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⑸ 私、怒ってます!

 次の日、いつものように帰宅した。

 既に夕食の準備は整っている。

 明里と一緒に夕食を頂いた。


 しかし、まったく会話が無い。

 そう、昨日明里を怒らせてしまった。

 私が、明里の気持ちを軽く捉えていた事に怒っている。


 夕食を終え、明里はキッチンに向かって後片付けをしている。

 私はリビングの椅子に座り、明里の後ろ姿を見ていた。

 ……私の方を振り向かない。


 私は、明里の後ろに移動して話し掛けた。

「あかりさん?」

 すると、明里は背を向けたまま言った。

「私、怒ってます!」

 ……なんだろう、怒った明里って、めちゃくちゃ可愛いい。


 私は後ろから明里に言った。

「本当は、あの男と付き合いたかったんじゃないの?」

 明里は両手を握りしめている。


 私は明里の両腕に手を添えた。

 明里は下を向き、逃げるように自分の部屋へ入って行った。


 私は自分の部屋のベッドで横になりながら、色々な事を考えていた。

 先ほどの、明里の表情が思い出される。


 ビールでも飲みたいと思い、リビングの冷蔵庫に向かった。

 すると、明里の部屋からすすり泣く声が漏れてくる。

 私は明里の部屋をノックした。


「明里?」

「……」


「明里……入ってもいい?」

「……」


「あかり?」

「……どうぞ」


 明里の部屋に入ると、明里はベッドの上に座り、枕で顔を隠している。


「どうした?」

 明里は、抱いた枕の上からそっと目だけ、のぞかせた。


 私は、明里のベッドに腰を下ろして言った。

「さっきは悪かった」


「うううっ……ごめんなさい」

「ごめんなさい? 明里にとっては怒る事であって、謝る事じゃないだろぅ」

「違うんです」


「何が違うんだい? 私に解かるように、話をしてくれないか」

「……」


 しばらくして、明里は話し始めた。

「さっきまでの私は、本当に怒っていました。おじさんが私を信じてくれていなかった事にです」

「そうだね」


「でも『本当はあの男と付き合いたかったんじゃないの』って言われた時、私に原因があるって気付きました」

「ちょっと……何を言ってるんだ」


「最初のおじさんとの出会いです。私がおじさんから、いいかげんな子だと思われてる事、当然です」

「えー明里?」


「最初におじさんと会った時の私、やり直したくても、やり直す事が出来ない……」

 明里は枕で声を抑えるように泣きだしてしまった。


 私は頭の中を整理した。

「明里、聞いて、話は3つある」

「……」


「1つめは、最初に明里と会った時だが……見ず知らずの私に帰るところ無いから泊めて欲しいって言ってきた時は、なんて子だろうと思った……でも、明里が独立する為に用意してくれたお金をお母さんの為に使って家を出て……そして、本当はこれからの事が怖くて死にそうだったって言ってたよね。そう、あの時の明里はぎりぎりの所を歩いていたと思う。私は明里がいいかげんな子だとは思ってないよ」


 明里は、怯えるような目を、枕の上から覗かせて言った。

「……本当?」


「ああ、次に2つめだけど、最初に明里と会った時、明里が追い詰められていなければ、私との出会いは無かったと思う。私との最初の出会いを明里は後悔しているようだが、私はむしろ感謝している」

「……おじさん」


「そして最後の3つめだけど、私が明里を信用していない事で、明里は怒ったよね。その、明里の怒った表情が可愛くて、ついもう少し、怒らせてみたくなって……」

「ううう……おじさん……ひどい」


「ああ、その表情……いい」


・・・・・・


 その日、明里は私を許さなかった。


「私、怒ってます!」

 明里が向ける怒った表情。

 私にとって、ご褒美だった。


何という事でしょう。

明里さんに怒られて、喜んでる変態おじさん。

明里さん、どうかおじさんの顔を、踏みつけてあげて下さい。

ご褒美だぁーと言って大喜びします。

ちなみに、おじさんの好みは……白です。


次回:(第3章 終話)明里さんとデート

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