⑶ さて、なんででしょう
以前、各主任に対してチームネームとチームカラーを決めて提出してほしいとの話があり、その提出期限が迫っていた。
こういった事は大方非難の対象となる為、私の部下は誰もやりたがらない。
しょうがないので私が適当に決める事にした。
第3研究棟から外に出ると、社内の敷地の中で芝生の敷かれたエリアがある。
その芝生の中に歩道が作られ、幾つかベンチが用意されている。
私はベンチに腰掛けて一息ついていた。
ちょうどその時、碧が歩いてきた。
「あれ、主任、どうしたんですか?」
そう、ここは私の第3研と、碧の第1研の中間地点だった。
「いやあ、天気がいいので、日向ぼっこです」
「いいですねーでは私も」
碧が隣に座った。
「なんかーチームネームとチームカラー作ってくれって」
「ああ、私の主任も言ってました。私に振ってきたので『チーム・スコッチ』ってどうでしょうって適当に言ったら、んーと言ってどっか行っちゃいました」
「スコッチウイスキーのスコッチですか?」
「ああ、やっぱり解っちゃいます?」
「『お酒好き』って言ってましたよね」
「昨日、水割りを飲んでいたもので」
「1人で、ですか?」
「はい、独りで寂しく飲んでいました」
私は慌てて話題を変えた。
「碧さんの好きな食べ物は?」
「私は、果物でしたらイチゴです」
「苺ですか?」
「小さい頃、私が熱を出すと、祖母がミルクの中でイチゴを潰して食べさせてくれたんです」
「ほう……」
「あれ、こんな可愛い果物、私には似つかわしくないですか?」
「いえ、碧さんに似合ってますよ。苺って薔薇科の植物ですよね」
「薔薇ですか……って、私にはトゲがあるのですか?」
「苺かぁ」
「……主任?」
私は碧に挨拶して職場へ戻った。
そしてチームネームとチームカラーを書いて提出した。
私の申請が、他と重ならなければ受理される。
・・・・・・
それから数日後、社員証の新しいフォルダーが作られてきた。
私の申請が受理され、チームネームとチームカラーが登録されたようだ。
紺色(第3研究所)のネックストラップの真ん中に真紅のラインが入っている。
ネックストラップの帯には白文字で会社名と会社のロゴが入っていた。
3人の部下からチームネームを問うメールが届いた。
私は3人に向けてメールを送った。
「チーム・ストロベリー。チームカラーは真紅(赤い薔薇の色)赤に紫の色調を加えた混合色」
少し待ったが返事が来ない……やっちまったか。
しばらくすると綾乃から返事が届いた。
「チーム・ストロベリー。なんかカッコいいです」
続いてインテリ君からメールが届いた。
「チーム・ストロベリー。アメリカ空軍のチームにありそうな名前ですね。気に入りました」
最後にリーダー君から。
「最初見た時、なんだーと思いましたが、チーム・ストロベリー。おお、確かにカッコいいです!」
3人からのメールを読んで、嫌われていないようだ……と思いたい。
・・・・・・
その日の昼食時、いつものように碧を含めてテーブルを囲んだ。
碧も新しいネックストラップを付けている。
我々の第3研究所の紺色ストラップに対して、碧の第1研究所のストラップは青色だった。
私は碧に話しかけた。
「水瀬さんも、新しいネックストラップになったんですね」
「ええ、なんだかよそ者がいるって、目立ってしまいますね」
リーダー君が言った。
「いゃあ、そんなストラップの色以前に、水瀬さんは注目の的ですよ」
インテリ君が碧に尋ねた。
「中心線のチームカラーは何色でしょう? オレンジですか?」
「そうですね、私のチームカラーは、琥珀色です」
私はそれを聞いた時、いやな予感がした。
綾乃が質問した。
「水瀬先輩のチームネームは、何ていうんですか?」
「それがねー、チーム・スコッチっていうの」
嫌な予感が的中した。
あの時、碧は上司から、チームネーム何にしようかと相談され、適当に言ったチーム・スコッチという名前を付けた。
この事から、碧の上司は碧に執着している事が伺える。
この先、碧を引き抜く際、ひと悶着ありそうだ。
碧が尋ねた。
「みなさんの中心線、チームカラーは何色ですか?」
綾乃が答えた。
「真紅色です」
「帯の紺色と合いますねー、皆さんのチームネームは?」
綾乃が嬉しそうに答えた。
「チーム・ストロベリーです」
碧の箸が止まった。
リーダー君が言った。
「チーム・ストロベリー、カッコいいでしょう」
綾乃が私に尋ねた。
「でも、なんでストロベリーという名前にしたんですか?」
私は碧の目をみて答えた。
「さて、なんででしょう」
なぁんとぉ! 碧の上司とポンコツおじさんの間で、碧姫の奪い合いが、始まってしまうのか!
次回:明里VS碧




