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缶詰めの夏  作者:
5/16

壱:幼なじみの夏

 


 また、夏になりました。


 今年は去年より暑くなっている気がします、暑いのは嫌いです。

 夏は嫌いなんです。

 夏は何もかも嫌いです。

 九月ですけど嫌いなんです。

 まだ生き残っている蝉も暑さも嫌いなんです。


 死ねばいいのに。

 殺してあげましょうか。


 みんな。

 生きているみんな。


 寂しい、また会いたい、殺し続ければ、また、君に会えるのだろうか。


 __そうそう。


 今日は両親が、どこかに連れってくれるらしいです。

 詳しくはわかりません。

 今日は私の誕生日でもありません。

 私を連れてくれる時は何かを祝うですけど何も祝うものはありません。

 

 何でしょうね。

 わかりません。

 私にはわかりません。

 

 とりあえず、出かける準備をします。

 何故か今日はオシャレをしなければならないらしいです、フリルがたくさんついた服を着せられました。

 動きにくいです。

 お母様は似合っているわといつもどうり早口でいいました。

 あんまり、嬉しくありません。

 

 無言の車に揺られ、一時間くらい。

 大きなビルにつきました。

 ここ、らしいです。

 何のようでしょうか。

 

 入るとカウンターのお姉さんがニヤニヤしながら、こんにちはと言いました。

 

 はい、こんにちは。

 私は素直に返事すると、お姉さんはまぁまぁと気味が悪い返事を返しました。


 何でしょうか。

 違和感、でしょうか。

 薄気味悪いです。


 お父様は何も表情を変えず、お母様と同じで通行書をくれと低い声でいいました。

 今日は、なんだか二人とも笑いをこらえています。


 お姉さんはわかりました、と敬語を使い、私に通行書をくれた。

 ゴシック体の文字で通行書と書かれており、首からかけるタイプのやつです。

 お母様とお父様も首にもうかけています。

 お父様は歩きだした、お母様も歩きだした。

 私はそれについていく。

 お姉さんは後ろで笑っていた気がしました。


 エレベーターに乗りました。

 お父様は地下五階のボタンを押しました。


 あははははははっ!。


 お母様はいきなり笑い始めました、エレベーターの中で笑い出しました。

 お父様も笑い始めました。

 何がおかしいでしょうか。

 何で笑っているんでしょうか。

 私にはわかりません。


 地下につくと、ドアが開きました。

 私は最後に出ました。

 二人ともまた笑いをこらえました。

 私は、地下五階を見て、嫌な予感がします。


 いや、しなきゃおかしいのです。


 エレベーターを出た後の景色は、牢屋でした。

 一つの部屋に何本のも鉄の棒が並べており、それが邪魔で外に出られない、犯罪者たちが住む場所と聞いています。

 地下五階はその牢獄が、一本道真っ直ぐの約五十メートルに及びました。

 お父様はかつかつと靴の音をあげて、歩き出しました。

 お母様はかっかっとヒールの音をあげて、歩き出しました。

 まるで子供がスキップをしているようでした。

 私は、したがなく、ついていきました。


 ふいに、牢屋の中を見てしまいました。

 好奇心、でしょうか。

 犯罪者という部類に入る人間をこの目で見てみたかったのです。

 どんな目をしているか、気になってしまいました。

 つい、気になってしまったのです。



 犯罪者は、子供でした。

 


 目を濁らしている、子供でした。

 醜い子供でした。

 しゃがんで下を向いていました、暗い、怖い子供でした。

 子供、というものはもっと明るいものではないんでしょうか。

 いや、私には子供という概念というものはわかりません。

 けど気味が悪い、見ていて、イラつきます。

 

 殺してやりたい。


 先ほどのお姉さんは、あんまり殺したくなかったですけどこの子供を殺してやりたいのです。

 鏡を見ている気分です。

 殺気がわきます。


 子供はこちらを視線に気づき、私を見ました。

 私を、無機物のようなものような目で見ました。

 私を、人間として、認めないような目で見てきました。

 子供は、私に君は何者かと、聞いているみたいでした。


 私は。

 私は、彼の幼なじみ。

 君の他人。

 それが君の存在理由かい?。

 そうです。

 私は彼の幼なじみ。

 君の他人。

 あっそ。


 目を合わせただけで子供は何も喋りませんでした。

 幽霊みたいな、子供でした。

 死んでいるような、子供でした。

 私みたいな、子供でした。

 私は逃げました。

 この動きづらい服で、この場から今すぐに逃げたかったのです。

 私は、両親の所に向かいました。

 牢屋にいた子供たちは、私を怪物のような目で見ました。

 全員、私と、同じような目で見てくるのです。

 同類ではないかと。

 違います。

 私はあなたたちとは違います。

 私は、幼なじみの為に、人を殺したいのです。

 決して、あなたたちとは違うのです。

 私は生きている。

 そう、信じたいのです。


 両親は、まだ笑いをこらえてました。

 一番奥につきました、大きな、重そうなドアがありました。

 お父様は近くのマシンに何かしてました、そしたらドアが開きました。

 また、戻る時に醜い子供を見なければいけないでしょうか。

 それはそれは嫌でしたがありませんでした、その時の私の浅はかな考えでした。

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