96話 あなたは冬を耐えきれますか?ー流石に衣替え
「王よ…………今からでも遅くはありません、今すぐお戻りください」
「あーあーうるさいのう、妾は妾のしたいようにするのじゃ!口出しするなと言うておろうに!」
とある山道。鬱蒼と木々が密に茂り、昼でも漆黒の様相を呈する中、静けさを破壊する二つの人影があった。
「そうは言われましても、既に一月、業務が停滞しております。そろそろ天界からのお達しが来てもおかしくはありませんよ」
「来ん来ん、何故なら我らが太陽神も遊んでおられるからのぅ!わっはっは!」
色素が抜け落ちたような白の髪を風になびかせ、少女は傲慢に笑う。
「はぁ……全く、貴方はいつもこうですね。私共の苦労を分かっておいでですか?」
対する女性は、烏の濡れ羽色と表現すべき、しっとりと艶やかに舞う髪を持ち、眼前の少女に向けてため息をついていた。
「今回ばかりはお主らにも構っておられんのじゃ…………少々、面白いことになりそうでのう」
髪と同じく、色素の抜け落ちたような、それでいて強い意志を感じる白瞳は細められ、楽しそうに笑う。
「その言葉を何度聞いたことか…………」
またしてもため息をつく女性からは、既に諦観が見て取れた。
深い森の中……事態は密かに動き出していく。
◇
「おいソルス、寒いんだからもっとそっち寄れよ。俺が火にあたれないだろうが」
「あんたこそそっち行きなさいよ。今日は曇ってて私も寒いの、それに動いたらまた床が冷たいじゃないの、ようやく温まってきたのに」
あの事件…………世界会議の末聖ケトラコル城が爆破された例の事件からしばらくが経ち、結界村にも冬が到来していた。結界を出てから二度目の冬だが、結界があった頃より明確に寒い。もしかしてあの結界は防寒機能とかがあったのだろうか。
…………よく考えたら夏もあんなに暑くなかったな。もしかして俺のせいか?
「主、どうしたのだ?少し顔が青いな……私と代わるか?ここなら暖かいぞ」
どうやらヨミに見られていたらしい。俺の隣で、あんまり当たってはいけないものが当たる距離だ、仕方ない。この事は墓まで……俺死なないんだったな、永遠に秘密にしよう。
「いや、大丈夫だ、気にすんな」
とりあえず否定してみるが、どうやら拭えなかったようでまだこっちを見てくるヨミ。その顔は炎に照らされ、少し赤く見え…………
「おはようございま…………何してるんですか」
久しぶりに昼前まで寝ていたメリルが起きてきた。さっきまでぬくぬくお布団してたお前には分からんだろうな。
「寒いから火にあたってんだよ。お前は寒くないのか?」
「寒いですが……そこまでですね。基礎代謝の違いでしょうか?」
「ねぇメリルちゃん、遠回しに年齢を馬鹿にしてるのかしら?場合によっては色々とぶちまけることになるわよ?」
「してませんやめてくださいお願いします」
おお、メリルがこうも簡単に論戦で負けるとは。何か素晴らしい弱味でも握っているのだろう、後で聞いてみよ。
「それに、年齢でいえばヨミがそこにいるのがおかしいでしょうが。身長も高いですし、体つきもしっかりしているのですから、一番寒くても大丈夫そうでは?」
「あ、いや……獣人は動物の体の特徴も備えているから……毛が少ない獣人は寒さに弱いのだ」
そう零すヨミは、いつもの激エロくノ一スタイルではなく、可愛らしいパジャマのような服を着ていた。少しモコモコしていて暖かそうなやつである。ちなみに俺はジャージもどき。
「そのために暖かい服着てるんだろ?それでも寒いのかよ」
「あ、いや……そんなすごく寒いと言うわけではなく…………」
チラチラとこちらを見ながら何かを言いたそうにする。それに反比例するかのようにメリルの顔から表情が消えていくのでやめて欲しい。
その時玄関が開いた。
「皆さーん!雪ですよ!あ、メリルさんおはようございます!雪です!雪が降ってきましたよー!」
今日も元気な可愛い弟子、ユリアさんだ。何枚か重ね着しているのか、少し動きにくそうだ。そういえばこいつ、アリアに団子みたいになってたって言われてたし重ね着好きなのかな。
「雪ぃ!?更に寒くなるじゃない……」
ソルスがわなわなと震え出した。いい気味だと言いたいが、正直俺も寒くてそれどころではない。そろそろ衣替えか……
しばらくの間魔王軍の動きはなく、平和な日々が続いていたため、俺は立派な引きこもりと化していたのだが、こうして服を買いに行くことを決めた。
5日連続投稿、最終日です!キツかった!代わりに一気に進ませることもできたので、まぁ良かったかな……
そんで第8章もスタートしました!よろしくお願いします!
恒例の謝辞コーナー!
またしてもブクマ一件いただきました!ありがとうございます!
それではまた次回の更新……いつになるかは分かりませんが、その時にお会いいたしましょう。




