13.成長
「ピューイ!」
進化しても私との関係が変わらないことが嬉しいのか、マシロが高く澄んだ鳴き声をあげる。大きな綺麗な羽を伸ばすと、私の視界は真っ白になった。
『それにしても…大きくなったね』
身長だけならば私の三倍くらいだろうか、かなり成長したマシロを見上げる。
ベビーフェザーの頃と同じ、頭のてっぺんにあるくるんと丸まった羽。サイズこそ違えど、以前とさほど変わりない姿。表情が少しだけ大人びているような気はするけど…これでもう大人なのかな。
進化したマシロを、こっそりと鑑定する。
【名前】マシロ
【種族】ミニフェザー
【ランク】E+
【レベル】1/15
【HP】18/18
【MP】14/14
【攻撃力】12
【防御力】9
【魔力】11
【素早さ】15
【器用さ】8
【固有スキル】なし
【通常スキル】飛行Lv3、体当たりLv2、つつくLv2、氷魔法Lv2
【耐性】落下耐性Lv1
【称号】なし
…ミニ?
私はもう一度マシロを見上げる。身長だけなら私の三倍、身体全体で見ても五倍以上はある。
「ピュイ?」
うんうん、その首を傾げる姿もかわいいんだけどね?
………ミニ?
私は魔物というものを、よくわかっていなかったらしい。そもそも、ただの小動物と比べるのが間違っていたのだった。
魔物と動物ではやはり違うんだと実感する。魔物は動物と違って、進化することで大きく成長出来る。しかし動物はそうはいかない。一長一短で飛べるようになる訳でもないし、狩りが出来るようになる訳でもないのだ。
進化してスキルのLvが上がったおかげか、マシロの飛行能力はかなり上昇していた。高い位置からしか飛べなかったのが、今では勢いをつければ地面からでも飛べるようになっている。
双子の木の周りを元気に飛び回るマシロ。いいな、今度私も乗せてもらおう。
そういえば、結局マシロがまだ子どもなのか調べてなかったな。えっと、ミニフェザーは…
【ミニフェザー】フェザー種の幼少期の魔物。様々な属性の祝福を受け、進化する際にはその属性の色の羽を持つようになる。
まぁ、ミニって種族につくくらいだからまだ子どもだよね。となると、次進化すると大人になるのかな。
進化してランクが上がったからレベルの最大値も増えてるし、次の進化はもう少し先になりそうだ。戦う相手も、プチスライムだけでは経験値不足かもしれない。何か他の魔物も探さなくては。
『ふわぁぁぁー…』
大きな欠伸とともに、私は自分の短い手足を大きく伸ばす。
しまった、ちょっと日向に居すぎたかな。ぽかぽかな陽気に当てられて、すごく眠たい。
さすがに外で寝る訳にもいかないし、巣穴に戻ろう…って、あ。
巣穴に戻ろうとして、私は重大なことに気付く。厳密に言うと、私のことではなくマシロのことに。
『通れない、よね…?』
マシロの身長はおおよそ私の三倍。巣穴の入り口は、ハムスターの私なら余裕で通れるくらいだ。いくらなんでも、今のマシロには狭すぎる。
空を飛ぶマシロを見上げる。恐らく、本人はこの事実にまだ気付いていない。巣穴に入れないとわかったら、また今朝のように落ち込むマシロが安易に想像できた。
…マシロが気付く前に、なんとか入り口だけでも広げよう。
私は寝ぼけ眼をこすりながら、入り口を広げる作業に取り掛かった。
…私、毎日リフォームしてる気がする。