表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/71

⑶ 何が残っているのだろう

 時計を見ると8時を回っていた。そろそろ良い頃だろう。

 ここで2時間以上ねばる為、色々注文した。お酒も相当飲んだ。

 しかし、全然酔いが回らない。

 まあ、あたりまえか。


 私は会計を済ませ、帰路に付いた。

 私がマンションに着いたのは9時を回った頃だった。

 明里が迎えてくれた。

 私は明里に覆いかぶさるように抱き付いた。


「あかりぃ……」

 少し酔いが回ってきたようだ。


「おじさん……ちょっと、飲みすぎです!」

 私は明里に上着を脱がせてもらい、よろよろと浴室に向かった。

 明里はあわてて湯舟に水を入れて温度を下げた。


 私が出てきた時、体を冷やさないようエアコンの暖房をかけてくれていた。

 私はそのままベッドに転がった。


 明里は部屋をノックして私の布団に入ってきた。

 明里は布団の中で私の腕を抱きしめている。

 私はその時、明里の体が震えているのを感じた。


・・・・・・


 次の日、朝起きると、まだ酒が抜けていないようだ。

 しかし会社に着く頃には抜け切るだろう。

 そんな感じだった。


 明里は朝食の支度をしている。

 私はキッチンへ行った。


「おじさん、おはようございます」

「ああ、おはよう」


「おじさん、大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない」

「昨日のおじさん、ちょっと心配でした」

「ごめんごめん……それほど飲んでいないのだが、夜風が冷たかったから、悪酔いしちゃったみたいだ」


 ……嘘である。

 昨日は相当飲んだ。

 そして全然酔えなかった……家に着くまでは。


「本当に気を付けて下さい。私、夜中に何度も起きて……息しているか心配でした」

「ああ、すまない。ありがとう」


「それと、相当うなされてました……寝言も言ってました」

 私は恐る恐る聞いた。


「どんな寝言、言ってた?」

「……ちくしょう……ちくしょう……って」

 私は固まった。


「何がそんなに悔しかったんですか?」

 明里は心配そうに尋ねた。


 私は自分に問いかけた。

 何がそんなに悔しかったのか……それは、会社での評価だ。


 私を見下す若手の社員。

 私が担当している問題の難しさが、解かっていないのだ。


 しかし、私はその不満から目をそらせていた。

 不満に目を向けると不満を拡大させてしまう。

 『私に能力が無いからだ』そう自分に言い聞かせていた。

 そうする事で、心の均衡を保っていた。


 ところが、碧は言った。

 『会社は主任の能力を推し測れていません』

 『来年、私は第3研へ異動願いを出しますので、主任の下で仕事させて下さい』


 碧の言葉で、心の奥底に眠らせていた感情が、目を覚ましてしまった。

 そして、そう言ってくれた碧を、昨日突き放した。

 ……今の私には、何が残っているのだろう。


「おじさん?」

「ああ」


「おじさん、今日は?」

「ああ、もちろん会社へ行く」


「……大丈夫ですか?」

 明里は心配そうに私を覗き込む。


「ああ心配いらない」

 私は朝食を済ませ、会社へ向かった。


次回:私の隣には

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