ⅣーⅠ
「分かってくれたんですか? では、早速婚約しましょう」
そんなことを、恥らうこともなく平然と夏海は言うんだ。それはつまり、冗談である証拠だと思う。
さすがの夏海だって分かっているだろう。
分かっているだろう? 兄妹で結婚なんて出来ないって。どんなに大好きだって、俺と夏海は血の繋がった兄妹なんだって。
でもそんな普通の会話並みの言い方で、プロポーズすることないでしょ。
相変わらず画面だけを見つめてるし。
それだと、正直ちょっと寂しいな。プロポーズされている、そのこと自体を突っ込むべきなんだけど。それも俺は分かっているんだけど。
どうすればいいんだろう。
今までも夏海はこんな調子だった。そして俺はそれに対して何も思うところはなかった。
ゲームが好きでブラコン。そんな、ただの子供な妹だと思っていた。
でも、仕事をする夏海の姿を見て少し変わった。
仕事場で一生懸命頑張る夏海に。ファンの為に一生懸命頑張る夏海に。様々な共演者の方と笑い合う夏海に。スタッフさんと笑い合う夏海に。
なんだか、魅力を感じている俺がいるんだ。
頑張っている妹を応援するのは兄として当然。
それだけの感情だと思ってはいるんだけど、そうは思うんだけど。でもなんだか、夏海が異様に可愛く見えてくるんだ。
ゲームやテレビから流れる自分の妹の声を。
流れている自分の妹の曲を。
それを聞いている俺は……。
以前、唯織さんが俺に言って来た、あの言葉はまだ俺の中に残っている。
夏海が俺を好きなのと同じくらい、俺は夏海な好きだ。だから千博さんに嫉妬しているんだって。
そして唯織さんはその後こう言っていた。
まだ今は冗談と言っておく、と。
それは唯織さんが未来を見ていたからではないのだろうか。
いつかそれが冗談じゃなくなるって。俺は重症のシスコンとなり、もう助からなくなると。
そうは、考えたくない。
いくら俺だって、そうは考えたくない。少なくとも、妹に求婚するようにはなりたくない。
俺と夏海はあくまでも兄妹なんだ。
だから、結婚なんて可笑しい。好きって言ったって、兄妹としてだ。
それにもし仮に俺も夏海と結婚したいとか言い出したら。二人して結婚とか本気で言い出しちゃったら。
そんなの、父さんに迷惑だし。
娘と息子で愛し合うようなことがもしありでもしたら。もし万が一にありでもしたら、その時に親はどう思うんだろう。何を思い、何をするんだろう。
基本的に俺達を自由にしてくれた父さん。しかし、それはさすがに悲しみ止めるだろう。




