた矢先に、四郎様からの面会の話が来て、(それがし)は、望外な喜びを感じておる。」



 山田伯耆守がそう言うと、誰もがその言葉が自分等の心境を代弁してるように感じた。


 しかし彼等にとっての現当主高遠頼継に対しての忠義心も残ってるので、未だ踏ん切りが付かない心境になってたのであった。


 そこで座光寺頼近が高遠頼継の事を語り始める。



「皆の気持ちは(それがし)も同じだ。しかし殿を見捨てられぬ。そこで、我々から四郎様に殿の処遇を御願いしてみないか。殿と四郎様は高遠の名跡を継いだ時点で、義理の親子関係が発生してるのだから、義父に対して、どうか御寛恕(ごかんじょ)を持って貰う事を条件にしてみるのは?」



 そう言うと皆が頷いて、頼近の意見に反対する者はいなかった。 


 それ程、二年間の無為の日々は、精神的に辛かったみたいで、四郎からまだ具体的な話が言われてないのにもう仕事が貰えたみたいな話を妻や子供達に話してしまった者もいた。



寛恕(かんじょ) 度量広く、思いやりの深い事・ 広い心で許す事

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