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【続】DARKー5人の怪盗ー  作者: 七梨
Ⅱ.タカとひかる
12/15

12. 6th DARK (?) the decisive stage ①

 



 ひかるはまさかりさんから届いたダークの予告状を見て、驚きと共に何だか少し胸が躍った。


「えーっ、懐かしい……」


 ネットで検索しながら、内容を解読してみる。

『七夕の戌の初刻』は、7月7日ーーつまり今日の午後7時。

『桜星公園』は、今ひかるがいる合宿先の最寄り駅から歩いて5分のところだった。


 現在時刻は午後6時47分。ちょうどいいくらいだ。


「うーん……」


 ひかるは疲れた頭で考え込んだ。


 これ、もしかして、タカのサプライズ……?

 でも、何でまさかりさんから予告状?

 それに『お前の大切なもの』って、何だろう……?


 と、考えていたらまさかりさんから電話があった。


「まさかりさん!? どういうこと?」

「いーから。すぐ来て。場所わかる?」

「うん……、マップ見れば……」

「あ! 通話はこのまま! オレが丁寧に道案内するからな!」

「え? うん……」


 ひかるはまさかりさんの言う通り、通話を繋げたまま歩き出した。






___________






 まさかりさんから俺に送られてきた画像は、ダークの予告状だった。


 ……はぁ、今日はそれどころじゃないと言うのに。ふざけてるのか? 

 しかしそれにしては、あの頃作っていたものと同じ精巧な造りである。

 ……最後の作戦から大体2年ぶりか。もう懐かしく感じる。


 一応、解読してみる。


『七夕の戌の初刻』は、7月7日ーーつまり今日の午後7時。

『桜星公園』……? どこだそれは? すぐさまマップで調べる。……遠い。最短でもタクシーで10分の距離。


 そして現在時刻は、午後6時49分。

 思わず俺は素っ頓狂な声をあげた。


「バカか!? 間に合わないだろ!!」


 そして『お前の大切なもの』は……、もうこの話の流れから、何となく想像がついた。


 俺はまさかりさんとひかるに電話をかけた。が、2人とも何故か話中だった。


 一瞬、予告状を無視してやろうとも思ったが。


 ……奴等の狙いがひかるなら、待っててもひかるは帰ってこない。


「くそ……ッ」


 俺は慌てて家を飛び出した。







___________







 ひかるはまさかりさんの言う通りの道を歩いていたら、何故か少し遠回りをさせられた。


 桜星公園についたのは、6時57分。

 かなり大きい公園だ。遊具や芝生だけでなく、屋外ステージや遊歩道もある。


 そして公園内にある『誓いの丘』は、丘への小道が一本だけ。

 しかしその道を塞ぐようにコーンが置いてあり、『この先整備中の為立ち入り禁止』と紙が貼ってあった。


「じゃ、後ろ振り向いて」


 と、プツリとまさかりさんの通話が切れる。

 7時ちょうどだ。


 ひかるが後ろを振り向くと、ダークが立っていた。


「え……っ」


 鼻まで覆う仮面を付けているから、誰がダークなのかはわからない。

 ダークは『しーっ』と唇に指を当てると、何も喋らずにひかるの手を引いて歩き出した。

『立ち入り禁止』と書かれたコーンを超え、丘を登っていく。






___________







 俺は家を出てすぐにタクシーを拾ったが、帰宅ラッシュと重なり道が混んでいた。


 タクシーに乗っている間もひかるに電話をかけたが、ずっと話中で繋がらない。

 まさか俺と会話させない為に、まさかりさんがずっとひかると通話を繋げてる……!?


