第2279話 代わり
観戦している亜美達も手に汗を握る展開に。
☆亜美視点☆
アルテミスとクリムフェニックスの試合は、結局最終セットまでもつれ込んでいるよ。
ネット中継で観戦中の私達も、この熱い試合を見てテンションが上がっている。
美夕も今しがた眠りについて、少し静かになったよ。
「まさかこんな接戦になるとはね」
「麻美や渚が試合中にどんどんレベルアップしてますわね」
「まだこんな伸び代があったんだねぇ」
クリムフェニックスの強力なメンバーと対戦する事で、どんどん成長しているようだよ。
「しかし、見てる方も息が詰まるな」
「そだね」
「多分、この先はワンプレーが勝敗を分けますわね」
「そうね。 どっちが流れを掴むプレーを出来るか」
15点マッチの最終セットは一瞬の隙も許されない。
流れを掴んだ方が一気に勝利に近付くのである。
◆◇◆◇◆◇
☆麻美視点☆
スコアは3-2。
最終セットは始まったばかりだけど、最終セットは15点マッチの短期決戦。
油断しているとあっという間に終わってしまう。
サーバーはクリムフェニックスのミアさん。
模倣プレーによって色々なサーブを使い分けてくるので要注意だー。
特に西條先輩のネオドライブ系のサーブは強力なサーブだから気を付けねばならぬー。
しかも、こっちには希望姉が居ないー。
「あれは、ネオドライブ系のサーブですね」
「うむー。 助走距離でわかるー」
西條先輩のネオドライブ系サーブは助走距離が無茶苦茶長いから見た目ですぐわかるー。
たがしかしー、あそこから七色の変化球が飛び出してくるので結局わからないー。
だがしかしだがしかしー!
私にはこの鼻があるー!
「くんくん」
「犬……?」
「む! これは縦回転ー!」
「という事はドライブ回転ですね」
「うむー!」
パァンッ!
ギュルルルル!
「マリエルさんの方ー!」
「ハイ!」
パァンッ!
マリエルさんはミアさんが打ったネオドライブサーブを、臆する事無くレシーブする。
マリエルさんはフランス代表のMBではあるが、実はレシーブもトスも出来る優秀なプレーヤーなのだ。
「おお、ナイス!」
「上手いー!」
「エッヘン!」
ちょっと誇らしげなマリエルさん。
にしても、西條先輩本人のサーブではないとはいえ、あれを普通に拾えるというのはかなりのレシーブ技術だー。
よーし、攻撃だー。
私は後衛なのでバックアタックにいくぞー!
「ちょいさちょいさー」
「さ、騒がしいやっちゃな」
セミで跳ぶ佐伯先輩のテンポと綺麗にズラして助走に入りー。
「跳ぶー! ちょいさー!」
私に合わされたトスを力一杯にスパイクー!
新田さんの居ないクリムフェニックスコートに突き刺さるボール!
ピッ!
「ナイスキー!」
「なはは!」
「止まらんかー……。 麻美っち、MBにしとくのが惜しいぐらいの攻撃のセンスやで」
「いやいや、麻美っちはMBこそが天職っしょ」
「ワハハ。 まちがいないデ」
あちらのコートでは私の話題で盛り上がっているー。
ただ、亜美姉の代わりならばこれくらいは当然。
いや! 亜美姉ならばもっと凄いー!
メラメラ……
「まだまだ亜美姉には届いてないー……」
「清水はんに届こうとしてはるんか……。 あの人に追いつくんは並大抵の事やないでっしゃろ」
「それはそうー! だけど、今日は亜美姉の代わりを任されているからー!」
「私からしたら今でも十分過ぎる活躍よ……」
「ですね」
と、チーム内での私の評価は高めー。
だけど私はまだ満足していないー!
もっともっと亜美姉の代わりにー!
「さて、ほなサーブいくで」
「おー、渚のサーブー! お姉ちゃんみたいな凄いのいけー」
「さすがにあそこまで強烈なサーブは無理やて……」
「それはそうー!」
お姉ちゃんのサーブはMAX110km/hも出る男子並みのサーブ。
いくら渚のパワーが上がっているとはいえ、そこまでのサーブは打てないだろー。
「いくで! おらあっ!」
パァンッ!
「いやいや、十分速いって!」
「だはは! 渚もバケモンやな!」
渚の放ったサーブは姉の月島先輩の方へ飛んで行くー!
その球速は、スピードガン表示で95km/hになっているー!
女子選手なら十分世界トップレベルのスピードだ。
パァンッ!
「うおっ?!」
月島先輩がそのサーブを真っ正面からレシーブしたが、それでもBパスになるレベルのサーブだ!
渚凄いー!
「拾われとるか……藍沢先輩やったらサービスエースやったかもしれんのに」
どうやら渚もまだまだ満足してはいないらしいー。
「ミアさんがトス上げるー!」
「ハイ!」
「誰に上がるの?」
「むーっ! キャミィさんー!」
マリエルさんと佐伯先輩は私の読みを信頼して素早く移動ー。
「はわわ!?」
ミアさんからは、先読み通りにキャミィさんへサーブを上げているー。
「本当に合ってるし!」
「サスガデスネ!」
キャミィさんのスパイクのタイミングに合わせて、二人がブロックに跳ぶ。
更に私は嗅覚を研ぎ澄ませていく。
キャミィさんが打つコースは……。
「クロス!」
そう読んだ私は、急いでキャミィさんのクロスに移動を開始ー!
「くだけちれヤー!」
また物騒な事を言いながらスパイクしてくる。
キャミィさん、ボールに何か恨みでもあるのかー?
パァンッ!
キャミィさんのスパイクは読み通りクロスへー!
亜美姉ならば! 亜美姉ならばこれはしっかり拾うに違いないー!
亜美姉に教わって練習した基本姿勢を取り、腕を伸ばして面で受けるー!
「こうー!」
パァンッ!
「おお! 拾いよった!」
「ワハハ! やるナ!」
何とかレシーブ成功したけど残念ながらCパスー……。
亜美姉ならばAパスだったに違いないー!
「眞鍋さんすいませんー!」
「構わへんよー! レシーブ成功しただけで十分や」
眞鍋さんはそう言ってセットアップに入る。 ただ、セットポジションからかなりズレたので、同時高速連携にはいけないようだー。
「ここ決めたら流れくるわよ!」
「おー!」
今回私は攻撃には出ずにカバーに回るー!
バックアタックには渚が入っているからだー!
「ほな! ここはエースに託すで! 渚はん!」
「はい!」
トスはバックアタックの渚に上がる。
佐伯先輩がブロックを釣ってくれているので、渚も打ちやすい状況だー!
「おおおっ! りゃーっ!」
渚が咆哮を上げながら腕を振る。
まるでお姉ちゃんのようだー!
パァンッ!
ピッ!
「おお!」
「ナイス渚ー!」
「っしゃあ!」
ここで遂にブレイクを取った私達アルテミス。
このワンプレーで流れを掴んだだろう。
この試合、もらったかもしれない!
「やりよるな……そやけど試合は最後までわからんで」
「むぅ」
しかしクリムフェニックスはまだ諦めてはいないようだー。
まだまだ油断禁物かー。
麻美と渚の理想はまだ遠い?
「亜美だよ。 おお、この1点は大きいよ!」
「ですわね」




