第2248話 渚の考え
こちら東京。
☆弥生視点☆
10月5日の火曜日や。 東京の自宅でのんびり過ごしとるが、来週からはバレーボールのプロリーグが始まる予定や。 ライバルチームの一つである千葉の西條アルテミスは、今年は亜美ちゃん達の世代の大半が出産と育児に専念する為休場。 大幅に戦力ダウンはしとるが、それでもハイレベルな選手が集まっとる強敵や。 今年のエースはウチの実の妹の月島渚や。 あの子もプロチームのエース張れるようになったか。
「楽しみやけど、プロリーグの試合は各チームとの対戦回数が少ないのがなぁ」
「そやナ」
各チームとの対戦はホーム戦とアウェイ戦の二回。 それにファイルシーズンぐらいやで。
「ま、それでも対戦出来るだけありがたいわ」
「やナ」
はよまたアルテミスと試合したいで。
◆◇◆◇◆◇
ピンポンー
「おん? 誰や?」
「ここにくるんはだいたいきまってルやロー」
「それもそやな……」
ウチとキャミィの家に来る人なんて、美智香や千沙、ミアに聖也君ぐらいで、後はお隣さんから回覧板が渡される時くらいや。
「はいよー」
ガチャ……
「あーい!」
「おう、可憐と美智香に千沙やないか」
「可憐が弥生っちのとこに行くって聞かなくて」
「可憐ちゃん、ここが好きみたいですね」
「ぴっぴー、さりー」
「ピッピとサリーに会いに来たみたいやな」
「うわはは」
ピッピはキャミィが飼うとる文鳥、サリーはウチが飼うとる犬や。 どうやら可憐はペット達が好きみたいやで。 美智香曰く、マロン達とも遊びたがるみたいやで。 まあ千葉まで毎回遊びに行くのは大変やから、こっちに遊びに来る頻度が高いんやけど。
「きゃんきゃん!」
「さりー! あとぼー!」
「きゃふ」
サリーと可憐をリビングに連れて行き適当に遊ばせながら、ウチらは雑談タイムに入る。
「そやけど、美智香の家からここまで来るんも面倒やろ」
「まあ、千葉に行く事考えたら全然マシよ」
「そらそやろな」
「さすがにこっちの方が近いですからね」
「千沙もよう来るやんな」
「可憐ちゃんがいるので」
「チサもカレンをデキアイしとるナー」
「可愛いですから」
「家の事はちゃんとやっとるんやろな?」
「もちろんですよ!」
千沙の事やからそこはちゃんとしとるやろうけどやな。
「でも、もうすぐ千葉の方もベビーラッシュが来るわよ? 可愛いのが一杯増えるわ」
「早く見たい……」
「千沙も好きやなぁ」
「小さい子供とか可愛くて良いじゃないですか」
「わからんでもないけどやな。 それやったら自分らの子作ったらええやん」
「千沙っち、もう動き出してるんだってさ」
「お? そうなんか?」
「はい。 生活も落ち着いてきたので」
どうやら千沙っちも妊活とやらを始めたらしいで。 皆頑張りよるなあ。
「弥生っちは早く結婚しなさい」
「だはは! まだまだやて」
「のんびりしとるナ」
「今に始まった事じゃないけどさー」
美智香やキャミィは時々こうやって、ウチらを急かすような事を言いよる。 まあ、ただ以前程うるさくはないけどやな。
「渚っちの方が結婚早かったりして」
「あれにはまだ彼氏おらんで」
「出来たら早そうって話」
「出来るんやろか?」
「可愛いし、本人にその気があるなら出来るんじゃないの?」
「そやろか?」
今井君にフラれて以降はそないな話聞いてへんけどなあ。 あの子、彼氏とか作るつもりあるをやろか?
「何やちょっと気になるな。 訊いてみたろかな」
「渚っちに直接訊くの?」
「ワハハ。 デンワしたレ」
「そやな。 渚、渚……よっ」
いきなり渚に電話をかける。 スマホ触っとったんか知らんけど、すぐに通話に出よった。
「もしもし。 お姉ちゃんどないしたん?」
「渚て彼氏作る気あるん?」
「はあ? 何や藪から棒に?!」
「いやな、今美智香やらが来ててそないな話になってんのや。 渚て今井君にフラれてからはどないなんか気になっとるし」
「何でそんな話になるんよ……。 まあ、今んとこは無いかな……そもそも出逢いがあらへんもん」
「そうなんやなあ。 ほなええ人がおったら付き合うたりする気はあるっちゅう事か?」
「どやろなあ。 そうなってみな何とも言えへんわ」
「なはは! 渚ー! 電話の相手は誰だー!」
おうおう……電話の向こうから麻美っちのデカい声が聞こえてきよるわ。 一緒に住んどるし不思議やないけど。
「お姉ちゃんやがな」
「お姉さんかー。 男じゃなかったかー」
「あんたはわかるやろ……。 で、お姉ちゃん話はそれだけなん? っていうか、何でそないな話になったんよ……」
しゃあないから話の成り行きを渚に聞かせる。 渚は黙って話を聴いてたけど、後ろで麻美っちが「何を話してるー?」とか言うてて騒がしい。
「はあ。 私に彼氏が出来たら結婚まで早そうやて?」
「美智香はそない思うとるみたいやな」
「わからんけど……私もどっちか言うたら奥手なタイプやし」
「自分、奥手言うたか? 勢いで今井君とエッチしといて奥手言うんか?」
「あ、あれは……どないなんやろな?」
本人も自分の事ようわかってへんらしい。 ただ、勢いでとはいえ、そないな事出来るっちゅう事はや、美智香が言うとる事はもあながち的外れでは無さそうやな。
「そないな事より、お姉ちゃんはどないなん? 武下先輩とは進展しとるん?」
「相変わらずや」
「毎週末に食事を一緒に食べるだけよね」
「ワハハ」
「それで十分やろ」
とはいえ、皆が急かすんもわからんでもあらへんわけやない。
「まあウチかてあれよ。 ちょっとぐらいは進展した方がええかなとは思うとるよ」
「おお、そうなのかね弥生っち?」
「そらまあ」
「お姉ちゃんと武下先輩、何やかんや上手くいっとるんやな」
「まあな」
「頑張りやお姉ちゃん」
「ウチはええねん。 渚の方も、何や出逢いあったらええな」
「そればかりは運やて……」
違いあらへんか。 美智香はその点運が良かったんやなあ。
◆◇◆◇◆◇
夕方前には美智香達馬自宅へと帰りよった。 可憐はサリーと帰りたがっとったけど、さすがにそれは出来んわな。
「やっぱ賑やかなんはええな」
「そやナ」
キャミィも二人やとそこまで騒がしくはせえへんし、結構静かになる。 一人暮らしやったらどないなってた事やろな。
「キャミィはどないなんや? 彼氏とか」
「つくるんやったラやっぱりアメリカでやナ」
「そうなんか?」
「そやデ」
「やっぱり実家帰るんか?」
「わからン。 いまのところかんがえてないデ」
キャミィに関してはまだようわからん事も多い。 実家に帰るんかどうかもまだ決めてへんらしいけど、帰らへんのやったら日本に帰化するつもりではあるらしい。 ウチとしてはそやなあ……日本に残っててほしいっていうのが本音やけど、決めるんはキャミィ自身や。 キャミィが決めた事を応援するつもりやで。 まあ、まだ付き合いは続きそうやな。
渚に今後出逢いはあるのか?
「希望です。 渚ちゃんは前に進もうとはしてるんだね」
「うん。 強いねぇ」




