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リコレクション  作者: 空犬
第一章 『運命の出会い』
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第一章16 「勝機に繋がる道」

 琉依と美琴が合流したことで数的有利は圧倒的にこちら側にある。化身の数で数えれば五対一だ。例え相手が何か仕掛けようとも、もしかしたら数の力でなんとか抑えられるかもしれない。


「叶愛、遅れてごめん……!」


「……美琴……?」


 叶愛の頬は赤くなっていて、汗も少しかいている。かなりの興奮状態が続いていた。


「これで、四人全員揃ったってことだね!」


 興奮状態でありながらも平静を装い、いつも通りの叶愛として言葉を発する。それはまるで内から沸き出る興奮を抑えているようだった。


 四人全員の化身が揃ったことで圧倒的にこちらが優勢になる。


「すみません、遅れて。僕達も加勢します」


「相手の化身、闇と一之瀬さんが言ってた思考を操るんだと思う。さっきから焔とルアの攻撃がまるで見透かされているように当たらないんだ」


「だけど僕達四人でかかれば思考操作の対象者が増えますから、多少は攻撃が通じるかもしれません」


 「じゃあそれで行こう!」という蓮の言葉に合わせて、五体の化身は攻撃体制に。それぞれ力を溜め、溜まったそれを五体同時に一斉に放つ。


 焔は炎を。琉依の二体はそれぞれ風と雷を。叶愛は凝縮された小さい結晶を複数ルアの周りに召還し放つ。そしてリアは水の光線を。


 五体の攻撃は全て犯人の化身 ロックに向かう。


 闇の空間全域に大きい爆発音が鳴り、辺りは煙に包まれる。四人は一斉攻撃が決まったと感じたが、煙が晴れたときそこにあったのは、化身も犯人の姿もないただの闇の世界だった。


「あれ、化身もいないし……犯人の男の人もいない……」


 美琴は辺りを見渡すが、四人と五体の化身以外誰もいなかった。他の三人も結果は同じで周りには誰もいないただの闇の空間。


 すると、不気味な笑い声が聞こえる。声質からして犯人のものだろう。どこからではなく、この闇の空間全ての角度からその笑い声は聞こえた。


「――暗黒乱撃波(あんこくらんげきは)


 笑い声から一瞬の間があり、再度犯人の低い声が聞こえた。


 技名のような言葉が唱えられた瞬間、空間から複数の闇の光線が出現する。咄嗟の出来事。そして複数の攻撃。それはさっきの五体の攻撃より多かった。その光線は五体の化身に命中する。


「焔っ!」


 そう叫んだが、四人全員ですら予期していなかった事態、突然現れた攻撃。当然避けることはできない。


 放たれた光線をガードすることもなくほぼ命中。やはりそれなりにダメージはある。


「どこから攻撃してきたんだろう」


 叶愛の疑問に既に予想、いやほぼ答えを見つけた琉依がこう言った。


「相手は闇の中に隠れて攻撃をしてきたんだと思います。闇を操るんですから、闇の中に潜ることも可能だと思います」


 闇の能力を持つのだからその闇を攻撃手段として使えたり、それを回避として闇に潜る、なんて芸当も出来るはず。


「闇に潜ってたら、私達の攻撃は当たらないよ……」


 美琴の言う通りだった。攻撃をするにも、闇に潜っているのだから相手がどこにいるのかすら分からない。


「……だったら、この空間全部に向けて攻撃すればいいんじゃない……?」


 叶愛がそう呟く。下を向いていた叶愛は前を向き、


「上も下も、横も縦も斜めも! ぜーんぶ攻撃しちゃえばいいんだよ!!」


 ルア、と叫びに近い声を発したその瞬間、ルアの周りに小さい結晶をさっきの一斉攻撃よりも多く召還していた。上も下も、横も縦も斜めも、その攻撃はこの空間全てを狙っていた。


