表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ゲーマー令嬢は婚約者を玩具にする  作者: 御月源士郎
学園編
36/36

閑話・ ポヨポヨのお腹は駄目ですか?

「シルフィ!知ってるのよ!最近、レイン様と親しくしてるって」


 最近、何度かレイン様と一緒に昼食を取るようになって、今日も約束をしています。

 それを嗅ぎつけたのか、昼休みに入ってすぐに突撃されました。


「私達にも紹介しなさいよ!友達でしょう!」


 そう私に迫って来ている二人、エフィとマッジは、私と同じ魔導科の女子生徒で、私と同じ生命魔法属性な事から共同課題の班が同じですが、仲の良い友達と言える程でもなく、昼食を一緒に取ることも今まで無かった仲です。

 二人のグイグイ来る姿勢にかなり引き気味になりつつも、押されるままに一緒に食堂に来てしまいました。


「シルフィ!こっちこっち〜」


 笑顔で手を降るレイン様に、申し訳ないとばかりに頭を下げながら、約束もなく友人を連れてくるなんて不快に思われないだろうかと不安になってしまう。


「どうかしたの?」

「レイン様、あの、この子達もご一緒したいとの事なのですが、嫌なら……」

「え?いいよ!女の子の友達が増えて嬉しい!」


 無邪気に笑うレイン様に胸がキュッとしめつけられて、恨めしく思ってしまった。

 私にはそんな事を思う資格は無いのに、それでも『唯一の女友達』で有りたかったなんて……なんて傲慢なんだろう。


 学園に入学してから、レイン様のお噂は聞いていて、貴族のご令嬢達の密かな憧れの騎士、噂の『銀花の貴公子』がどんな方かと興味はありました。

 初めてお顔を拝見した時は、綺麗なお顔立ちだけどキリリとしていて、少し怖そうな人だなと言う印象でした。

 それを覆したのがとある昼休み、食堂が空いているうちに食事を済まそうと移動教室からそのまま向かい、混み始めてきた所で席を立って教室に向かう途中、食堂にお財布を忘れてきてしまった事に気づきました。

 慌てて踵を返して食堂へ向かったその時、不注意にもレイン様にぶつかり手荷物をばらまいてしまったのです。

 その時、可憐に微笑みながら丁寧な所作で手を差し伸べて下さったレイン様は、冷たい印象どころかまるで素敵な王子様のようで、思わずときめいてしまいました。

 しかし、レイン様には婚約者の方が居るとの噂だし、数多のご令嬢や女子生徒と同じく、憧れの君として遠くから眺めているだけで満足でした。

 それが、街でしつこく付き纏う男性から守ってもらい、更にレイン様のお友達として望まれ、どんなに嬉しかった事か。

 でも、それは決して私一人が特別ではなかったのだと思い知らされてしまった。


 レイン様のお友達のアルベルト様は、何時も黙って黙々と食事をしています。しきりに話しかけるラルフさんに対して、一言二言で短く返すだけの無口な方です。

 先日カフェでご一緒した時も、会話が続かなくて苦手なタイプだなと思いました。でも時々、レイン様とお話されたり目が合うと、柔らかく微笑んでらして、お二人の中の良さが伺えるようでした。


 ふと、ランドルフ様が、私に妙な視線を向けている事に気づきました。

 ランドルフ様の表情はコロコロと変わって、話し上手だし見ていて面白いのですが、何時も何かを含んだような、企んでいるような笑みを浮かべていて、正直感じの悪い人だなという印象です。

 私達の視線が交わると、ランドルフ様はバツが悪そうに目を逸らし、またこちらを伺うように視線を戻しました。


「ランドルフ様?私に何か?」

「あー、いいよ、様付けとかしなくて、俺は貴族じゃねえし、普通にラルフって呼んで」

「で?ラルフさん、私に何か?」

「なんか面白い奴らを連れてきたなと思って」

「あの子達がですか?」


 ワイワイと騒ぐ彼女達を眺めていたかと思うと、不意にラルフさんは私との距離を縮め、小声で耳打ちして来ました。


「悪いことは言わないから、アルベルトとは仲良くなるなよ」 

「え?それってどういう…」

「レインは見た目よりずっと精神年齢が低いんだ」

「え?」

「だから……」

「ちょっとラルフ、私のシルフィを口説かないで!」


 わ…「私の」って、それどういう意味なんでしょう?軽い冗談だろうけど、思わずドキドキしてしまいます。心臓に悪い!


「口説いてねえっつーの!」


 ラルフさんは話の途中で腰を折られると、不本意とばかりな態度でそっぽを向きました。

 今度は強い視線を感じてそちらを見ると、アルベルト様が何だか物凄く不愉快そうな目でこっちを睨んでます。嫌、無理、怖い……

 目が合うと直ぐに逸らされましたが、見間違いでは無いはず。私……何かしました?「仲良くするな」なんて言われなくても無理そうです。


 そうこうするうちに、エフィとマッジは今日の放課後、レイン様とお茶をする約束を取り付けてしまいました。彼女達の行動力には恐れ入るものがあります。


「放課後、楽しみですね」

「ねえねえ、あの3人て絵になると思わない?」

「3人とも違うタイプの美形よね」

「実は私、趣味で恋愛小説書いてるんだけど、例えばシルフィをヒロインにして、あの3人で取り合う話とか、盛り上がると思わない?」

「思いません!絶対に辞めてください!」


 マッジはとんでもない事を言ってますが、私がヒロインとか、そんなの誰が喜ぶんですか?


