⑴ 適当な話を
私が自宅マンションに着いたのは、正午を少し過ぎた頃だった。
「ただいま」
「おかえりなさい」
明里は私に抱き付いてきた。
「昨日は夜明かしして飲んだから、早く寝たい」
「了解しました。夕飯は早めに」
「ありがとう」
明里は浴槽に湯を張って、夕飯の支度を始めた。
私は荷物の整理を行い、衣類を洗濯機に入れて入浴した。
風呂から出たのは3時半、そして4時から夕飯を頂いた。
その日、ベッドに入ったのは6時頃だった。
明里が部屋をノックした。
「おじさんが寝たら、自分の部屋で寝るから」
そう言って、ふとんに入ってきて、いきなり私に抱き付いて言った。
「昨日はさびしかったよー」
明里に抱き付かれながら、碧を思い出してしまう……いかん、いかん。
・・・・・・
次の日、目を覚ました私はリビングに向かった。
テーブルの上に置き忘れたスマホがメール着信の点滅をしている。
私はパスワードを入れて開くとメールは2通。
1通目は同僚から。
昨日の宴会で綾乃が清酒を注いでくれている写真と二人でカメラに向かった写真。
『犯罪者にならないように』とのコメントが書かれていた。
綾乃は院卒の修士だから、現役であれば24歳。
24の娘に手を出したら犯罪者と見なされるのであれば、18の娘を囲っている私は、おそらく社会から抹殺されるだろう。
私は『ありがとう犯罪者にならないよう気を付けます』と書いて返信した。
そして2通目は碧からだった。
『お約束の領収書の写真、メールで送ります。昨日は本当に楽しかったです。またメールして良いですか?』
私は早速返信を送った。
『領収書のメールありがとう。お支払いしたいのですが、会社では具合悪いので、お会い出来ませんか』
すると、すぐに碧からメールが返ってきた。
『私は今日1日大丈夫です。待ち合わせの時刻と場所を指定してください』
私は少し考え、メールを送った。
『待ち合わせは17時。場所は○○駅、南口の○○喫茶店でいかがでしょう』
すると、またすぐに返信が届いた。
『了解しました。またお会い出来て嬉しいです。楽しみにしています』
・・・・・・
しばらくすると明里が起きてきた。
「おじさん、おはよう。ごめんなさい、すぐに朝食作りますね」
「あ、今日、ちょっと夕方から外出するから」
「えっ? 買い物だったら、私も行きたい」
「いや……昨日の社員旅行で、同期が結婚した事を報告して……彼の家で結婚披露会が開かれる事になって……私にも声がかかったから、お祝いに行ってこようと思って」
「そうなんだーじゃあ、私は行く訳にいかないねー」
「そうだねーごめん」
「おじさんは会社の方とのお付き合い、大切にして下さい」
「ああ、だから今日は、夕飯いらないから」
「わかりました」
私は適当な話をつくりあげて、外出する事を明里に伝えた。
おじさんは、息を吐くように嘘をつくようです。
次回:どこで間違えた




