第1183話 リンクの貴公子
2日目の観光を終えた夕也達。 明日の話で盛り上がる。
☆夕也視点☆
長野旅行2日目の夜。 夕方の内に入浴は済ませた為、適当に外食をして戻って来た俺達は、西條家別荘で寛いでいた。
「明日はスケートか」
「今井君はスケート滑れるの?」
と、紗希ちゃんに訊かれ、俺は踏ん反り帰る。
「ふっ。 リンクの貴公子と呼ばれた俺の滑りを見せてやる」
「ダサいなぁ……何やのそれ」
「夕也、ダサいってよ」
「そんなバカな……」
「夕ちゃん、確かにスケートは上手いけど、そんな変な呼ばれ方はしてないよね?」
「つまり自分で勝手に呼んでるだけなわけね」
「尚更ダサいですわ」
何故か皆から集中砲火を喰らうのだった。 そんなにダサいだろうか?
「なはは。 マリアはスケート出来るのー?」
「はい。 実家にいる頃は友人とよくスケート場に行きましたから。 銀盤の妖精と呼ばれていたこともあります」
「今井君と同じようなアレやん……」
「きゃはは! でもマリアだと可愛いじゃん」
「ソヤナー」
「何故だ? リンクの貴公子はダメなのか?」
「何だろぅ? あまりカッコよく無い気がするよぅ」
「ぐぬ」
「あ、あの、私はスケートあまり得意じゃないので明日教えてください」
「あはは! 千沙っちはあんまりスケート行かないもんねー」
「そうなのか? ふふ、俺に任せろ。 立派なアイススケーターにしてやるぜ」
「今井君ってこんなアホなキャラやったっけ?」
「あー、基本的には宏太と同じでバカよ」
と、結構失礼な事を言われている気がするぞ? 多少バカやる事はあるが、宏太レベルという事はないだろ。
「清水先輩はやっぱりスケートもプロ並なんですか?」
「あ、確かに気になる」
と、マリアちゃんの質問の答えに、皆が注目する。 たしか亜美のスケートは……。
「普通だと思うよ。 リンクを周回するぐらいなら余裕ぐらいだよ」
「嘘だぞ」
「嘘なんだ?」
こいつはその気になればフィギュアスケーター顔負けの滑りをするんだ。 昔見た事がある。
「まあ、その辺の事は明日の楽しみって事にしようや。 な?」
「ですネ」
あともう1人、多分凄い滑りするんだろうなという人物がいる。 そう、亜美のライバルの奈央ちゃんだ。 彼女も亜美に負けず劣らずの天才だ。 亜美と同じレベルで滑れる可能性は高い。
「でも17人でリンクとなると、さすがに他の客も相まって狭いんじゃないのかい?」
「遥ちゃんの言う通りだよ」
「ふふふのふー。 私を誰と思っているのかしら? 天下の西條グループ令嬢、西條奈央ですわよ? プライベートリンクぐらい使えるに決まっているじゃない」
「プ、プライベートリンク……」
「まあ、そんくらいはやるやろと思うてたわ。 ウチも西條さんのことようわかってきたで」
「なははは。 月島先輩さすがー」
「わ、私はまだまだ西條先輩のスケールを測りきれていませんでした」
「マリアちゃんは仕方ないよ。 私達でもたまに読み切れないもん」
「すぐに順応は無理よん」
「は、はい」
奈央ちゃんというか、西條グループの力は本当に計り知れないのだ。
◆◇◆◇◆◇
その夜。
「きゃはは、侵入成功ー」
「何でこうもあっさり人の部屋に侵入出来るんだ紗希ちゃん」
「いやいやー。 背後には気を付けなきゃダメよん今井君? たまに聞くっしょ? 夜な夜な歩いて帰る女性の背後を尾行して来て、家に入る瞬間に後ろからーみたいな」
「ストーカーの手口かよ?!」
紗希ちゃんヤバすぎるだろ。 というか何の用事だよ今度は。
「き、今日は何用でございますか?」
「何キャラー?」
「いや……昨日でデザインの相談は終わった筈だろ?」
