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バッドスキルは女好き  作者: 一葉
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迷宮

シュトリア・アンラは宿屋の自分の部屋まで戻るとベッドに倒れこんだ。安宿ではなく、防音などもしっかりした高級ホテルである。中級冒険者であってもおいそれと泊まれるような値段ではないのだが、ソロで依頼をこなせる彼女にとってはたいした出費ではなかった。中級冒険者向けの依頼は高額でも頭割りになるので一人一人の収入はそこまででもない。彼女の場合はそれを一人の収入に出来るのでかなり稼いでいた。それでもわざわざ高級ホテルに泊まるのはお財布に優しくないのだが、どうしても防音性の高い部屋に泊まる必要があった。

なぜなら。

「うきゅうううううう!」

部屋に奇声が響き渡る。きりっとしていたシュトリアの顔はだらしなく弛み、足をばたつかせる。

「告白されちゃった! 告白されちゃった! 可愛い女の子に告白されたよおお」

ベッドの上で枕を抱き込みゴロゴロと悶える二十歳前後の美女。

「あー! なんで断っちゃったんだろ。ぎゅってしたかったよー! お胸をもみもみペロペロしたかったよー!」

きもい。美女だろうがなんだろうが、変態はきもいという典型例がそこにある。

「でもでも、大見得きって出て来たのに女の子とただれた生活なんて笑われちゃう」

ただれた生活になるのは確定なのかという疑問はともかく、大方の冒険者の予想通りシュトリアは砂漠の民である。今でこそ砂漠にあるダンジョンを管理することで富を得て一都市でありながら北方同盟の席に座る実業家集団として有名であるが、もとは砂漠にすむ戦闘集団である。独特な戦闘術と魔法を使い、先祖代々受け継いできた砂漠を守ってきた。しかし、今となってはその技を使えるのはシュトリアのみ。経済的に安定しているうえに、経営で忙しくて武術を納めようとする砂漠の民など皆無である。現在を生きる砂漠の民にとってシュトリアは異端。剣を捨てて経営を手伝え、シュトリアは何度も両親から説得された。剣で生活しようとすればどうしても不安定な生活になってしまう。剣で食っていくには、才能の他に運も必要だ。両親の言うことが正しいのはシュトリアもわかっている。だが、シュトリアには剣しかなかった。はっきり言ってシュトリアは経営に携われるほど頭はよくなかった。だからシュトリアは剣で一旗あげてやると大見得きってでてきたのだ。

「はああああー、お人形さんみたいに可愛かったなあー」

大きな瞳に小さな顔、華奢な体躯と玉のような肌。まさに理想、ペロペロしたい。

「なんとかお近づきになりたいなあ、付き合わずに愛でるだけなら問題ないよね! 付き合ってなければただれた毎日でも問題ないよね!」

問題だらけである。付き合う付き合わない以前にただれた毎日が大問題だということを変態は認識していなかった。

「あの子冒険者だよね、新人っぽかったし冒険者のイロハを教えてあげるついでに女の子のあれやこれやも教えてあげちゃおうかな」

げへげへと笑うシュトリア。まじできもい。

「明日冒険者ギルドに行って探そう。うん、あんな綺麗な子を一人にしちゃ危ないしね。よし、決まった。ごはん食べて寝よ」

危ないのはお前だ、捕まるからその子に近づくな、などと親切に指摘してくてるような奇特な人は防音に優れた部屋の中にはいなかった。


「アオイ・イチジョウだな、よし、いいだろ滞在はどれくらいだ」

冒険者ギルドを出たその足ですぐにダンジョンに来た。さすがに街中にダンジョンはなく、街から出ている馬車に乗って二十分ほどかかっている。すでに暗くなりかけていて森の中であるから余計に肌寒い。ぽっかりとあいたダンジョンからはぞろぞろと冒険者達が出てきていた。日帰りなら調度帰る時間なのだろう。

「三日です」

「おお、頑張るね。ほどほどにな」

ダンジョン前にもうけられた小屋は受付と依頼の確認ができるようになっていた。紙に書いて掲示板に貼り出された依頼内容を一通り確認してから早速ダンジョンの中に入る。わりと中は広いし何故か明るい。壁をよくみるとところどころが光っていた。真っ暗だったら引き返さないといけないところだった。初めてのダンジョンに少し浮かれていたかもしれない。気を引き締めていこう。まずはスキル探索を起動。すると青い点がまばらに見えた。冒険者かな? まだ結構な数残っていた。赤い点はない。この階層に魔物はいないようだ。残念ながら、マップまでは表示されなかった。完全記憶があるからそれで代用すればいいだろう。もしかしたら地図とか売ってあるのか? いまさら戻るつもりはないけど今度からは色々調べてからこよう。冒険者達は帰ってきているはずだから冒険者達がむかっている方向と逆側に階段があるだろう。しばらく歩くと予想通り階段を見つけられたのでおりていく。二層目には少ないながらも赤い点があった。それぞれが離れていて連携される心配はなさそうだ。調度いい。ちょっと戦ってみよう。手近な赤い点へと向かって待ち伏せする。丁字路の右側からゆっくりとそれがあらわれた。いわゆるゴブリンというやつだろう。緑色の肌で鼻は前に突き出ている。粗末な布で腰を隠しているだけの半裸状態であり、あまり見ていたくない光景だった。錆びた剣を持ってるけど、あれってどこから出てきたんだ? 冒険者が落とした物なのだろうか。

ゴブリンは俺に気付いてにんまりと笑う。完全に馬鹿にしているな。にたにた笑いながら剣を見せつけてくるゴブリン。小者臭しかしないけど、念のため鑑定しよう。


・レベル 2


・名前 なし


・種族 ゴブリン


・称号 なし


・スキル なし


ステータス値も俺の一割もない。これって子供でも勝てるんじゃないか? なんでこいつこんな余裕なんだ。何処かに罠でもあるのか? 探索スキルには何も表示されていない。たしか探索スキルは罠も見えるはず。罠がないなら切り込んでみるか。

あらかじめ腰に下げていた血潮を抜き放つ。落ち着いて下段の構えから一息に距離を詰めてがら空きの胴体をきりつける。

「ふお!」

何の手応えもなく血潮がゴブリンの胴体をすり抜けて思わず変な声をだしてしまった。それはつまり、胴体を両断したということだ。上と下がさよならしたゴブリンの死体がべちゃりと転がる。

《スキル、加速を習得しました》

頭に声が響く。あの天使の声だ。事務的な感じの口調だし自動音声っぽい。もしかしてあの称号かな、鑑定してみよう。


・神託の巫女


清浄な場所で祈りをささげれば神託を得られる。また、スキルを習得したさい簡易神託を得られる。


便利といえば便利なスキルだ。戦闘中だと気がそれるかもしれないけどそこはなれだな。それにしても血潮の切れ味は凄いな。凄すぎて使いずらい。どの程度切れるのかも検証しないとね。確かゴブリンは五体で依頼一つ分だ。調度いいから試し切りもかねてゴブリン狩りをしよう。

ゴブリンの死体をアイテムボックスにしまって次なる獲物へと狙いをさだめる。

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