表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
268/496

美しき女神を護る騎士

「そろそろ、奇襲部隊が動き出したころかな?」


 クッキーがアーミル王国軍の兵士を蹴り飛ばしながら言うと、草を刈るように長剣で兵士を切断しながらグリーンバックライトは頷いた。


「ああ、頃合いだろう。もう少し暴れて、さらにこちらに敵をおびき寄せようか」


 グリーンバックライトがそう言うと、スタークが拠点に向かって走り出した。


「ばっかやろう、もう目の前に敵の拠点があるんだ、このまま俺が、敵の大将の首、取ってやるよっ!」


 スタークは自分の身体の周りに浮かべる氷の球の数を増やし、目の間の兵士を弾き飛ばしながら拠点に向かって走る。

 と、前方で戦闘をしていたマフダリ王国軍の兵士の一団が飛沫を散らすように吹っ飛ばされた。


「何だ……?」


 兵士たちが弾き飛ばされた地点、アーミル王国軍の拠点が目前という位置までスタークが達したとき、


「クハッ、死っねぇっ!」


 横から男が迫り、スタークの頭部に掌底を叩き込み、スタークを吹っ飛ばした。


 たった1発の掌底。それだけで、スタークは顔中の穴から血を流し、戦闘不能となった。


 スタークを吹っ飛ばしたのは、戦場に似合わぬタンクトップ姿の赤い短髪の男。

 マフダリ王国の兵士たちが集団でタンクトップの男に突撃する。

 タンクトップの男が大きく腕を振りかぶるのを確認し、前方の兵士が盾を構え、その背後に他の兵士が回った。


「ハッ、全員まとめて吹っ飛ばしてやるよっ!」


 タンクトップの男は何を気にすることもなく、盾に向かって掌底を放った。


「バカが、そんなの意味な――」


 と盾を構えた兵士はほくそ笑んだが、強い衝撃が盾を貫き兵士の身体に流れ、さらにその兵士が背後に吹っ飛ばされ背後の兵士に接触すると、接触した兵士たちも衝撃を受け、十数人の兵士が一斉に吹っ飛ばされた。


 拠点の近くでマフダリ王国軍の勢いが止まり、逆に拠点の周辺のアーミル王国軍の兵士の数が多くなり、クロキら奇襲部隊は拠点の手前で足止めを受けた。

 そんなクロキにタンクトップの男が気付く。


「ク、ハハハッ、お前、確か、クロキだったか」

「お前、カーディナル……」


 タンクトップの男は、地下闘技場でクロキと戦った、暗殺者集団「色付き(コロラト)」の構成員、カーディナルであった。


「お前っ……色付き(コロラト)は何の目的で」

「色付き? クハッ、俺はもう色付き(コロラト)じゃねえ、俺は今や、美しき女神を護る騎士だ」

「美しい……女神……?」


 クロキがポカンとしていると、拠点に設置されたテントの方向から叫び声が聞こえ、振り向いた。

 突き刺さった剣を抜かれ、地面に倒れるブレイド隊の隊員の姿が見える。アーミル王国軍の兵士の隙を縫って、何とか指揮官の元に辿り着いたようだが、返り討ちにあったようだ。

 ブレイド隊の隊員の死体を足元に、剣と盾を構えた軽装備の女性――それはアーミル王妃カルガナであった。


「まさか、お前……」


 クロキが察し、カーディナルを見た。


「ああ……あの女最高だぜ、お前もあの女を殺ろうってんなら、俺がぶっ殺す」


 カーディナルの恫喝に、クロキは小さく笑った。


「いや……あの人が来ているのなら……」


 クロキはカーディナルに背を向け。カルガナに向かって走り出すと、蛇のようにカルガナに巻き付こうとするファンザの頭部を殴り飛ばした。


「どうも、お久しぶりです」


 クロキがカルガナに挨拶をすると、カルガナは驚きつつも嬉しそうに笑った。


「クロキ、久しぶりですね、こんな所で何をしているのですか?」

「話は後です、今は敵を追い払いましょう」

「よろしい、では、背中は任せましたよ」

「背中……? いや……」


 カルガナには後方に下がってもらおうと思ったのだが、カルガナは自ら剣を振るい、襲い来るマフタル王国軍の兵士を斬り捨てていく。

 カルガナの周りは武装した侍女らが固め、これまた危なげなくカルガナに迫る兵士からカルガナを守っていた。

 正直、クロキが背中を守る必要もないように思えたが、ここでカルガナが倒されてしまってはクロキの目的――カルガナの協力を得てヒース、テイラーと合流するという目的も達することができない。


「あんた、裏切るのかい!」


 ファンザを攻撃したクロキに向かって、ベローチェが怒りの形相で腕を向けた。


「悪いな……俺にはやらなくっちゃならないことがあるんだ」

「知るかっ、そんなこと!」


 ベローチェの魔法の詳しい効果は分からないが、腕を向けた方向にある対象を破裂させることができる。

 クロキは身構え、ロックオンされないよう早い動きでかく乱しようとしたところ、ベローチェは背後から攻撃を受け気絶した。


「クロキを傷つけて良いのは私だけよ」


 ベローチェを攻撃したのはヘザーであった。


「クロキがそっちに付くなら私もそうする」


 ヘザーはそう言ってクロキの隣に立って、ブレイド隊に身体を向けた。

 カルガナはヘザーの着ている物が、メソジック帝国軍の軍服であることに気付きクロキに聞いた。


「クロキ、その娘は?」

「ああ……こいつは、話せば長くなるんですが、とりあえず今は敵ではない、と思います……今は」

 クロキがそう答えるのを聞きながら、カルガナはヘザーを見ていたが、ヘザーがカルガナとクロキに面識があることを察し、カルガナを睨みつけた。

「あんた……私のクロキを――」

「クロキの友人なら、私の友人ですね、よろしくお願いします」


 そう言ってカルガナがにこやかにほほ笑んだので、ヘザーは毒気を抜かれてカルガナをけん制しそこなった。


「クハハッ、ボサッとしてんじゃねえぞ、暴れろ暴れろ!」


 カーディナルが、衝撃を物体に貫通させる固有魔法ネイセイヤーで兵士を吹っ飛ばしながらクロキに向かって叫んだ。


「ちっ、よくあいつを手なずけたな」

「ふ、面白い男でしょう」


 カルガナは兵士を倒しながら笑った。


 クロキとヘザーの裏切りを知ったブレイドが剣を構えてクロキに接近する。


「貴様らっ、脱走は許さんと言っただろう」


 クロキはブレイドの剣を刀で受け、数度斬り合った後、ナイフを投げながら距離を取ろうとしたが、ブレイドはナイフを剣で斬り払うと、剣の切っ先が地面に接するほど下げて、


「喰らい尽くせ、シャーク・レイド!」


 と振り上げた。

 すると、クロキの目の前の地面にサメの背びれのような突起が現れ、クロキに向かって来たかと思えば、眼前で地面から飛び出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