三州安祥城合戦⑤
嫡男織田三郎信長の軍勢が造反した織田七郎兵衛信安の岩倉城に攻め込んだ事で、慌てて尾張守護斯波左衛門佐義統に和議仲介の使者山内猪之助盛豊を送った。
守護斯波武衛家の居城清洲城では、斯波武衛家を実質な傀儡にしていた清洲織田家当主織田彦五郎信友が
最初に岩倉織田家の使者からの言上を聞いていた。
「斯波左衛門佐様、織田彦五郎様。 どうか我が主君織田七郎兵衛の窮状を御救い下さい。 我が織田伊勢守家は、現在織田弾正忠家の織田三郎に攻められて御座います。 どうか同族の誼にて和睦の仲介を御頼みもうしたいのです。」
すると織田彦五郎が苦々しい表情を浮かべながら、岩倉織田家への使者に苦言を申した。
「其方ら、現在三河にて今川方と織田三河守信秀の軍勢が当たっておる事を知ってよう。たとえ織田三奉行家が仲違いしてようと国外の敵、それも斯波家の遠江守護を奪った今川家に通じた岩倉織田家を我が御屋形様が和睦仲介するはずが無かろう。 もし和睦仲介を望むならば織田七郎兵衛は隠居して、嫡男織田左兵衛信賢に家督を譲る事が条件だ。」
「なんと御無体な。 その様な条件じゃないといけませぬか!?」
「そうだ。 それが嫌ならば、うつけの織田三郎の軍勢に討ち取られよ。」
山内猪之助は、大層悔しがったか背には変えられず、織田彦五郎からの条件を持ち帰る事を伝えて、岩倉城へ戻った。
「おのれっ、彦五郎めっ!! 儂を排除するのに、うつけを利用する気かっ!!」
「とっ、殿!! ここは御屋形様の仲裁を受け入れなければ、織田三州は岩倉織田家の事を今川方に通じた逆賊として、根絶やしにされる可能性もありますぞ!!」
「蝮殿は、どうなっておる!? 我々に援軍を送る気配はないのか!!」
「今斉藤家では、斉藤山城守利政殿と嫡男新九郎高政殿との確執が起きつつあります。 この様な状況下において、斉藤城州様は、はたして我々に援軍を送る余裕などありましょうか? むしろ娘婿の織田三郎に肩入れすると思いますぞ。」
山内猪之助は、この様な状況に陥る事を理解せず、今川家からの誘いに乗った主君織田七郎兵衛に対して、内心呆れながらも清洲の斯波家の仲介が最善だと言う事を説いた。
「織田弾正忠家の力が数年来負け戦を続けていたのに、想定よりも弱体化していなかったと言う訳かっ!!」
「殿、織田弾正忠家は、想定通り弱体化はしておるでしょう。 ただ織田三州が持っておる津島と熱田の財力が短期間に織田弾正忠家を回復させておるのです。」
「今川方の軍勢は、近いうちに尾張国に雪崩れ込む様子はないのかっ!?」
「安祥城を織田三郎五郎が殊の外善戦しておりますので、まだしばらくかかりそうですな。」
「猪之助!! 其方は。儂の家臣だろっ!! 織田三郎を追い返す策は何か無いのか!!」
「某としては、殿は今川家や斎藤家を当てにし過ぎた結果だと思いまする。 ここは我慢して力を蓄える事が肝心かと思いまする。」
「殿!! 某も猪之助殿と同じ考えに御座いますれば、ここは御屋形様からの仲裁を受け入れましょう。」
「彌助よ、其方も猪之助と同じ事を言うのかっ!!」
堀尾中務丞泰晴は、矢内猪之助の考えに同意して、織田大和守家の存続を重視して、この危機から逃れるべきと進言する。
織田七郎兵衛は、このままでは家臣筋の織田弾正忠家に滅ぼされる事に我慢ならなったが、良い様に今川家に利用された事に大層憤慨して、此度自分の隠居を条件に和議を受け入れる事になった。
数日後、織田三郎信長の元へ尾張守護斯波左衛門佐義統からの使者が、岩倉城を囲む本陣に到着して和議斡旋の書状を渡される事になった。
「織田三郎信長殿、尾張守護斯波左衛門佐義統様から、和議の斡旋を望まれてございます。此度、織田七郎兵衛信安殿が責任をとって隠居する事で、造反した事を赦免してくれぬかと言う事です。」
斯波家家臣織田兵部大輔寛故が、織田七郎兵衛と面会して隠居を条件に和議を受諾させた事を織田三郎に伝えると三郎は、岩倉城を攻め落とせなかった事に不満気になりながらも三河情勢が危機な事を分っていたので、斯波家からの話を受け入れた。
「藤左衛門尉殿、裏切り者との和睦は不満だが、三河安祥城にいる三郎五郎兄上を助けないとないので、此度は譲歩うぞ。 しかし二度目の譲歩は無いと織田大和家に御伝え下さい。」
「確と七郎兵衛殿に御伝えしょうぞ。」
織田大和家の今川家侵攻の動きに呼応した造反劇は一ヵ月余りで収まるになり、織田三郎信長の軍勢は三河に救援すべく移動を開始した頃、三河の情勢は急変していた。
安祥城救援部隊を率いてた織田孫三郎信光と今川勢主力が激突した為である。
最近職場の同僚が退職し、色々やる事多くモチベーションが不安定になっております。




