木下藤吉郎、故郷に錦を飾る
方言は分かりませんので、脳内で変換してください。
四月に四郎の命によって元服を行った木下藤吉郎は、故郷の尾張中村へ戻り家族を迎えに来て、さらに家臣を集う様にと四郎に命じられたので、四月二十日に実家に戻った。
「母ちゃん、義父ちゃん、只今戻ったぞ!!」
商人の丁稚として、家から離れた日吉丸が立派な馬を連れて、まさか刀を帯刀して高遠家に仕える武士になって戻られた事に、実母の仲を始め義父の竹阿弥、それに同父姉の智に異父弟小竹に旭らが驚愕していた。
「日吉丸!! しばらく見ないと思ったらお前さんは武士になっていたのかい!?」
「ああ、運良く武田大膳大夫晴信様の四男高遠四郎様に御仕えする機会を得たんだ。それで一度中村惣郷に戻って、おいらの家臣を集めよと命じられて戻ったのさ。」
「そうなのかい!? それで高遠様からは知行は御幾ら貰ってるのかい?」
「知行三十貫(百二十石)、なので親族以外に何人か高遠へ来てもらおうと思ってる。」
「そしたら何人か与力が必要だね。」
「ああ、詳しい話は明日にでもするべ。」
「そういえば、小竹も旭も大きくなったな!!」
そう言って藤吉郎は、十歳の小竹の頭をガシャガシャと乱暴に撫でて、七歳の旭を胴上げしてやった。
「兄ちゃん、久しぶりだね。 おいら、兄ちゃんが戻らなかったならば、僧侶になれと義父ちゃんに言われていたんだよ。」
「義父ちゃんが小竹を坊主にする積りだったのか!!」
「そうだよ。寺に入れば、おいらの分の食べ物は他の皆に渡るから、これで皆が生きていけると思われたので、行く予定だったんだ。」
「なら、もう心配するな!! 四郎様に仕えたらおまんま腹一杯に食えるようになるぞ!!」
「本当に!?」
「ああ、間違いない。 四郎様は諏訪大明神の生まれ変わりであるので、おいらが知らない知識を一杯知ってるんだ。 その中に貧しき土地の武田家を豊かにする知恵が実践されてきた為、近年は飢饉が起きなくなってきて、近隣諸国からの流民達も仕事に就けるようになってきてるのだ。」
「戦続きの世にその様な事が出来るなんて・・・」
「小竹!! おいらと一緒に四郎様の力になれ!!」
「はい!!」
藤吉郎から、四郎に仕えよと言われた小竹は躊躇なく答えた。
その横で、異父妹の旭が盛り上がってる二人に構ってもらいたくて、自分も家臣になると言い出した。
「日吉丸兄ちゃん、私も四郎様の家臣になる!!」
「旭よ、お前はおなごじゃ。だから四郎様の役に立ちたいならば、強き男の嫁になって、そいつを四郎様の家臣に迎い入れよ。」
「おなごじゃ、武士になれないの?」
「おなごでは、武士になるのは難しかろう。しかし里見様や更科姫様みたいに武芸の達人もおるので、その様なおなごになれば、もしかすると武士として認める者もおるかもしれん。」
「そしたら私は、武芸は五郎助叔父さんから習う!!」
「ならば四郎様に認めてもらえる位、頑張れよ!!」
「はいっ!!」
仲は返ってきた長男がまさか武士になった事に驚き、義父の竹阿弥は昔日吉丸を折檻してた事を忘れて、諸手を上げて大喜びして近所にいる智夫婦を呼んで来たのであった。
「智よ!!弥助よ!! 日吉丸が武士になって帰ってきやがった。 こりゃ百姓から解放されておいらも侍になれるべ!!」
姉の智は同じ中村惣郷の弥助に最近嫁いでたのだが、日吉丸が実家に戻ったと言う知らせを受けて、夫弥助と共に日吉丸に会いに実家に来てた。
「義父ちゃん、ほんと日吉丸が御武家様になって戻られたんだね!?」
「竹阿弥さんよ、日吉丸がどこの家に仕えたのだ?」
「詳しい話は知らないが、まずは帰ってきた事を知らせに来たのだ。お前たち、今夜は日吉丸が戻ったのだから、俺んちで日吉丸の宴をやるから、酒屋で酒を買ってこいやっ!!」
「義父ちゃん、わかったわ。 後お栄伯母さん、お大伯母さん、お松伯母さん、伊都伯母さん、お静伯母さんに伝えてくるわ!!」
藤吉郎が武士になったと言う話は、忽ち惣郷中に知られて邑人達が、一目見ようと藤吉郎が実家に戻った数刻後には木下家に数十人が押し掛けてきた。
すると藤吉郎が見に来てくれた邑人達に大声で声をかけた。
「中村惣郷のみんな!! 今夜はおいらが酒を奢るから今夜は腹一杯飲み食いしてきてくれっ!!」
それを聞いて、木下家に押し寄せた邑人達は大喜びした。
「おおっ!! 日吉丸は信州で侍になった上に我々に酒を奢ってくれるそうだ!!」
「なんと!! 日吉丸は中村惣郷一の出来人だーっ!!」
藤吉郎が奢ると言うと、皆は一度自宅に戻り酒の肴を持ち寄る事となり、集まった邑人達は一度解散して、再び夕方やってきた。
近隣にいる親戚達が武士になった藤吉郎を一目見ようと中村惣郷に駆けつけて、藤吉郎から高遠家に仕えるようになった経緯と武功話を聞こうと集まってきた。
その日の夜、藤吉郎の面白可笑しく誇張された話によって、武士になった経緯を酒を交えながら話をすると親戚や邑人達に大いウケて、その日は深夜まで積もり積もった話を皆と一緒に話をした。
その中で、現在の尾張は今川家の脅威が日々強くなってるし、尾張国内でも織田家同士の争いなどが起きてる為、藤吉郎が高遠家に仕える事になったのを羨望の眼差しで見られていた。
1549年時、未婚や未誕生も含む
木下藤吉郎の親族 父 木下弥右衛門 続父 竹阿弥 母 仲
同父姉 智
異父弟 小竹
異父妹 旭
祖父(母方) 関弥五郎兼員(鍛冶屋) 母仲以下六人姉妹の父親
伯母(仲の姉) 静 静の夫 杉原助左衛門家利
従兄 杉原七郎左衛門家次(行商人)
従兄 杉原源七郎義正
従姉 婿養子杉原助左衛門定利の妻 朝日
従姉 浅野又右衛門長勝の妻 ふく
杉原家次の子 長女あこ(従兄姪) 長男杉原弥兵衛長房(従兄甥)
杉原義正の子 杉原四郎兵衛正次(従兄甥)
朝日の子 杉原孫兵衛家定
くま くまの夫三折全友(医師)
良々(やや、浅野長勝養女) 夫安井弥兵衛長吉(浅野長勝養子)
寧々(ねね、浅野長勝養女) 夫木下藤吉郎秀吉
伯母(仲の妹) 大 大の夫 青木官兵衛重矩
従弟 青木勘七一矩
従弟 青木半右衛門矩貞
伯母(仲の妹) 伊都 伊都の夫 加藤五郎助清忠(関弥五郎兼員の弟子)
従弟 加藤虎之助清正
従妹 由宇
伯母(仲の妹) 栄 栄の夫 小出甚左衛門尉秀政
従弟 小出小才次吉政
従弟 小出孫十郎秀家
伯母(仲の妹) 松 松の夫 福島市兵衛正信(桶屋)
従弟 福島市松正則
従弟 福島助六郎高晴
従妹 光
従妹 杏




