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TS爺、百合エロゲ―の世界のダンジョンに挑む  作者: 蒼井茜


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帰還

「……おはよう」


「はい、おはよう。随分静かなお目覚めね、命」


「どのくらい寝てた」


「一週間。しばらくはスープ生活よ」


「蓮野の一存でステーキとか……」


「できるわけないでしょ、このおバカ……本当に……馬鹿! あんな死にかけてなにやってんのよ!」


 平然と話しているように見えた蓮野が泣き崩れ、私の肩を掴んできた。

 言い訳をするならイレギュラーエンカウントのせいだけど……。


「ごめん」


「許さない! 次もちゃんと帰ってきてくれないと許さない!」


「うん」


 膝に顔をうずめて泣き始めた蓮野の頭を撫でる。

 しかし……結構酷い怪我だったと思うけど、見たところ両腕共に奇麗に戻ってるな。

 胸も痛くないし、怪我はほぼ全快してるんじゃないか?

 とりあえず蓮野が落ち着くのを待つとして、私より重症だった静江はどうだろう。アキラは平気だろうし、天沢先生も大きな怪我はなかったはずだ。

 となると、その二人が運び出してくれたんだろうけど……。


「落ち着いた?」


「うん……で、経緯の説明よね」


「そう、静江とアキラと先生は。あと怪我治ってる理由」


「天照家がエリクサーを差し入れてくれたの。それが無かったら命の右腕は切り落とさなきゃダメだった……というか実際切り落としてから生やしたの」


「へぇ」


「静江さんの方が命より軽傷だったわ。そっちはハイエンドポーションで翌日には目を覚まして、三日目には学校に戻ってた。毎日お見舞いに来てたわよ」


「そうなんだ」


「アキラさんはダンジョンとお見舞いを交互にしてる。大きな怪我はないけど、もっと強くなりたいって思ったみたい」


「アキラらしい」


「天沢先生は精神的に探索者に復帰は無理と判断してライセンスを返納したわ。今後も学園で教鞭を振るってもらうつもりだけど、相当な相手だったんでしょ」


「デスイーター、死神すら餌にするデカい骸骨」


「……それ、歴史の転換点に出てくるような異形の怪物じゃない……静江さんとアキラさんの言ってたことは本当だったのね」


「疑ってたの?」


「疑ってはいないし、ドロップアイテムが物語ってるわ。けど信じたくないというのが半分、そんなの相手に命が高笑いしながら突撃して倒したというのを聞いて脳に作用する魔法でも使われたと思ったのが半分」


 つまり頭がイカレタとおもわれてたわけだ。


「どこまで本当なの」


「全部。高笑いも気分の高揚の行きついた結果」


「……妹がバトルジャンキーだった」


「なにを今更」


 毎日闘技場に通ってた奴がバトルジャンキーじゃなくて何だというのだ。

 ダンジョンは日常生活の一つだぞ。


「勝算があったの?」


「無くても私がやらなきゃいけないところだった。先生は魔力切れ寸前、アキラは前線を支えるには力不足、静江は早々にリタイアしてたし、怪我のせいで時間がなかった」


「まぁ……大金星なんでしょうけど……」


「そういえば試験結果は?」


「今上でももめてるのよ。証言も記録も裏付けが取れたはいいけど、先生の同伴があってこその生還なのかそうでないのかの違いでもめてる。特に静江さんが死にかけたのと、命が今日まで起きなかったことが大きな要因ね。具体的に言うとアキラさんと天沢先生が二人に危険を押し付けたんじゃないかって話まで上がったほどよ」


「そんな事はされてない」


 飛んだ風評被害だ。


「でしょうね。当然そんな話はすぐに無かったことにされたわ。逆に静江さんや命が家名を持ち出して無茶な突撃をしたという話も出たけど、そっちもすぐに消えたわ。静江さんとアキラさんが大々的に殴り込みかけたから」


「私も行きたかった」


「まだもめてるけど寝てなさい。エリクサーで治したとはいえそのための体力は命の物だったんだから、まだ疲れがたまってるはずよ」


「……言われてみれば」


 確かに身体が重い。

 だるいし、腹痛もする……なるほど、本調子じゃなさそうだ。


「ならいい子は寝る、それで元気になったら学園に戻る、いいわね?」


「あい」


 仕方ない、蓮野の言葉に従っておこう。

 そう思い眠って、夜中トイレに起きて血まみれの下半身見てナースコール連打したのは余談である。

 ……お赤飯かぁ。

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