 だけど明らかに初めての化身の戦闘に対して適していない。さっきの攻撃より何倍も増えたその結晶の攻撃を放てば叶愛自身が疲弊するだけ。

 今の叶愛は戦闘という知らなかった快楽を知り、ただその快楽を感じたくて突き進む。言わば本能に支配された獣も同然だった。


「――待ってください、叶愛! ……その攻撃を解除してください」


 そんな叶愛を誰よりの一番に止めたのは琉依だった。


「僕は防衛軍の隊長の父から化身の戦闘の仕方、そして知識を知りました。その視点から言わせて貰うと、今ルアがその攻撃を放ったら精神エネルギーを一気に使い果たす」


 琉依は続けて説得に近い言葉を言い継ぐ。


「精神エネルギーは化身を扱う上で大切なエネルギーです。能力を使うにも精神エネルギーが要ります。これはエネルギーですから、闇雲に能力を使えば当然減っていく。精神エネルギーを使い果たせば、化身使いである僕達にも影響があります。今ルアの攻撃を放てば、叶愛は一気に体力が吸われたように疲弊し体が動かなくなる」


 琉依の言葉に蓮も身に覚えがあった。初めての戦闘、強盗犯と初めて戦ったときだ。あの時も化身を倒した最後は全ての体力が吸われたように体の自由が一切利かなかった。


「俺もその攻撃をやめた方がいいと思う。身に覚えがあるんだ」


「叶愛、一度冷静になってください。僕達はただ自分勝手に相手と戦っているわけじゃない。――これは『依頼』なんです」


 叶愛は相変わらず頬は赤く、火照っているままだ。

 ただ琉依は叶愛の身の心配と、これは依頼だということを訴えた。


「……ごめん。確かに、一人で突っ走り過ぎたかも」


 ルア、と自分の化身を名前を呼ぶ。ただその声はさっきのような叫びに近い声じゃなく、溜まってたガスが抜けたみたいな、小さく冷静な声。

 名前を呼んだ瞬間、ルアの周りに浮かんでいた小さい結晶の数々が消えていった。


「……本当にごめん! そうだよね、これは依頼。私達はゆかさんの依頼の解決するために動かないといけない。――今度は一人で突っ走らない! ちゃんと皆と協力して戦う!」


「叶愛……」


 叶愛は頭を下げ、誠心誠意謝る。その態度に美琴の表情は安心したものになっていた。美琴にとって叶愛はたった一人の自分の友達。心配するのは当然で当たり前だ。


「次は……闇の中から出てこない犯人ですが……」


「それなら、俺に考えがあるんだけど」


 叶愛の問題が解決した後で、琉依はすぐさま犯人にどうやって攻撃するか、それを口に出し考えていた。


「考えって何……?」


「それは……」


 四人は集まり、策がある蓮の話を聞く。

 蓮の話を聞き、四人の中で一つの作戦ができる。この作戦の鍵は蓮と焔がどこまで相手に攻撃されないかにかかっている。つまりこの作戦は蓮と焔がいないと成立しない。



・・・・・・



「……よし、焔! 光破拡散(こうはかくさん)!」


 蓮が唱えた技名と共に焔は上空に飛び、くちばしから大きい光弾を作る。その光弾から数多の光線が上に向かって放たれる。

 放たれた光線は全てロックの作りだした闇の世界に当たり次第吸収されていく。すると……、


「ぐわぁっ!」


 闇の世界の天井ともいわれる場所から犯人とその化身ロックが落下し、地面に激突する。

 犯人の男はロックが下敷きになり、大怪我はしていない。


 すかさず琉依の二体の化身とルアは休む暇を与えないように、一気に接近する。


「蓮、今です!」


 琉依の合図と共に、焔の上に股がった蓮は上空に上昇する。


「……なんでアイツだけ上に……?」


 犯人の男はそう呟くが、琉依の化身、叶愛の化身がロックに三体の猛攻撃を仕掛けているため、そのことを考えている暇がない。


「ハウ、ルフ! ルフはルアと一緒に攻めて、ハウは二人を疾風操作(しっぷうそうさ)で援護!」


 ロックは押されていた。単純に三対一という不利な戦いのせいでもあるが、琉依のもう一体の化身、白い毛並みの狼 ハウ。ハウが持つ能力の疾風操作。その使い方はどちらかといえば攻撃ではなく、援護。

