入学式
しばらくは毎日投稿します!
「はっ」
しまった、寝過ごしたか。
時計を見ると7時3分。昨日遅くまで起きていたがそこまで寝坊じゃない。
大慌てで支度をして
「いってきまーす」
猛然とダッシュして駅のプラットフォームに駆け込む。
予定の電車がちょうど到着したくらいだった。
ギリギリセーフと安堵するとともに、入学式からやらかしたな‥。とため息を着く。
軽くため息をついて吊り革につかまると
「ね、見てあの人!カッコ良くない?」
「あー、ほんとだ。背も結構高いじゃん」
「声掛けにいかない?」
「えー、一人で行きなよ」
ちょっと注目されるくらいには整った甘めの容姿と高身長。
瀬戸蒼15歳。
今日から若葉高等学校の一年生だ。
身長175、声変わり済み。
だけど、僕は変わってる。なんで男に生まれたんだろう。
「着席」
やたらクッション性の高い講堂の椅子に体を沈める。
「えー、新一年生の皆さん、ご入学おめでとうございます。今日からこの学び舎でともに勉学に励み、助け合い‥」
生徒会長、いい声だな。
僕が嫌な自分のところ一つ目、男子にしては高すぎる声。
アニメ声とかいうわけじゃないけれど、耳障りなほど高くもないけれど、この背に明らかに不似合いだ。
「本校には、様々な部活があります。ご存知かもしれませんが運動部だけではなく文化部も大変充実しており、手芸部や料理部が文化祭でショップを出したりもしています。今度の部活見学では、体験も‥」
二つ目、趣味は手芸やお菓子づくり。そんなところまで女子っぽくしてどうする自分。
いつもどこでも、2、3人の友達だけを毎回なんとか作ってずっとそこと一緒にいる感じだ。
ルックスからして、デブとかブスとかであんま喋んなければいじめられることはない‥‥と思うが。
先行きが不安でしかない。
「みんなこんにちは!今日から担任になった、工藤広士だ。「こうじ」じゃなくて「ひろし」だからな!
みんな一年間よろしく。」
「よろしくお願いしまーーす」
「んー、じゃあ、出席取るぞ。青木ぃ」
「はーい」
「石井ぃ」
「はーい」
熱血系のスポーツ刈りの先生か。
退屈はしなさそうで結構あたりな気がする。
次々とテンポよく進めていく。
「佐々木ぃ」
「はい!」
すると呼ばれた少女がガタッと席をたった。結構背高いな。
ロングの髪を片方耳にかけておろしていて、黒い髪は先にかけて水色に染めてある。
「ひろちゃんひろちゃん、これ終わったら何すんの?」
いきなりのひろちゃん呼びっ!そしてすでにスカート丈もいじっているようだ。
校則は比較的ゆるいから抵触しているところはないもののこれが一軍か、と妙に感心してしまう。
でもああいう誰にでも距離感近そうな人には、勝手に嫌悪感をいだく。
すると急に、彼女がこっちの方を振り向いた。
心が読めるかのようなタイミングに少し驚いて、綺麗な茶色の瞳がなぜか頭から離れなくなる。
「周囲の人と雑談タイムでもしておいてくれ。先生はみんなの教科書持ってくるからな」
「りょーかい!」
「つ、ぎ、は‥鈴木ぃ」
「は〜い」
前の席の鈴木は結構小柄な男子だ。親しみやすそうだな。
「瀬戸ぉ」
「はい」
ざわっと少し空気が揺れた気がする。
僕が気にしすぎなだけだといいけど、驚いたか驚いてないかで言ったらみんな驚いたよな‥。
「田淵ぃ」
「はい」
なんという重低音ボイスだろう。
‥羨ましいな。
身長‥とういか座高は僕より少し高いくらいだ。
「津田ぁ」
「うぃーっす!!」
あー、陽キャだ。ああいう人とか佐々木とかがこれからのクラスの中心になっていくんだろうな。
「じゃ、とりあえず明日使う数学のテキストだけ持ってくるから。適当に近所の奴と喋ってろー」
ガタッと音を立ててまた立ち上がり、
「ねえじゃあさ、クラスで自己紹介とかする?」
ほら、こういう佐々木みたいなのがいるとやばい、なんも考えてない‥。
「あしたやるっしょ。流石に初日はキツいって。」
「あっははは。ごめんごめん」
ポニーテールの柄の悪そうな無表情な女子‥。
「許してよ、ありにゃん!」
「なんで最後ににゃんつけんだよ。亜里沙って呼べって」
同じ小学校なのだろうか。
このクラスの亜里沙か…
学年名簿に目を走らせると‥
「い、し、い亜里沙だよ〜」
「ぅわっ!」
顔をあげると前の席の小柄な‥
「あ、びっくりさせちゃった?ごめん、オレ鈴木真琴。まことって呼び捨ててね。」
「あ、うん。僕は‥ 瀬戸蒼」
「蒼さぁ、声」
くる。何度となく受けてきた中傷が。
思わず身構えて目をぎゅっとつむってしまった。
「めっちゃ綺麗だね!」
「‥え?」
「透き通っててめっちゃ綺麗じゃん!好きだなぁ〜」
「…そんなこと言われたの初めてかも」
慣れてなさすぎてなんだかむず痒い。
けなされることこそあれど褒められることなんて
「ほんとに!?周りの奴ら変だなぁ。ま、こやって席前後になったのも何かの縁だし、仲良くしよーね!」
本当に席運に恵まれた気がする。
「ありがとう、こっちこそ仲良くしてほしい。‥そういえば、なんで石井のこと知ってるの?」
「あー幼稚園と小学校一緒だったんだよ。地球は狭いよなぁ。‥昔はもっと純粋な感じだったのに」
突然笑顔を途切れさせて真剣な表情でいうまことが面白くて、思わず笑ってしまった。
「ふっはは。純粋ってなんだよ」
「あ、笑った!緊張溶けてきたみたいでよかったよ〜」
「うん」
新しい、未知の進学校でも、思ったより大丈夫そうだ。
「っ!」
と、急に後ろから肩を突かれたが、なんだか随分遠慮したつつき方だ。
「お、俺、田淵祐希。よろしくな」
「よろしく、ゆうき〜!」
依然としてほんわかムードを保っているまこととは正反対に、俺は固まってしまった。
さっきはよく見ていなかったが、深いほりと眉間のシワがすごい強面だ。
しかも短い茶髪で右耳に三つ石のピアスだと!?
「あ、っあ」
「エサやりされた鯉みたいに口パクパクしちゃって〜、どーしたの?」
「あいや…」
「ごめん、こんな見た目だけど怖くはない‥つもり」
「あれ?案外いいやつ?」
思いの外怖いやつじゃなかった。
「口に出てるよ〜」
「よろしく、瀬戸、鈴木」
「高1楽しも〜!」
「おー」
ひとまずクラスには馴染めそうだけど‥
なんか一瞬、ほんの一瞬だけ佐々木がこっちにウインクした気がする。
違うよな、絶対に違う。
ーーーなのに、苦手な人の純粋な笑顔に少し心臓がうるさい
感想と隠れたら嬉しすぎます。リアクションとかブクマとかも!




