1本目
いつの世にも、裏の世界で動く者はいる。
個人的に行う者、雇い主からの依頼をこなし報酬を貰う者、組織に属し任務をこなす者。目的が違えば手段も違い、対象となるものも善悪の捉え方も変わってくる。それは異形が蔓延るこの世界においても例外では無い。
「おい伊月!てめぇ遅刻してんじゃねぇぞ!これで何回目だ!?」
本郷 馨。彼もまた、とある組織に属する者。普段は単独での任務を与えられ、その全てを難なくこなし、周囲からの評価も高い。ただし、かなり口が悪い。
そんな彼と新しくペアを組むことになったのが、
「遅刻って…時間通り来てるじゃないっすか。なんの問題があるんすか。」
そう答えるのは伊月 和真。本郷薫と同じく、とある組織に属する者であり、彼の部下であり、ペアを組んで任務にあたることになった新人だ。
そんな二人のいる組織、名を「黒影」。発生場所、原因、正体までも不明な異形『ヒトナシ』の驚異から世界を守る組織だ。
なぜそんな黒影が「裏の世界」と言われているのか。それは「殺し」をするからだ。異形『ヒトナシ』は人間の姿に酷似している。人を守るためとはいえ、人間に似た生物を殺していく様子を嫌悪する者も少なくないこともまた事実。故に、黒影は闇に潜み、なるべく人の目につかないよう活動している。
「何度も同じことを言わせんじゃねぇよ!不測の事態に備え、早めに現場に到着するのが基本だろうが!」
「うるさい上司だな…。そんなに大声出しても奴らは減らないっすよ。」
「誰のせいだボケェ!」
二人が集合したのは人が住めなくなり放置された廃墟。
こういった場所にはヒトナシが何故か集まってくる傾向にある。そこから突如、人の住む街へと侵略を始める。
それを未然に防ぐために、居場所を調査、対処していく必要があるのだ。
「俺が右から、お前は左から行け。¹∕₃も倒せれば褒めてやるよ。」
「…それ、誰に言ってるんすか。」
そういうと伊月の目付きが鋭くなる。次の瞬間、ものすごい速さで左方向へ走り出す。
異形が現れた世界。それと同時に、一部の人間にも異能の力を発現するものがいた。もちろん、本郷と伊月もその一人。
元々一人で任務をしていた本郷は組織の中でも一二を争う実力者。そして、伊月は新人の枠に留まらず、組織全体を見てもトップクラスの実力を有している。
「アレでもうちょっと態度が良ければなぁ。」
本郷はそう呟きタバコに火をつけた。
「さ、こっちも片付けるか。自信過剰なガキに、どっちが上か分からせてやらねぇとな。」
ニヤリと笑い、伊月とは逆方向へ…自分の役割を果たすべく向かうのだった。




