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第7話 通行税を調達しよう



「今日はこの辺りで野営をしよう。」



日が暮れてきたところでブルースから号令がかかった。

美優は慣れない竜車の揺れに四苦八苦しながらも、クッション代わりを手に入れてからはそこそこ快適に過ごせたようだ。



昼は干し肉と黒パンと水で簡単に済ませた。

春翔は干し肉を見て『おお、これが干し肉!俺、冒険者みたい!』と小躍りしたが、さっそく口に入れて噛み切ろうとしたものの、あまりの硬さに歯が立たず、皆に笑われながらアリシアのナイフで小さくしてもらった。



美優は見た時点で噛み切るのを諦めており、最初からナイフで小さくしてもらっていた。

小さくしてもらった干し肉をもちゃもちゃと噛み締めながら、スープに入れたら柔らかくなるし出汁が出ておいしくなるのではと考える。



トイレはもちろんないので、休憩になると川原に下りて用を足していたのだが、土手にバジルのような丸い葉の草と、シソのようなギザギザの葉の草が自生しているのを見つけた。

摘んでいってアリシアに見せるとどちらも食べられる草だという。



少しかじって味見してみると、スーパーに売っているものよりも硬く風味は劣るものの、思ったとおりバジルとシソの味がした。


美優は、アリシアに今夜のスープ作りは自分にさせて欲しいと頼んだ。

少しでも役に立ってお世話になっているお礼をしたいし、自分が食べやすいように加工も出来る。



『えーと、まずはお肉だな。うさぎの解体なんて無理だからそれはアリシアさんにお願いしようっと。あとお水もだしてもらって。あとは…。』


役に立ちたい割にアリシアをこき使って料理するようである。

主な材料は昨日と同じで、狩りで捕まえた獣肉と、じゃがいも、玉ねぎ、人参だった。

一口大に切ったうさぎ肉に少量の玉ねぎのみじん切り、バジルのみじん切りと塩を揉み込み、味をなじませるため少し置く。


その間に残りの玉ねぎをみじん切りにして、じゃがいもと人参は一口大に切る。

うさぎの脂で玉ねぎを炒め、透き通ったら下味をつけたうさぎ肉を入れて軽く焼き色をつける。

じゃがいもと人参も鍋に入れて炒めたところに水を入れてもらい、細かく削った干し肉を投入して煮込む。


煮込んでいる間にエヴァンスが弓で鳥を捕まえてきた。


「いやあ~、飛ぶ鳥を落としちゃったよ。バサバサ~って飛んでるのに当てたんだぜ?俺ってすごいなぁ~。」

「わぁ!エヴァンスすごい!『これで焼き鳥が出来る~』ありがとう!」


自画自賛を続けるエヴァンスをスルーして、アリシアに鳥を解体してもらった。

肉を切り開いて薄く大きく延ばし、軽く塩を振り、肉の上にシソを置いて端からぐるぐる巻いていく。

巻き終えると一口大に切り串に刺していき、直火で焼いた。

主食はだいぶ硬くなった黒パンだったが、食べやすいように薄くスライスして夕食の準備が整った。


「おお、今日はミュウが作ったのかい?それじゃあ冷める前にいただくとしよう。」



ブルースの言葉で食事が始まった。


「「「「「うまい!」」」」」

『うまい!』


串肉から食べるものとスープから食べるものとまちまちだったが、出る言葉は同じだった。


「おいしいわ。ミュウは料理が得意なのね。」

「ミユはおかあさまいない。小さいころからりょうりした。」

「そうか…。そうは見えなかったが苦労したんだな…。まだ母親に甘えたい年頃だろうに…。」


少ししんみりしながらも、驚くべきスピードで料理を平らげていく面々だった。


『母親に甘えたい年頃って言っても、美優は14歳だけどな。』

『私、いくつだと思われてるのかな…。』


「いやあ~、俺のとってきた鳥がこんなに旨くなるなんてなぁ。明日も狩りがんばろうっと!」


