⑸ ありますか?
昨日、私の勝手な妄想が一晩中1人歩きしていた。
おかげで今日は寝不足である。
会社から帰宅して、いつものように明里と夕食を頂いた。
明里が「見てー」と言って紙袋を渡してくれた。
中に入っていたのは過去の問題のコピーだった。
「今日、さっそく天文研の先輩に連絡して『あのー過去の問題ってありますか?』って訊いたら『あるよー』って」
「良かったねー」
「先輩から『来週のミーティングであげようと思って、でも、いま部室にいるけど来なーい?』って言われて、早く欲しかったから『行きます』って言ってもらってきちゃいました」
「それにしても……すごい量だね」
「部室に行ったら各部の部長さんが集まっていて、今年の学祭の打ち合わせしていて、そこで私を紹介されちゃいました」
「各部長さんとの繋がりを頂いたんだ」
「先輩が過去問を取りに行ったら『じゃあ、うちの部が集めている過去問もあげるよ』って言われて、沢山の過去問が集まっちゃいました」
「それは良かった」
「今年の学祭で、うちの天文研からはプラネタリウムの展示を行うから、プラネタリウムの作成、手伝ってって頼まれちゃいました」
「お~楽しそうだね」
「前期試験が終わるの9月末で、学祭は10月半ばだから、半月しかない」
「その期間で作れるものでしょう」
「はい……で、過去問は手に入ったんだけど、模範解答が無くて」
「そりゃそうだ」
もらって来た過去問のコピーを見ると、その中に何枚か鉛筆書きで式と答えが書いてある。
この過去問を提供した学生が書いた回答なのだろう。
私は明里に伝えた。
「この回答、怪しい」
「そうなんです。それで友達と一緒に回答作りをする事にしました」
「おお、大学でいい友達、出来た?」
「はい。私は最初、教室の1番前の席に座って1人で授業受けていたのですが、そのうち女子が2人来て、今ではその3人で、いつも1番前の席で授業受けています」
「すばらしいです」
「友達の2人に過去問の話しをしたら欲しいって言われて、今日、この過去問を3人で分けてコピー……大変でした」
「だよね」
「で、3人別々に問題解いて答え合わせしましょうって話になりました」
「いいですねー」
「で、3人とも解らない問題は質問日に聞きましょうって」
「まあ、これだけの量の問題こなせば、勉強になりますよ」
「そう思います」
夕食後、明里はテーブルの上を片付け、早速ノートを広げて過去問に取り組み始めた。
私は熱燗を用意して、明里が一生懸命勉強している脇でゆっくりと飲み始めた。
寝不足の状態で飲むお酒。
後は寝るだけ。
至福のひと時だった。
……しかし、私はまだ知らなかった。
明里がこの先に向けて動き始めた時、碧も既に動いていた事を。
次回:やっちまったか!