 琉依のもう一体、黒い毛並みの狼 ルフ。戦いの最中でも使っていた雷、これがルフの能力の一つ。ルアとルフは攻め、ハウが援護要因として疾風操作を使用する。その布陣が完璧で、犯人の男に刺さったのだ。


 ロックは闇操作(やみそうさ)と思考操作、この二つの能力を持っていた。闇操作は言葉通り闇を操る能力。思考操作は一之瀬 潤が言っていたようなことができる能力。既に犯人の男はロックに指示し、思考操作を使っていた。

 だが犯人の男の欠点は二人の思考を把握し、それを踏まえた上での指示ができなかった。


 それは単純に、犯人の男の脳の情報処理能力が低い、ただそれだけだった。だから犯人の男は二人の思考を見ても、『その思考を踏まえた上でロックにどう指示をすればいいか』。それがただ単にできなかっただけなのだ。

 琉依に関しては二体化身を所持しているし、蓮と叶愛の戦いのときは、叶愛が暴走状態だったこともありルアの攻撃は単純なものだった。だから叶愛の思考はそこまで見なくても大丈夫だったのだろう。だから蓮の思考を把握するだけで良かった。


 犯人の男は反撃をしようにも、ルフとルアにより攻撃でその暇もなく、抜け出したかと思えば、援護に徹していたハウの援護攻撃を受ける。


 犯人の男にとっては最悪の状況、四人にとっては勝機が広がっていた。


「くそ……っ、がぁぁぁあーーッ!!」


 ロック、と自分の化身の名前を叫ぶ。その目はさっきよりも強い殺意と憎悪が混じっていた。


暗人形代(あんじんかたしろ)


 瞬間、犯人の男とロックの周りに黒い人の形をした物体が多数出現される。

 大きいものもいれば、子供ぐらいの身長のものもいて様々だ。背景と同化しているが、唯一その物体の目だけは黄色く光っている。


「黒と黒で見えにくいですが……十体はいると見た方がいいですね」


「だったらそんなの無視して先に本体を攻撃しちゃえば!」


 叶愛の指示でルアは召還された黒い物体達を避け、ロック本体に先程と同じように自身の手に結晶を纏ってそのまま腕を振る。


 鈍い音が響いた直後、黒い物体のうち一体が消滅した。

 二人が戸惑っている間にルアはロックに反撃され、吹き戻される。


「今ルアがパンチしたのに……なんで攻撃が当たってないみたい相手の化身はピンピンしてるの!?」


「……暗人形代……形代という言葉は、身代わりのような意味合いもあったはず……」


「ははは、その通りだ。この技で召還されるこいつらがいる限り、ロックに攻撃しようともそれが反映することはない。攻撃をすれば今みたいにこいつらが身代わりになる」


 犯人の男は高らかに笑う。やっと形勢逆転な出来事が起きて嬉しいのだろう。このまま続けていれば、犯人の男が負けるのは必然だった。


 ロックと黒い物体を合わせると十体はいる。数でいえば、圧倒的に叶愛と琉依が不利だった。

 だけど不利な状況でも、叶愛と琉依の表情は変わらなかった。むしろさっきより表情は明るくなっている。


「ふふ」


「……何がおかしい」


 琉依は笑っていた。

 そして人差し指を天に向け、こう言った。


「忘れてないですか? ――僕達以外にもこの空間にいることを」


 そう琉依が言ったとき、上空では、ロックに向かって攻撃準備をしている蓮と焔がいた。

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