「小説のネタに、レイン様の婚約者のお話も伺いたいなって、ドロドロの愛憎劇とか滾る!」

「あのう、あまりレイン様を困らせないでくださいね」

「わかってるって!」


 私達はそのまま午後の授業も一緒に過ごし、気がついたら今までより仲良くお喋りが出来るようになってました。

 二人共行動的なタイプだから気圧される所もあるけど、なんだかんだで憎めない2人です。


 そして放課後、私達3人とレイン様の4人で学園の近くのカフェに入りました。

 レイン様は甘いものがお好きらしく、キラキラした目でデザートを見つめています。普段は大人っぽい雰囲気なのに、こういう時はまるで少年…いや、少女の様にも見えてしまいます。


「レイン様は婚約者の方のどんな所がお好きなんですか」

「え〜?可愛い所かな?人見知りするから人前ではなかなか笑わないけど、笑顔が可愛いんだ」

「その方を愛されてるんですね、羨まし〜い!」

「ううん、どうかな?なんか兄弟みたいに育ったから、そう言われるとなんか違う気がして…」


 レイン様は何だか困ったようにはにかみながら、パフェのクリームをつついています。


「それに、私なんかよりももっといい人が居ると思うんだよね」

「そんな、レイン様の様な素敵な方よりいい人なんて!」

「私の事を大事に思ってくれてるのは分かってるんだけどね、他に選ぶ余地も無いのって可哀想じゃない?」


 レイン様はなんだか落ち込んだ様子で、気まずい雰囲気になってしまいました。


「え、ええと!レイン様はやっぱり、異性の方は可愛い方がお好きなんですか?」


 マッジが話題を変えようと別の質問を投げかけてくれました。ナイスアシストです!


「いやいやいや、異性の好みならまず逞しい肉体でしょ?」


 逞しい肉体!

 その言葉に衝撃を受けているのは私だけでは無いようで、皆一様に驚愕が隠せないという表情をしています。


「やっぱり腹筋は割れてないとね〜」


 ふ……腹筋ですか、私のお腹はポヨポヨです。

 で、でもソレがいいという殿方も居るらしですが、本当でしょうか?

 私も明日から筋トレをするべきかしら?ああでも、続けられる気がしない……


「あと硬い胸板って良いよね〜、皆もそう思わない?」

「「「え?…ええっ!」」」


 豊満な乳房より硬い胸板がお好きですと⁉


「やっぱり筋肉って良いよね〜」


 レイン様はとてもうっとりとしたお顔をしています。

 私達は3人で顔を見合わせると、戸惑いを隠せない引き攣った笑顔で応える事しかできませんでした。


「私もそれなりに引き締めてはいるんだけど、どうもキレが足りないって言うか……つい甘いもの食べちゃうから駄目なのかな?えへへ…」


 言いながらレイン様はパフェを頬張るレイン様の笑顔が可愛すぎます。

 「えへへ」って何ですか!ラルフさんが見た目より精神年齢が低いと言ってたのはこの事でしょうか?まるでかなり年下の男の子とお話してる気分です。

 でも、言っている事はさっきから筋肉の話ばかりですね。何でしょう?このギャップは?


 それから数日後、朝からエフィが慌てた様子で私とマッジの所に駆けてきました。


「シルフィ!私、見ちゃったの!」

「見たって、何をですか?」

「レイン様の婚約者よ!」


 レイン様の婚約者、どんな方なんでしょう?考えると何だかモヤモヤした気分になります。

 いえいえ、私達はお友達です。それ以上を望んではいけないわ。そもそも私なんて対象外のはずだもの。


「それが、まるでウーゴの様な方だったのよ!」


 う…ウーゴ?ウーゴってあの、森に住んでいる毛深い巨人のような動物ですよね?


「体格もガッシリしていて、いい筋肉だったわ」


 やっぱり、いい筋肉なんですか⁉


「それでね、レイン様が愛おしそうにそのご令嬢を見つめていたの!」

「逞しい方がお好きって、アレは冗談ではなかったのね…」


 私はこの時、淡い初恋が本当に終わった事を実感しました。やはり、私ではレイン様のお好みの女性になる事は無理そうです。

 良き友人として、陰ながらお二人の幸せを祈りたいと思います。

 しかしそれが、スワンドレイク家で飼われているペットのウルルさんだと、私が知るのはまだまだ先の事でした。


BBAの手慰みにお付き合い頂きありがとうございます。

少しでも楽しんて頂けると幸いです。

一応ラストまで話はできているものの、書き散らしたものを纏めるのに手こずっております。投稿済のものも手直ししたい……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