第2277話 最終セットへ
渚、エースとしてついに覚醒?
☆弥生視点☆
パァンッ!
渚のスパイクをブロックしに跳ぶ。
「っ?!」
確かにブロックの手には当たったけど、スパイクの勢いは全く衰えへん!?
これは!
ピッ!
「っしゃ! どないやお姉ちゃん!」
「やるやないか渚。 お姉ちゃん嬉しいで」
正直言うて驚いたで。
まさか渚にあんなパワーがあるとは。
ウチ以上……下手したら藍沢さんに迫る程のパワースパイクやった。
藍沢さんの代わり……なるほど納得や。
「ブロックした手がジンジンしよる」
「うへー。 あんなスパイク、奈々美っちだけにしてほしいんだけど」
「同感でス」
他の皆の目にも、藍沢さんのスパイク並みの威力に映ったみたいや。
渚、ほんま強うなった。
「勝負はこっからや!」
「だぞー!」
「だはは! ええで!」
◆◇◆◇◆◇
3セット目はお互い譲らず、取られたら取り返しを続けとったが、終盤にアルテミスにブレイクを取られてそのまま23-25でセットを落とす。
4セット目は開始早々にウチらクリムフェニックスが流れを掴んでリードしたものの、アルテミスも2セット目のようにやられずに食らいついてきよった。
結構危ないシーンもあったけど、何とか4セット目はキープして試合は最終5セット目に突入したで。
「ふぅ。 まさかここまで試合中に強うなるとはやな」
「本当、底が知れないわねー、アルテミスの面々」
渚と麻美っちもやけど、それに引っ張られて佐伯和香と天堂さんも動きがようなってきとる。
もうウチらとの戦力差も言うほど開いてへんやろな。
「相手は強い方がおもろいて」
「面白いけど疲れるわよ」
「ワハハ」
「でス」
正直言うたら、今日はあっさり勝てる予定で来たんやけど、アルテミスがあまりにも強うて苦戦しとるで。
まあそやかて負けるわけにはいかへん。
「相手には亜美ちゃんも西條さんも、おらへんのや」
「そうね。 ここで負けたらあの面子にどうやって勝つのよって感じ」
「ですね」
「ワハハ」
「勝ちまス」
「ほな、あと1セット踏ん張るで!」
「おー!」
◆◇◆◇◆◇
☆麻美視点☆
「クリムフェニックス強すぎるー」
「やなあ」
「いやいや! 皆さんも凄いですよ! 2セット目の取られ方を見て、この試合はもう厳しいかと思ったぐらいなんですけど」
前田さんはタブレットを操作して興奮している。
「見てくださいこれ! 皆さんと今のクリムフェニックスの戦力分析! 差がほぼ無くなってるんですよ!」
「興奮し過ぎやあらしまへん?」
「試合中にこんなに強くなるチームがありますか?! 興奮しますよそれは!」
「な、なはは」
「ほら! 渚さんなんて、試合中にフォームが改善されてきて、スパイク時に無駄な力が一切無くなってますよ!?」
「そ、そうなんや?」
「麻美さんも反応早くなってるし、何なんですか?!」
「何で逆ギレー?」
とにかく、前田さんはかなり興奮している様子ー。
これじゃあ作戦会議出来ないぞー。
「前田はん。 わかったから作戦会議しましょや」
「そ、そうですね」
「さすが眞鍋さんー」
前田さんは一旦落ち着いたので、作戦会議を始めるぞー。
「作戦といっても、打てる作戦は全部打ってるのですがね」
「じゃあ今まで通りって事?」
「はい。 ですが、先程も言ったように力の差はかなり詰まっています。 流れを掴めば十分に勝機はありますよ」
「なるほどー。 りょーかーい!」
「流れを掴むか。 やったろやないか」
「そうね。 小細工無しの真っ向勝負で、流れを掴んで私達が勝つわよ!」
「ええ感じにまとまりましたなぁ」
「はぅ! 私も頑張るよぅ!」
「はいデス!」
士気も上がり、最終セットのコートへ向かうー。
クリムフェニックスサイドもやる気満々の表情でコートへ入ってきているー。
これは手強いぞー。
「泣いても笑っても最終セットやな」
「なはは! 勝つのは私達アルテミスー!」
「いやいや。 私達クリムフェニックスよ!」
バチバチ……
お互いに火花を散らしながら、5セット目開始の合図を待つ。
ピーッ!
「よーし! 勝つぞー!」
「おー!」
「眞鍋さんナイサー!」
5セット目は眞鍋さんのサーブで始まるー。
ここまでで眞鍋さんのサーブは全て新田さんに拾われている。
恐らく今回もー。
パァンッ!
「はい!」
拾われてるー。
「守るよー!」
「おー!」
まずはMBの仕事だ。
トスを上げるのはミアさんのようだぞー。
という事は同時高速連携かー?
いやー、違うー!
「こりは時間差高速連携ー!?」
西條先輩がワールドカップバレーの前に開発した新しいやつだ。
ミアさんめ、それも真似出来るのかー。
この場面で新しい事をやってくるとはやりおるー。
「しかーし! どんな連携でも同じ事ー!」
ミアさんから漂う匂いを嗅ぎ取れば、誰にトスが出るかは読める。
ここはエース美智香姉かー!
「渚ついてきたまえー!」
「よっしゃ!」
私の嗅覚を信頼してブロックについて来る渚。
ミアさんも、私を出し抜く事は無理だと悟ったのか、構わず美智香姉にトスを出す。
「ドンピシャ!」
「ちょいさー!」
「ふんっ!」
二枚ブロックで美智香姉のスパイクを止めにかかる。
美智香姉の場合、コースが塞がっていてもブロックアウトプレーという逃げ道がある。
如何にしてこれを読むかが重要なのだが、美智香姉のフォームは癖だらけで毎回微妙に違うから読み辛いの何のー。
パァンッ!
「ストレート抜かれたー!」
ピッ!
「うわはは! 甘いぞ麻美っち。 ボール1個分空いてぞ」
「むむむー」
やはり巧いー。
僅かでも隙を見せればそこを確実に突いてくる。
「はぅ。 あんな際どいコースを迷わずに打ってくるなんて」
「よほど自信が無きゃ打てないわよ……化け物め」
「うわはは! 人間だけど!」
大事な一本目をブレイク出来ず、0-1スタートとなった最終5セット目。
この後のクリムフェニックスサーブは確実に一本で切らなければならないー。
最終セットは15点マッチだから、最初に流れを取られたらそのまま取り返せずに終わってしまう恐れがあるー。
「ここ集中どすえ」
「はい!」
「どんなボールでも拾うよぅ」
サーブはクリムフェニックスの浜中さん。
サーブレシーブは希望姉に任せるとして、攻撃に集中するぞー。
パァンッ!
「任せて!」
パァンッ!
希望姉の安定したレシーブが上がり、すぐに眞鍋さんがセットアップ。
サインは出てないから通常の攻撃だ。
私はいつも通り、眞鍋さんの背中側に移動し、クイックの助走に入る。
美智香姉のブロックを一枚釣っているー。
「和香はん!」
ここは佐伯先輩に早いトスが上がる。
私の役目は終わりー。
「はっ!」
パァンッ!
「ワオ……ミチカさんみたいなブロックアウトプレーでス」
「ふぅ……私もこんくらいはやれるわよ」
「だはは! やるやん! こうでないも勝負はつまらんで」
1-1となった最終セット。
この先どうなるのかー!
続くー!
最終セットまでもつれ込んだ試合。 先に抜け出すのは?
「奈々美よ。 凄い試合になってきたわね」
「私達がいなくても強いねぇ!」




