ⅣーⅤ
「いきなりどうしたんです。お兄ちゃん? 今日はなんだか夏海にメロメロしてますね。夏海の魅力に気付いてくれたのは嬉しいです。しかしお兄ちゃん、何かを怖がってるみたいなんです」
夏海は本当に俺を心配してくれている、そんな感じがした。
だから、心配させちゃいけないと思う。夏海に心配を掛けちゃいけない。夏海はとても素直な子だからさ。
唯織さんの言葉に従おう。
夏海には何も言わない。何も言わずに、俺は夏海を安心させてあげる。
「電話の相手は誰だったんですか? もしかして、怖い人なんでしょうか」
素直な夏海を騙したくはない。嘘を吐くのは唯織さんも望まないと思うんだ。
それに、唯織さんからの電話と言えば夏海は疑わないだろう。唯織さんが俺に恐怖を与えてるだなんて、考えもしないだろう。
確かに唯織さんはときどき怖いことを言う。しかし、それは冗談だって分かってるから本気で怯えたりなんかしない。
「電話の相手? 唯織さんだよ。今日はありがとって、そう言ってくれた」
これだったら、夏海を心配させることもないだろう。まず、夏海を安心させるってところは大丈夫かな。
夏海は俺の言葉を疑わない。夏海は唯織さんを疑わない。だからさ。
「そうなんですか。しかし、どうしてわざわざお兄ちゃんに? 夏海に電話してくれればいいのに」
不思議そうな顔をしていた。確かにそりゃそうだな。
俺に電話しなくたって、大好きな夏海に電話すればいい。……これにはなんと返せばいいんだろう。考えよう、答えはある。
「なーちゃんは今の時間スケジュールが埋まってるから。だから俺の方から伝えといてって言ってた」
唯織さんのことだ、夏海のスケジュールは把握しているのだろう。
夏海がその時間ゲームにって宣言したんだろ? それを唯織さんが知らない筈がない。
咄嗟に口から出た言葉だけど、悪くはないと俺は思う。
「ああ、ゲーム中だと思ったのでしょうか。もう終わってたけど、いおは知らなかったのですね。今日は珍しくログインしていませんでしたし。いつも夏海がログイン宣言すると、いおが待っててくれるんですけど」
マジで? ってことは、夏海教の人達は序でに唯織さんにも会える訳だ。
でも唯織さんのことだし、普通に夏海教教徒の一人としていそう。わざわざ双葉唯織アピールとかしなそうだな。
だってそれで夏海以上に目立ちでもしたら大変だから。夏海教の妨害となってしまうから。
夏海の為のことだもん。その辺はちゃんと考えるだろうね、唯織さんじゃ。