飛んでいる鳥に矢が当たったことがよほど嬉しかったらしく、エヴァンスはまたも同じ話題を出してきた。

レオンやブルースに褒められて嬉しそうな顔を見ると、最初の印象よりも若く見えた。

思ったよりも子どもなのだろうかと思い、年齢を尋ねると17歳だと言う。

ブルースは40歳、ランスは42歳だった。

春翔と美優も15歳と14歳だと言ったが、信じてもらえなかった。


「ハルトはともかく、ミュウは14歳じゃねぇだろうよ。」

「まあ、ハルトは14~15歳に見えるな。でもミュウはそんなに小さいんだ。まだ10歳ぐらいだろう?」

「年の数え方が違うのかしら?」

「言葉を間違えて覚えてるんじゃないか~?」

「ミユは少しおとな!」

『諦めろ』


「それはそうと、ハルトとミュウはお金はもっているのかい?エリミアの街に入るには通行税がかかるよ。」


「「ええっ!」」


『どうしよう、春ちゃん。私3,000円ちょっとしか持ってないよ。』

『俺もそれくらいだよ。平日だから買い食いくらいしかしないと思ってたし。というか、そもそも円は使えないだろ。』

『何か売れそうなもの、売れそうなもの。』


美優は竜車に置きっぱなしだったスクールバッグの元へ行き、中をごそごそとあさり始めた。


「ええと、おいくらですか?」

「通行税は銀貨1枚だよ。」


春翔は金額を尋ねたが、銀貨1枚の価値がさっぱりわからない。


「銀貨1枚はどれくらいの価値ですか?」

「そうか、外国人だったね。銀貨1枚は1,000ロスだ。1,000ロスは、そうだねぇ、安い宿なら2泊できるかな。夕食なら10日分くらいだ。ロスというのはアレクサンドロス国の通貨の単位でね。この銭貨1枚が1ロス、鉄貨1枚が10ロス、銅貨1枚が100ロス、金貨1枚が10,000ロスだよ。」


ブルースは懐から財布を取り出して、手持ちの硬貨を見せながら説明してくれた。


『安い宿っていくらだよ。うう…よくわからん。美優ちょっとちょっと!』

『ちょっと待って。春ちゃんのバッグもそっちに持っていくね』

『通行税は銀貨1枚だって。銀貨1枚は1,000ロスで、1,000ロスの価値は安い宿2泊分くらいだって。夕食なら10日分って言ってた。』

『安い宿って1泊5千円くらいかな?2泊で1万円。夕食は1食千円とすれば10日で1万円。とりあえず、通行税は1万円くらいって思っておこう。忘れないようにメモしとくね。銀貨1枚=1,000ロス=10,000円。他には?』


美優は春翔に聞きながら通貨の換算レートを、銭貨1枚=1ロス=10円、鉄貨1枚=10ロス=100円、銅貨1枚=100ロス=1,000円、銀貨1枚=1,000ロス=10,000円、金貨1枚=10,000ロス=100,000円と書き加えた。


『一人1万円だよな?俺達2人で2万円なんて無理だよ。』

『子ども料金ないのかな?聞いてみよう!』


「ブルースさん!子どもはつうこうぜい安い?」

「いや、子どもでも一人分払わないと入れないんだよ。子どもから金を巻き上げるとはね…。

アクティース公爵領だった頃はこの国で一番裕福だったこの領が落ちたものだよ。

お金がないなら立て替えてあげるから、働いて返してくれればいいよ。」

「ブルースさん、ありがとうございます。」


『春ちゃん、だめ!』


ブルースの申し出を喜ぶ春翔だったが、美優が止めた。


『返せる当てもないのに安易に借りちゃダメだよ。アリシアさんの話聞いたでしょ?借金返すのに12年かかるかも知れないんだよ。まずは手持ちの物で何か買ってもらえないか交渉してみようよ。』

『そ、そうか。お前意外としっかりしてるな。』

『そうだよ、私しっかりしてるのに、ここでは何故か春ちゃんの方が大人扱いされるから春ちゃんが交渉役してね。』

『お、おう。がんばるわ。』







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