 アイツらにしては……中々やる……。


 胸騒ぎを覚え、慌ててタクシーを降りる。


 公園に着いたのは7時4分。

 ここから『誓いの丘』まで、俺の足で5分くらいだろうか。しかし、坂道はキツイ……。


「クソ、アイツら怪我人の事考えろよ……」


 まさか忘れた訳がないとは思うが、俺は右脚太腿を撃たれ少し麻痺が残っている。

 俺は息を切らして丘への小道へ向かった。








__________







 タカが公園へ入っていく様子を、超小型ドローンのカメラが捉えていた。


 まさかりさんとエリンギは、丘の脇にある茂みの中にいた。

 エリンギがドローンを操縦し、まさかりさんのPCに映し出されている。


「タカの足だト、ここまで来るのに5分くらいかナ。

 でもここまで歩かせるのハ、やっぱり可哀想だったかモ……」

「愛するひかるの為なら死ぬ気で来るだろ。頼むぜエリンギ、この作戦はタイミングが大事だ」

「モチ。この感じ、久々でワクワクするヨ」

「さ、そろそろひかるが来るぜ」


 丘の上に、ダークに手を引かれたひかるが登ってきた。






___________






 ひかるはダークに連れられ、丘の上に辿り着いた。

 下の住宅街が一望できる、景色のいい場所だった。


 初夏の夕方7時。快晴。涼しい風が抜ける。

 ほんのり薄暗くなった空を、ダークはひかると手を繋いだまま無言で指差した。


 突然、空中に数十個の光の点が現れた。

 無数の小型ドローンだ。

 ピカピカと点滅しながら、ドローンは隊列を組んで夜空に文字を浮かべた。


『I』『♡』『U』


「あー……、うん……」


 ひかるは苦笑いするしかなかった。


 ――一体わたしは、何を見せられてるのでしょうか……。







___________







 エリンギが操縦する小型ドローンはタカをこっそり追跡しており、小道へ辿り着いたのを確認した。

 ちなみに今回は、まさかりさんお得意の『防犯カメラをハッキングして追跡』する技は使えない。


 前提条件として、今回の作戦は全て合法の範囲で行うからだ。


「ドローンショーの時間稼ぎはそこまで時間がもたないと思ったけド、ちょうどいいくらいだネ」


 まさかりさんはインカムに向かって言った。


「おいオメーら、高俊が丘に辿り着くまで30秒ってところだ。カウント始めっぞ……」







___________







 俺は『誓いの丘』へと続く小道へと辿り着いた。


 その一本道には『立ち入り禁止』と書かれたコーンが立っている。だがこれは無関係な人を立ち入らせない為に、アイツらが置いたものだろう。


 俺はコーンを超えて進んだ。


 既に7時8分。

 とっくにダークの出没時間を過ぎている。


 もし予告状の通りに現れているのであれば、既にダークはひかるの元か?


 読めない。この作戦の意図が。


 よく考えたらこの公園は、ひかるの合宿先の最寄駅の側だ。

 俺が絶対に間に合わない時間に予告状が届いたのは、バカだと思ったがそうじゃない。俺より先にひかるが辿り着くように仕向けたのだ。


 アイツらは、ひかるの何を盗もうとしている……?


 俺は息を切らして、丘の上に辿り着いた。

 一番高いところで、ダークと、手を繋いでひかるが空を見上げていた。


 あれは……ドローンショー……?


 ダークは俺に気づいて一瞥し、仮面を取った。

 ダークは……“タカ”……偽物の俺だった。


「な……っ」


 アレは、じーさんの変装か!?

 島根からわざわざ東京に?


 そして偽物は、ひかるを強く抱きしめた。


「え……!?」

「おい、お前……ッ」


 あの変装の中身が誰であろうと、異性のひかるを抱き締めるのは冗談でも解せない。

 俺が言葉を発しようとしたところで、偽物は俺に聞こえる声でひかるに堂々と言った。


「ひかる、これまでの事ごめん。好きだ。付き合ってくれないか」


 一瞬、俺もひかるも何が起きたのか分からず、呆然とした。

 そして俺は、血管が張り裂けそうなくらいの突発的な怒りを覚えた。


「おい!! ふざけるなッ!!」


 俺が真っ赤な顔で怒鳴りながら現れると、ひかるもやっと俺の存在に気づいた。

 俺はひかるから偽物を引き剥がした。


「タカ……!?」

「ひかる、コイツは偽物だ! おいお前ら! こんな事をして、俺やひかるが喜ぶとでも思ったか!?」


 信じられない。本当に信じられない。

 俺やひかるの気持ちを弄ばれた。


 アイツらのこと信用して相談したのに……、何もかも、裏切られた気分だ!


 俺は偽物の胸倉を掴んで睨みつけた。


「お前はじーさんか!? まさかりさん! エリンギ! いるんだろ!? 出て来いッ!!

 本当に余計な事をしてくれたな! こんな事して……っ、絶対に許さないからな!!」


 あまりの怒りに、声が震えた。もう少しで目の前のこの偽物を殴りつけたい衝動に駆られる。


 しかし2人は出て来ない。

 それどころか、偽物は何も言わずに余裕そうにほくそ笑んでいた。


 するとひかるは、静かにポロポロと泣き出した。


「ひかる……っ」

「分かってた、このタカが偽物だって。だってタカがこんな粋な事して、『好きだ』なんて言う訳ないじゃん……」

「……」

「でもね、やっぱり」


 ひかるはしゃくりあげて泣き始めた。


「それは、一番、タカから聞きたい言葉だった……っ」


 丘の上にひかるの啜り泣く声がただ響く。


 ……どうしてくれるんだこの状況……。


 こうなる事は分かってただろう。

 俺を怒らせて、ひかるを傷つけて、あいつらは何をやりたいんだ……?


「さて高俊、どうしたものかな」


 やっと偽物が口を開いた。

 俺の顔をして俺の声で、ニヤリと笑って言った。


「この場を収拾するには、俺の言葉以上の言葉を、今ここで彼女に伝えるしかないぞ?」

「っ……!?」


 ああ、そうか。唐突に理解した。

 最初から、コイツらの目的はこの状況を作る為だったのか……!




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