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暴秦狂楚  作者: 南かずしげ
*ナイトメア・ランジェリー・サッカー・ストライク・ガールズ編
21/57

*夏の県大会A(VS.花槇村.3)


 後半、花槇村女子高校のキックオフで試合開始。 (P.m.8:00)


 相手は後方からボールを回していき、ボールを正処の選手たちから奪われないようにしている。

 ここから逃げきりを図るか、さらに得点を入れて引き離すか、なかなか悩みどころでゲームを組み立てていく。


 今は守備を中心にゲームを組み立てる花槇村の選手たち。


 一方の正処の選手たちは、焦ることもなく慌てることもなく、普段通りにゲームを組み立てていく。

 まずは1点……その為に、花槇村の選手たちから、慎重にボールを奪うことである。

 ここで正処の選手たちのマーク・チェックは徹底していて、ボールを持つ花槇村の選手に、激しくプレスしていく。


「あっ!」

「くっ!」

「ボールキープ!」


 花槇村の選手たちが正処の選手たちに、ボールを奪われそうになるも、なんとかギリギリのところでボールを死守している。


「くっ、激しい!」

「前半の時とは、全然違うわよ!」

「もしかして、こいつらも本気で来てるわよ! 気をつけて!」

「つ、強いっ!?」


 花槇村は少し驚いていた。

 これまでの……前半の時の正処の選手とは、まるで別人のように、激しく強く攻めてきたからである。


 だけど、正処の選手たちからしてみれば、最早(もはや)この戦術・戦略が身体に染みついている。 つまり、正処の選手たちはここから攻めに転じてくるのだ。

 ここで花槇村の選手たちが、この正処の選手たちの猛攻を防ぎつつ、得点を取って追加点をあげるのは、まさに至難の業である。


 それこそが『攻撃こそ最大の防御』なのだ。それを体現した時こそ、必ず敵に(スキ)が生まれる。 そこを突けば、必ず勝機はあるはずだ。


 そこで花槇村の選手たちが、正処の選手たちからボールを奪われないようにする。 このボールさえ奪われなければ、得点も奪われることもないはずだ。


「ちっ!」

「あっ!」

「くっ!」


 だがしかし、それこそが(スキ)の生まれる証拠である。


 ここでDMFの妖香が、油断した花槇村のDF④の選手からボールを奪う。 そこからすぐにDMFの茜にパスして、そのボールが奪われそうになると、すぐに妖香にパスして、一気に前線までボールを運んでいく。 遂にようやく正処の選手たちがボールを前線まで押し上げる。


 ここからさらに妖香が、相手のペナルティーエリアの右側にいるMFの楓に、ボールを高速スルーパスする。


   後半17分


 そのボールを楓が受け取ると、そのまますぐ相手のゴール前までボールをセンタリング。


 トン、ポォーン!


 花槇村のゴール前には、相手のDF陣が既にゴール前で守備を固めており、味方は正処のFWの藍と倫の二人もゴール前に来ていて、二人共にシュートを狙っている。


「だあぁっ!」

「くぅっ!?」


 ボールは藍の頭上に落ち、合わせるように鋭く素早いヘディングをする。


 ドゴォッ、ドォーン!


 相手のGKが全く反応・対応も出来ないほどの強烈・高速なヘディングシュートで、ボールはゴール左端に一直線に入ってゴーール!


 ピィーーーッ!


 審判のゴールの笛が鳴った。


 やっぱりここで正処女学園が得点を決めてきて、1点差まで詰め寄る。 正処の選手も花槇村の選手も喜びも悲しみもなく、気持ちを新たに引き締める。


 その彼女たちの目つきは真剣そのもので、最早(もはや)いちいち一喜一憂している場合ではない。


   後半19分


  正処1-2花槇村





 後半、花槇村女子高校のキックオフで試合再開。 (P.m.8:20)


 ここでまたボールを後方で回していくと思いきや、すぐにボールを前方に運んでいく。

 だけど、すぐに正処の選手たちもボールを奪うべく、ボールを持った花槇村の選手たちにプレッシャーをかけてくる。


 どうやら花槇村の選手たちは、もう1点入れて、一気に突き放し息の根を止めるつもりなのだろう。 やっぱりここでも『攻撃こそ最大の防御』である。


 そこで中盤から正処陣内でのボールの争奪戦が始まった。

 両チームの選手たちがボールを激しく奪い合い、ここでも実力が拮抗していて、膠着状態が続いている。


 そこからしばらくの間、だいぶ時間が経過していき、得点も選手も動けていない。


 花槇村側にしてみれば、さらに得点を入れて突き放したいところだけど、このまま得点が動かないのであれば、そのまま終わらせることもできる。


 だがしかし、そこに必ず(スキ)が生まれる。


 やっぱり、その(スキ)を見逃さないのが、今のDMFの妖香なのである。 今度は同じくDMFの茜と二人して、現在(いま)ボールを持ってる花槇村のDF③の選手から強引にボールを奪いにきた。


「うわぁっ!」

「でぇい!」

「よし!」


 ザザァーーッ!

 ガァッ!


 妖香のボールだけを狙った(たく)みなスライディングで、相手の選手から見事にボールを奪取して、ボールを拾った茜が、そのまま中盤までボールをポーンと蹴り上げた。


 トン、ポォーン!


 中盤から相手陣内までいたMFの瑠華が、そのままボールを受け取り、すぐに相手のペナルティーエリアの左側まで走ってきた藍に高速スルーパスした。


   後半44分


 丁度良いタイミングでボールを受け取った藍が体勢を崩しながらも、すぐにボールを相手のゴール前までセンタリング。


「行けぇっ、倫っ!」

「はい、行きます!」


 バシッ、ドゴォッ、ドォーン!


 ゴール前まで詰めていた倫が、オフサイドトラップに引っ掛からないように、(たく)みに飛び出し、戻りの遅い相手のDF陣や前に出過ぎた相手のGKを尻目に、頭上に落ちてきたボールに合わせるように、豪快にヘディングシュート!


「っ!!?」


 既に後半45分が経過していたけど、ボールは誰もいないゴール真正面に勢いよく入ってゴーール!


 ピィーーーッ!


 審判のゴールの笛が鳴った。


 後半最後ギリギリでの同点弾が見事に決まっての後半終了である。


「やったぁーーっ!」

「ひゃっほぉーーっ!」

「みんな、前に出過ぎだよ!」

「これでなんとか追いついたみたいですね。」


 大喜びではしゃぐ正処の選手たち。


「………」


 一方の無口の花槇村の選手たちは、唖然と落胆が入り交じっている。


 後半の終盤、一気に勝負をかけた花槇村の選手たちは攻めに転じていた。 その為に、ほとんどの選手が前のめりで闘っており、ダブルボランチの見事な活躍と予めオフサイドトラップに引っ掛からない見事な戦術で、正処女学園は首の皮一枚繋がった状態で、後半を終えた。

 一方の残念な花槇村女子高校は、攻めきれず守りきれず、同点弾を許してしまい、著しく体調・士気が低下している。



   後半45分


  正処2-2花槇村



 そして、いよいよ波乱の延長戦が今始まる。


やっぱりここで同点に追いついた正処女学園の選手たち。

最早これはお決まりである。

でも本当の闘いはこれからである。

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