11.レベルアップ
『お疲れさま、マシロ』
マシロにMP回復効果のあるピコの実を渡し、近く小川の小石に座る。マシロはピコの実をついばみながら、小川に流れる綺麗な水を飲んでいた。
私たちは(マシロが)ひとしきりプチスライムを倒したあと、小川で休むことにした。氷魔法を連発していたマシロのMPも心配だったし、あれだけのプチスライムを倒したらさすがにマシロのレベルも最大まで上がっていると思う。ステータスも上がっているだろうし、ゆっくり出来るところで確認したかった。
当のマシロは小川に映る自分の姿を見て首を傾げているが、鑑定するのには問題ないのでこっそりと鑑定をする。
【名前】マシロ
【種族】ベビーフェザー
【ランク】E-
【レベル】5/5
【HP】22/22
【MP】9/13
【攻撃力】14
【防御力】9
【魔力】12
【素早さ】16
【器用さ】10
【固有スキル】なし
【通常スキル】飛行Lv1、体当たりLv1、つつくLv1、氷魔法Lv2
【耐性】落下耐性Lv1
【称号】なし
思っていた通り、レベルは最大まで上がっていた。ステータスも上がり方に偏りがあるものの、上昇している。氷魔法もLv2になっているし、マシロに怪我もなかったしいいことずくめだ。
『強くなったね!』
なんだか自分のことではないのに嬉しくなり、マシロをぎゅっと抱きしめる。私は腕が短いから、抱きつく形になっちゃったけど。
「ピュイピュイ!」
マシロは嬉しかったのか、私の頬袋に頭を擦り寄せていた。かわいくて強くて優しい…マシロさん、最強。
『ほんとかわいいなぁもう』
親バカって言われてもいい、かわいいものはかわいい。マシロはスキンシップが好きみたいだし、私もマシロに癒されているからウィンウィンってやつだ。
しばらくそうしていて、ふと気付く。マシロはいつ進化するんだろう。レベルは最大まで上がってると思うんだけど…もしかして、進化するのって他にも条件とかがあるのかな?
【進化】レベルが最大まで上がった魔物が進化することが出来る。いつどこで進化するかは自身で決めることができ、進化後はステータスが一時的に下がることから巣や群れの中で行うことが多い。また、進化先がいくつかある場合は選択することが出来る。
なるほどね、進化した直後はレベルが1に戻ってしまう。進化するなら、安全な場所でってことか。私は戦えないし、マシロはそのことを考えてくれたのかな。
『もう少し休んだら、帰ろっか』
川辺で遊んでいるマシロに声をかけ、おやつ代わりに木の実を食べることにした。まだまだ食べ盛りであろうマシロは、ぱくぱくとすごい勢いで食べていた。
結局小川で食事にしてしまった私たちが巣穴に帰ってくる頃には、辺りはすっかりと暗くなってしまっていた。最近早寝早起きが身に付いてしまっていた私も眠いし、朝からたくさん動いてくれたマシロはもっと眠たそうだ。
『今日は朝から、たくさんありがとうね』
朝から巣穴の整地をし、昼からはたくさんのプチスライムを倒してくれたマシロ。私は元々たくさん歩く四足歩行の種族のハムスターだけど、マシロは鳥の魔物だ。歩くのよりも飛ぶことの方が多いだろうし、歩く時もぴょんぴょん跳ねて着いてくることの方が多かったので、随分疲れたと思う。
労いの意味も兼ねて頭を撫でると、マシロはいつものように「ピュルルル」と鳴いてリラックスしていた。ところで…
『進化、しないの…?』
マシロが一向に進化をする素振りを見せない。干し草の上に座り込み、毛繕いをしているマシロ。土や埃などを払い落とし、それが終わると羽を大きく広げて伸びていた。
いったいどうしたのだろうか。進化先がいくつかあって、悩んでるとか?
「ピュイ?」
マシロと私は言葉が通じない。マシロがどうして進化しないのか、はたまた進化出来ないのかはわからないけど、怪我もなく元気そうなのは確かだ。
明日になったら、進化するかな。今日はもう疲れたのかもしれないし。
私がベッドに上がると、マシロもベッドに上がってきたので今日も一緒に寝ることにした。
この二日間、マシロの嬉しい表情ばかり見てきたので、私はマシロの少し寂しそうな表情には気付かなかった。