第2280話 この借りは
マッチポイントまできたアルテミス。
あと1点を取れるか?
☆麻美視点☆
アルテミス対クリムフェニックスの試合は最終セットの大詰めまでやっててきたぞー。
序盤で奪った貴重なブレイクのリードを死守しながら、遂に14ー13まで漕ぎつけ、サーブはクリムフェニックスの浜中さん。
このサーブを一本で切れば私達の勝ちだー。
「ここ集中ー!」
「おう!」
アルテミスメンバーもやる気十分ー。
しかし、クリムフェニックスも当然黙ってはいないー。
「ここ絶対ブレイクやで!」
「わかってるわよ!」
「ワハハ!」
あちらも後が無いから必死に拾ってくると思われー。
コート上には、両チーム共にリベロが残っている布陣。
まずは浜中さんのサーブだ。
パァンッ!
「希望姉ー!」
「大丈夫だよぅ!」
パァンッ!
希望姉は難なく浜中さんのサーブを捌く。
ここは安心して見ていられるー。
「よっしゃ! 同時高速連携で攻めますえ!」
「はいー!」
当然ここは連携で決めにいくー。
私もここは眞鍋さんの背後に回り込んで踏み切るー!
高速連携はスパイクを振り抜くタイミングと同時に、ボールがドンピシャで合わされる。
ボールが来ようが来なかろうが、アタッカーは全員腕を振り抜くのだ!
スカッ!
このように、ボールが来ないとただの素振りになるのであるー!
パァンッ!
どうやらトスを受けたのは天堂さんだ。
逆サイドからインパクト音が聞こえてきたー。
パァンッ!
「ナイス千沙!」
「ギリギリ間に合いました!」
「すいません!」
新田さんがダイビングレシーブで拾い、クリムフェニックスはギリギリでボールを繋いでいるー。
天堂さんは決めきれなかった事を謝罪しているが、ここは拾った新田さんを褒めるとしよー。
「ここ死守ー!」
「おー!」
この粘りからクリムフェニックスにブレイクされて14-14になってしまうと、流れも奪われて危険だ。
ここはもう試合を決めてしまわないと負けかねない。
「ミアさんのトスー!」
「カウンターの高速連携かいな!」
「拾うよぅ!」
「なはは! その前にブロックで決めるー!」
ミアさんから漂う匂いを嗅ぎ取り、トス先を読む。
ミアさんは視線でフェイントを入れたりと、駆け引きを仕掛けてきているが私には通用しないー。
いくらフェイントをかけようとも、ミアさん自身が決めた意思が変わる事はない。
美智香姉への速いトスだ!
シュタタ!
読めたらすぐにポジションを移動。
美智香姉の前に陣取り、ブロックのタイミングを窺う。
渚もついてきているー。
だけどここは一人でブロックに跳ぶ方が良いと判断。 渚のユニフォームの裾を引っ張って「跳ぶな」の合図を出す。
渚は反応を示さないが、多分伝わっているはずー。
更にこのやりとりは、後衛で守る希望姉にも見えているはずー。
私が一人でブロックに跳ぶの察した希望姉なら、私の思い通りに動いてくれると思われー!
「今だー! ちょいさー!」
「うわはは!」
私と美智香姉のタイマンだ。
私と美智香姉がジャンプの頂点に到達した瞬間、目の前にミアさんから上げられたトスがやってくる。
美智香姉が腕を振り、すぐにでもスパイクを打ってくるだろう。
この一瞬の間に、私と美智香姉の間で駆け引きが行われる。
フェイントか強打か……ストレートかクロスか……。
そんな読み合いが行われる中、私は既に匂いを察知しているー。
美智香姉が持ち得る、一番厄介な攻撃。
ブロックアウトプレーだ!
私の手に上手い具合の角度でぶつけて、クリムフェニックス側のコート外に飛ばすテクニック。
美智香姉の十八番だ。
「ちょいさー!」
パァンッ!
「なぬぅ?!」
だから私はブロックしにいった両手を大きく横に開け、ボールを躱した。
私の手にぶつけるつもりだったボールは、そのまままっすぐアルテミスコートを突っ切る。
その先に待ち構えるのは……。
「はぅっ!」
パァンッ!
「ナイス希望姉ー!」
私の作戦を見抜いてポジションを取っていた希望姉だ。
完璧なレシーブを上げているー。
「無茶苦茶やりよるな、麻美は!」
渚は笑いながらも、既に次の攻撃動作に移っている。
佐伯先輩も、天堂さんも同時に助走を開始。
私はカバーに入るぞー。
「まさかあんな風に攻略してくるとはー! やるな麻美っちー!」
「なはは!」
アタッカーが皆同時に跳び上がり腕を振る。
同時に眞鍋さんがトスを送り出す。
「エースの意地見せたらんかい!」
渚へ出されるトス。
ブロックは1枚だが後ろには新田さんが控えている。 どうする渚ー?
「ここでメテオストライクやぁ!」
パァンッ!
渚はこの試合の序盤にも見せた、神崎先輩の得意技である「メテオストライク」をもう一度真似た。
「それは想定してへんて!?」
ピッ!
ボールは新田さんの腕の手前、コート上に落球し、アルテミスの最後の得点となった。
「よっしゃあ! どないや!」
「何最後に自分のプレーやめてんのよ。 まあ、意表突いたからヨシ」
「ナイスプレーやったな、渚はん」
「あそこであれを選べるとは、感服しました」
渚の頭をバシバシと叩くコートメンバー。
何はともあれ、クリムフェニックス相手にフルセット戦い、大金星を上げたのであったー!
◆◇◆◇◆◇
「かぁーっ! よもや負けるとは思うてへんかったわ」
「いやいや、結構勝てる気でいたのにね」
試合終了後には月島先輩達クリムフェニックスのメンバーと合流ー。
どうやらこのまま「皆の家」に来るらしいー。
美智香姉は可憐ちゃんと旦那さんが待ってるからこのまま帰るようだー。
「なはは! 試合中に私達が進化してしまった故ー」
「にしても強くなり過ぎやて。 ウチらの想定を遥かに超えとったわ」
「なはは!」
「渚っちもどんどんパワー上がっていってたじゃん。 もう奈々美っちジュニアよ」
「ジュニアなんや……」
さすがにお姉ちゃん程ではないならねー。
あそこまでななるにはゴリラにならないとー。
「まあ、この借りはクリムフェニックスのホーム戦できっちり返したる」
「私達ももっと強くなって乗り込むぞー!」
「そやな」
というわけで、今シーズン一回目のクリムフェニックス戦に勝利した私達。
まだまだ亜美姉の代わりには程遠いよいたな気もするが、ひとまずは安心したー。
「これ、『皆の家』行ったら亜美ちゃんに煽られるんちゃうやろか」
「ありそー」
月島先輩の顔を見るや「ぷぷぷ。 私が居ないアルテミスに負けたねぇ!」とか言いそうー。
「やっぱり行くんやめよかな……」
「ワハハ! アカチャンみたくないんカ?」
「それは見たいで……はあ、しゃーない。 諦めて煽られに行くか」
「お姉ちゃん、喧嘩はせんといてや?」
「場合によりけりや」
な、なはは。 大丈夫かなあ?
接戦わ制したアルテミスだが、クリムフェニックスも黙ってはいない。
「希望です。 私も頑張ったよぅ」
「麻美ちゃんとの守備の連携はさすがだねぇ」




