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陰陽洲~和風VRMMORPG、闇鍋仕立て~  作者: 鉢棲金魚
第五話 新参巫女と出戻り武士
29/37

其の一

第五話開始となります。

短いので、本日は2回投稿。こちらが、その1となります。


どうぞよろしくお願いします。


 はじめて『陰陽洲』の世界に降り立った時、彼女の心中は期待と不安が半々といったところだった。


 仮想現実世界。

 五感で感じとることのできる、しかし現実とは異なる世界。

 それは、どのようなものなのだろうと、胸の高鳴りとともに抱いた疑問は。


「―――すごい」


 羅城門を出た瞬間に、氷塊した。


 ―――薄暗い門を抜けた先、視界一杯に広がる雪化粧の朱雀大路。

    現実とは真逆。冬の冷たい風が吹き抜けて、少女の長い黒髪を揺らす。


 目を疑うような巨大な通りを行き交うのは、時代劇に出てくるような恰好の人々。

 どうやら、まだ夜が明けたばかりのようで、活気あふれるとはいかないものの、彼女は人々の生活の息吹を感じて、ほぅと息をついた。

 空を見上げる。


 冬の高い空。

 そこを、一羽の雀が横切っていく。

 これから、この世界でどんなことが起きるのだろうと、彼女は期待を抱いた。

 ただ。


(……でも)


 対戦、共闘……その方法に違いはあれど、オンラインゲームは、基本的にプレイヤー同士の交流を前提としている。

 そして、MMORPGであれば、千、万を超える人々が同じ世界に立ち、気の合う者達が集まってチームを組んで、一緒にゲームを進めているという。


(大丈夫、かな?)


 自分は、オンラインゲームどころか、この手のゲーム全般の初心者だ。

 下手くそと、嘲笑われたり、怒られたりしないだろうか。

 誰かの足を引っ張って、迷惑をかけたりしないだろうか。


 ―――そもそも、わたしと遊んでくれる人はいるのだろうか。


 彼女は、そんな不安を抱く。

 それは、オンラインゲームを初めて遊ぶ者の多くが少なからず抱くもので、ほとんどの場合においては杞憂に終わるのだが、それを彼女が知る由もない。

ふと。


「―――って、冬かよ!?」


 そんな声が傍らから聞こえてきて、彼女はパチリと瞬きをした。

 視線を向けると、一人の青年が立っている。

 薄茶色の着物に、暗い緑の袴姿。腰には一振りの太刀。

 おそらくは自分と同じ、たった今、この『陰陽洲』に降り立ったであろう青年。

 こちらに気が付いた様子もなく、朱雀大路を見て寒そうに腕をさすっている。


「…………」


 その姿を見て、彼女は小さく息を吸った。

 ちらりと、路面に目を向ける。

 通行人達の足跡が残る雪。一部はシャーベット状になっていた。


 声が震えたりしないだろうか。

 少し心配になりながら、えいやと声を出した。


「―――わあ!」


 自分でもわざとらしいと思うほどに、明るく声を張る。

 同時に、少し小走りで雪の上へと進む。


(目の前で尻もちをついたら、「大丈夫?」くらいは、声をかけてくれる、かな?)


 かけてくれたらいいな。それで、一緒に遊ぼうと誘ってくれたら、もっと良い。

 我ながら姑息で浅ましい。人様の善意に付け込もうなどと。

 そう思いながらも、都合の良い期待を胸に抱いて、彼女はわざと足を滑らせた。


「雪だっぶべっ!?」


 ―――思っていたのと違った。





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