「そーねー。 服飾デザインの相談は終わったわね。 今日は今井君を夜這いしに来たのよん」
「どうせ冗談って言うんだろ?」
「おりょ。 バレたか」
「いつものパターンだ」
紗希ちゃんは言うほど本気で襲いには来ない。 大体本気の時はもっと静かに侵入してくるからな。
「で、今日は何だ?」
「あー。 明日なんだけどさ、私もスケート教えてちょ」
「ん? 紗希ちゃんはスケート出来ないのか?」
「んー。 ゆっくり滑るぐらいは出来るけど、皆に混ざってスイスイ滑るのは無理なのよね」
「まあいいけど。 てか何でわざわざ部屋に来てまでそんな事を?」
「特に意味は無いかしら。 強いて言うなら夜這いチャンス狙い的な?」
「へいへい。 用事が済んだら部屋に戻りたまえ」
「あぁん。 冷たい今井君も素敵」
はあ。 紗希ちゃんのこの感じには慣れたつもりだが、たまに本気で襲いに来るから困るんだよな。 紗希ちゃんは「んじゃあ明日よろしくね」と手を振り投げキッスまでして去っていく紗希ちゃんであった。
「ふぅむ。 柏原君は大変だなぁ」
というか柏原君と夜の方は上手くいってんのかあれ?
◆◇◆◇◆◇
つうわけで翌日。 朝食を食べ終えた俺達はスケート場へ向かう。 バスで20分程行った所にそれはあった。 西條グループ経営はもはや当たり前。
当然のように顔パスで中に入る事が出来、更に昨日言っていたプライベートリンクの方へ入って行く。
「シューズは自分達で借りてね」
「へーい」
俺も自分のサイズのシューズを借りて来て早速履く。
久しぶりだなあスケート。 まあまずはスケートを教えるとこからか。 新田さんと紗希ちゃん、それに希望か。 それぞれが準備を終えるまで俺はリンクで待機。
「はぅはぅ」
「わわわ」
「きゃはは」
「お、来たな?」
希望と新田さんは氷の上に立つのも危なっかしい感じだな?紗希ちゃんは自分で言ってたように、多少は滑れるらしい。
「よし、じゃあレッスンを始めるぞ」
「はい!」
「よろしくお願いします」
「よろぴくー」
「まずは希望と新田さんに基礎を教えるとこからだな」
「あ、私も基礎からやりたいー」
「OK。 じゃあまずは立ち方からだな。 手すりを掴んだままで良いから、こんな感じに両つま先を開いた状態で立つんだ。 大体踵が90°ぐらいが目安な」
「こ、こぅ?」
「こうでしょうか?」
「90°ね」
皆して同じように直立する。 ふむ、まあこれぐらいは余裕だな。
「んじゃそのまま歩いてみようか。 歩く時は普通に歩くんじゃなくて、ペンギンみたいに足を斜めに出しながら歩くんだ。 こんな風にな」
と、とりあえず見本を見せてみる。 紗希ちゃんは「きゃはは可愛い」と笑う。 まあわからんでもないが。
「斜め……斜め……」
「こうでしょうか」
「よいしょよいしょ」
「おう、そんな感じだ」
さすがに皆アスリートだ。 飲み込みが早いな。 まあまだまだ基礎の基礎だが。
「スケートは足を斜めに出しながらジグザグに進むイメージだ。 ほれ、今目の前を滑って行こうとする亜美の足に注目」
と、言うと、こちらに向かって滑ってくる亜美の方に視線を向けさせる。
亜美のフォームは本当に綺麗だからな。 お手本としてバッチリだ。
「本当に足を斜めに蹴り出してるわね」
「速いよぅ」
「清水先輩カッコイイですね」
颯爽と通り過ぎて行く亜美を見て目を輝かせる3人。 あそこまで上達させるのは無理だが、今日で普通にリンクを回れるくらいにはしてやらんとな。
呼び名をダサいと一蹴された夕也だが、コーチはちゃんとやっている様子。
「遥だ。 スケートは気持ち良いよなぁ。 こうスイスイと進む感じが」
「ですわねー」




