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合わない2人

 ムー帝国の皇太子派と連合し、ムー帝国に攻撃を仕掛けていたメソジック帝国軍は、参謀のセルゲイの戦死と、隊長のヘザーの失踪により、副隊長のシアラの指揮のもとムー帝国から撤退した。

 そして反乱の首謀者である皇太子がメソジック帝国軍とともに国外に逃亡したことにより、ムー帝国の内紛は治まりを見せた。


 オーウェンらガーマン共和国の三人は本国から帰国命令が出たため、ムー帝国の所有する特殊な飛空艇でガーマン共和国まで送り届けられた。


 ヒースとテイラーは、リュウイチロウとともに、皇帝の娘ナイア姫の助力も得て、ヘザーとの戦闘の最中に消えたクロキの行方を探っているが、これまでに例のないことであるため、捜索は困難を極めていた。

 魔力を持たないヒースに魔法の分析などできるはずもなく、指を加えて見ているしかなかったが、クロキの心配と同時にカミムラの目的について行き着いた一つの推論に関し、とてつもない焦りを感じていた。




 眩しい。


 クロキは強い日差しに目を開けると、木々の間から見える吸い込まれるような青い空が目に入った。

 直ぐに身体を起こし、辺りを見回す。


 シダ植物の林。

 先程までいたムー大陸の森とは明らかに植生が違う。ここは、ムー大陸よりも南方らしい。

 それにしてもあの光はなんだったのか。突如白い光に包まれ、目覚めたらここにいた。

 まるで、この世界に召喚されてきたときのよう――


「まさか……っ」


 クロキは徐に立ち上がると、改めて周囲を見回した。

 元の世界に帰って来たのではないか。

 そう思った矢先――


「残念だけど、私たちの世界じゃないわ」


 声のする方を見ると、髪の毛の半分をピンクに染め、もう半分が黒髪の白いローブの女――ヘザーが大きな水晶がはまった杖を手に立っていた。

 クロキはヘザーに気付くやいなや、瞬く間にヘザーに接近すると、杖を蹴り飛ばして組み伏せた。


「おい、ここはどこだ、何があった」


 質問をぶつけるクロキに対し、ヘザーは突然組み伏せられたことを嫌がる様子もなく、むしろ嬉しそうに笑った。


「積極的ね……その気になった?」

「は? 何言ってんだ、いいから知っていることを話せ」


 クロキが苛立っていると、ヘザーの影が動き出し、クロキを拘束しようと向かって来たため、クロキは咄嗟にヘザーから離れ距離を取った。


「つれないわね……二人きりなんだから、恥ずかしがらなくてもいいのよ」


 やっぱり話が通じない女だ。

 クロキは、自分がヘザーに苛つきを感じていることに気付き、深呼吸をした。


「お前の知っていることを話せ、さもなくば……殺す」

「ああ……なんて殺気……」


 クロキが殺気を向けてもヘザーは恍惚の表情を浮かべるばかり。


「私にそんな思いをぶつけてくれるなんて……嬉しい」

「くそ、話になんねえな……話す気がないならお前に用はない」


 クロキはついにヘザーとコミュニケーションをとることを諦め、その場から立ち去ろうとした。するとヘザーは一転、戸惑った様子を見せる。


「えっ、なんで、うそ、行かないで」


 ヘザーの呼び止めを無視して、クロキは歩き出す。


「もう、分かった、分かったから、クロキの知りたいこと何でも教えてあげるから、行かないでっ」


 クロキは立ち止まり振り向いた。


「じゃあ、まず、ここがどこか知っているなら教えろ。そして、俺たちに何が起きたもだ」

「ここはアーミル王国の南、レムリア大陸よ、ほら」


 ヘザーが指を差す方向を見上げると、遠くに山のような大きさの大樹が見えた。

 そういえば、世界樹は三本存在し、そのうち一本がアーミル王国の南の大陸にあると聞いたことがあった。


 植生から考えて、ここはアトランティス大陸でもムー大陸でもない。とすれば、ヘザーの言うとおりレムリア大陸であることは間違いないだろう。


「それから、私たちがなぜここに飛ばされたかは分からないわ。この世界に召喚されてきたときと同じ感覚だったけど、誰かの魔法というわけでもなさそうだし、何が起きたのか私も分からない」


 ヘザーが嘘をついているようには見えない。

 ならば、これ以上何が起きたか考えても無駄か。これからどうするかを考えるべきだ。


 クロキの思案に勘付いたかのようにヘザーは甘えたような声を出した。


「ねえ、街を探すんでしょ? 私も一緒に行って良い?」


 ここに飛ばされる直前まで殺し合っていた相手。正直言うと、クロキはヘザーとはあまり関わりたくはなかったが、いくらヘザーが魔法に長けているとはいえ、ここに一人を残して行くのも気が引けた。


「……条件がある。それで良いなら着いて来い」

「条件? なに?」

「俺の質問には全て正直に答えること」

「もちろんよっ、クロキに隠し事なんてしないわ、何でも聞いて。何が聞きたいの? 私のスリーサイズ? それとも好きな男性のタイプ?」

「お前も『破壊の七徒』なのか?」


 予期せぬクロキの質問に、ヘザーの顔から笑みが消える。


「……そうよ、私は破壊の七徒の一人、冥壊(めいかい)ヘザー」

「メンバーは、オリバーとシャールーク、そしてカミムラと、ジャックもか?」

「ジャックはそうだけど、カミムラさんは違うわ、破壊の七徒はカミムラさんの計画の実行部隊。ほかのメンバーは何か大きな人と、いっつも兜で顔を隠している女と、あと、中国人みたいな拳法使い」


 ハミルトンと、シュマリアン共和国で遭遇した白銀の女騎士、そしてドゥエンの姿がクロキの頭をよぎった。


「お前らの目的は……一体何をしようとしている」

「名前のとおり、この世界を壊すのよ」


 平然と良いのけるヘザー。


「一体何のために、どうやって破壊するつもりだ」

「どうやって? さあ……私はカミムラさんの言うとおりにしているだけだから。ああ、それより、馬車の音が聞こえるわよ」


 ヘザーの言うとおり、確かに馬車の音が聞こえる。

 クロキはヘザーを一瞥すると、音のする方向へと走り出した。

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