第2278話 どんどん強く
最終セット最初の攻防は五分。
☆弥生視点☆
アルテミスとの試合は何だかんだ言うて最終セットまでもつれ込んどる。
その最終セット最初の攻防はお互いがサーブを一本ずつで切るスタートになった。
ここまで来て、チーム間の力の差は完全に無くなってもうたみたいやな。
「強いわね、アルテミス」
「予想以上や」
「アミさん達がいないのニ」
「ワハハ」
「とはいえ、あちらのメンバーも世界大会を戦ったメンバーですから不思議ではないです」
千沙の言う通りや。
ちょっとナメとったけど、あっちのメンバーも世界のトップで戦ってきたメンバーなんや。
強うて当たり前か。
「次は天堂さんのサーブね」
「天堂さんもこの試合中にどんどん強なっとる。 要注意選手や」
パァンッ!
天堂さんのドライブサーブがネット越えてくる。
千沙はここを冷静に拾っていくで。
パァンッ!
「はいっ!」
「こっちも安定の神リベロ!」
「ワハハ!」
「私がトスしまス!」
「頼んだ」
もう麻美っちに撹乱作戦は通用せえへんから、三人が同時にトスを上げに行くとかいう無茶はせんでよくなった。
ミアはMBとして登録されとるけど、役割は実質オールラウンダーや。
今みたいにトスも上げたりしよるで。
その役割を可能にしとるんが、ミアの得意技「模倣」や。
大体のプレーを見ただけで真似る事が出来るらしいで。
そんなミアがトスを上げる時に模倣するプレーヤーは当然、日本が誇る世界一のちびっ子セッター西條奈央や。
大阪の姉妹が生み出して、西條さんが改良した日本の攻撃の切り札「同時高速連携」。
これを真似するんがほんまに強いんや。
「ハイ!」
「止めるー! ちょいさー!」
「止めたるで!」
「ワハハ!」
そんな連携も、今の麻美っちは簡単に追いついてまいよる。
どうなっとるんや、あのブロッカー。
今回はキャミィに合わされたトスやけど、既に麻美っちと渚がブロックに入ってきとる。
普通はこの数、スピードの攻撃に対して的確にブロックを二枚付けてくるんは難しいはずなんやけどな。
「ウオリャー!」
パァンッ!
「くっ!」
キャミィはあえて麻美っちではなく渚のブロックにぶつけるようにスパイクを打ち込んだ。
ブロックの技術と読みの鋭さで勝る麻美っちとは勝負せえへん作戦やな。
あれでよう考えてプレーしとる。
ピッ!
「はぅ。 届かないよぅ」
「すんません!」
「ワハハ! どないヤ!」
「すぐに返したる!」
2-1としたけど、今のプレーでは流れを引き込むには足りひんやろうな。
さて。
「ほなウチがサーバやな」
クリムフェニックスの次のサーバーはウチや。
高速ナックルサーブ辺りでサービスエースを決めたら流れを持ってこれそうなもんやけど、アルテミスのコートにはまだ雪村さんが残っとる。
あのリベロもまた無茶苦茶なスペックしとるさかい、ウチの高速ナックルサーブでもエースを取るんは難しいんや。
「まあそやけど、打たへん理由にもならへんか。 ウチが打てるサーブの中では間違い一番強力やしな」
ピッ!
笛が鳴りよったし、ほないくか。
「決まれば儲けもんや!」
パァンッ!
高速ナックルサーブを打ち込んですぐさま守備の準備に入る。
まあ、まず間違いなく返って来よるやろうからな。
「はぅっと!」
パァンッ!
「いやいや、おかしいやろ……イレギュラー変化を起こすサーブやよそれ……」
雪村さんの「眼」が良いっちゅうのは知っとるけど、そんな凄いんかいな。
「来まス」
今、ウチらのフォーメーションは後衛にウチと千沙がおる布陣。
一応守りの布陣ではあるんやけど。
「渚はん!」
「よっしゃ!」
渚がスパイクを打って来よるみたいや。
この試合でエースとして完全に覚醒した感のある渚に対して、ミアとキャミィがブロックへ。
パァンッ!
「ワオ!?」
「ワハハ!?」
渚のスパイクはまたパワーが上がっとるようやな。
あの二人のブロックが完全に抜かれてもうとる。
さすがにあれを拾うのは無理やで。
ピッ!
「どないや!」
「なはは! 凄いぞ渚ー! まるでお姉ちゃんだー!」
「ゴリラの幻影見えたわよ!」
「ゴリラちゃいます!」
ほんまにどんどんスパイクの威力が上がってきとる。 藍沢さんに比べたらまだまだな気はするけど、確かにそこに近付いとるな。
「あれはもうやばいわね」
「そやな。 藍沢さん級やと思うて止めにいかなあかんで」
2-2でアルテミス側のローテーション。
サーバーが麻美っちになりよるから、ここで雪村さんはコートアウトや。
しばらくあちらはさんは雪村さん無しやで。
流れを掴むんやったらこのタイミングなんやけど。
代わりに後ろに下がった麻美っちもまた、今日はオールラウンダーとして活躍しとる。
試合前に亜美ちゃんの代わりをやる言うてたけど、ほんまにそれが成立しとる。
「イクゾー! ちょいさー!」
パァンッ!
麻美っちのサーブや。
あれはブロックは化け物みたいやけど、サーブに関しては普通のレベル。
拾うん自体はそない難しい事はあらへん。
何かウチの方にサーブ飛んできよったから、ここはウチが処理するで。
「ほいっ!」
パァンッ!
難なくAパスで返す。
さて、アルテミス側は麻美っちが後衛に下がった事で、ブロックの方に多少の隙が出来る。
言うても、雪村さんの代わりに入ってきとるマリエルはフランス代表の正ブロッカーや。
麻美っちがおらんでも油断ならへん。
「浜中さんからトスが上がるぞー!」
「や、やりにくい」
「だはは。 我慢しなはれ」
後衛に下がった麻美っちは、ブロックこそ出来へんものの、その嗅覚とやらでブロックのアシストをする事が出来る。
「美智香姉ー!」
「ハイ!」
「了解!」
「何でわかるの!」
浜中さんのトス先まで完璧に読んでブロックに指示出ししよるで。
「うわはは! 何人来ても無駄ー!」
パァンッ!
「またっ!」
「ジョウズスギマス!」
ピッ!
美智香はブロックが二枚でも三枚でも、お得意のブロックアウトプレーで得点を取りよる。
難易度の高いプレーなんやけど、美智香はほんまにこれが巧い。
自他共に認める世界一のテクニックを持つOHやで。
その一点に関してだけ言うたら、ウチも亜美ちゃんも敵わへん事を認めとる。
「うわはは!」
「中々流れが掴めない……」
「ほんまにな」
最終セット序盤はこのように、お互いが譲らへんシーソーゲームになっとるで。
どっちが先に流れを掴んで抜け出すか。
恐らくはワンプレー。
ワンプレーで勝負が決まるで。
3-2で迎えるはミアのサーブ。
世界の色々なビッグサーバーのプレーヤーを模倣してサービスエースも狙えるで。
どっかで流れを掴むワンプレーを出したいとこや。
麻美と渚がどんどん強くなっているようだ。
「奈央ですわよ。 あの二人は戦闘民族か何かなのかしら?」
「スーパーナントカ人になりそうだねぇ」




