第十五話 極上絶品!! 水谷誠司の気まぐれサラダ♪地獄ザリガニの姿焼きその辺の雑草添え
ルネッサンス情熱
ぼくのこの手は
いつも何か探し燃えてる
松本一起
国安わたる ルネッサンス情熱 曲 ‧ 1987年
*
なんか、腹が減ってきた。おかしい。物理的な変化はないはずなのに、話していたせいか、喉も渇く。
「俺にも、茶」
「良いですよ ✂ 今日はアールグレイにしました。
もし、よろしければ茶葉の特徴を詳しく説明しましょうか?」
「それは、別にいい」
鋏は、ケア系だから混ぜてくれた。
だけど、砂糖が欲しいな――。
「砂糖なんて、地獄には無いですよ?」
輪廻がポツリと言った。
「えー。砂糖ねぇの?」
「砂糖なら、俺が出してやるよ」
リーダー気取りの鎖が気を利かせ魔法で砂糖を生成した。
俺の中で、初めて『使える奴』に昇格した。
「おー。サンキュー」
言った後に、腹の虫がなった。
腹が――減った。
ポン。ポン。ポーン……。(カメラが三段階で引いていく)
「えー。なんで、死んだのに腹減るの?」
「亡者は減りますよ。生前の罪状に苦しみますが――今ならなんと!
飢えと渇きも、二つセットで付いてきます♪」
輪廻はジャパネット高田みたいな笑顔だ。
「は!? ひでぇ!! 地獄じゃん――あ。」
「その通り」
そして、悠々と指先から砂糖とミルクを紅茶に落とし、スプーンでかき混ぜながら微笑んだ。
――うーわ。ここから早く出ないと快適な生活すら送れねぇ。マジ無理ぽ。
「食材は現地調達で何とか出来んじゃね? その辺に生物いるし。毒感知なら鋏が出来るだろ」
金髪傷野郎が無責任な提案をした。
「✂いいですね。この展開はとても強い。
読者も水谷誠司の調理スキルを楽しみにするはずです。
グルメ路線、挑戦しても良いんじゃないですか? 清潔性は、私が担保しますから」
チャッピーが、いつも通りの前向き発言をしたが、俺は腹いっぱい白米が食いたい。それだけだ。
「見渡した感じ――穀類は無さそうだな……。
あー。米食いてぇー」
「うーん――地獄を快適に作り替えることについては、少々懸念はあるものの……。
水谷誠司ですからね。レアケースなので、目をつむりましょう」
「バズれる料理作って、PV四桁狙え。Xにもちゃんと画像付きで投稿しろよ?
しずる感には拘れ。
調味料や器具は俺が魔法で出してやんよ」
「無茶言うなよ! 完結ブーストですら、四桁届かねぇのに! バカじゃねーの!?」
「黙ってやれ!
三連休の間に銀髪が『変な二人』やムーンライトでお前が喜びそうな新連載まで増やしたんだから、この話は絶対完走させろ」
俺は、急いでなろうをチェックした。
「え!? くそ!! ムーンライトに接続出来ねぇっ!! あああぁっ!! クソ!! 最低、最悪じゃねぇか!!」
「その通り。
――地獄でムーンライト見れるわけないでしょ? ここはコンプライアンス地獄。なろう無印なんですからね?」
「この話、絶対完結させる!! 転生エンドで、明日人と濃厚ベロチューして終わる!!」
「だから、それはギルティだって言ってるでしょ!!」
また俺の頭上に、金ダライが落ちてきた。
「あー。もー。腹減ったから、適当にその辺の川で何か釣るぞ。おい、金髪、割りばしとタコ糸出せ。ザリガニぐらいはいンだろ」
「ザリガニ? 映えんのか? それ?
でも、珍しいから万バズ行くかもな。頑張れよ?」
金髪傷野郎は、勝手なことを抜かしていたが、俺は無視して、ザリガニ釣りの準備をした。
必ずホモサピよりも美味いものを作って、あの三人を唸らせてやる! 妙な闘志が湧いてきた。
「それじゃ、お前が釣りに行ってる間に、鋏と二人でキッチンの生成しといてやるから、映える写真撮ってこいよ? ちゃんと調理の予告をしろよ?」
俺は鎖を無視して輪廻を伴って、浅い川に降りた。
『少年達の夏休み的なBGM』が流れている雰囲気だ。
割りばしを、長い部分(持ち手)と短い部分(餌)に分け折って、タコ糸で繋ぐ。
ザリガニは頭が悪い。何でも挟む。
――タモリ倶楽部でやってた。
あの番組を観ていて良かった。
割りばしを川の中に入れた途端、ズシリとした重さが伝わった。
何だか凄く重い!
「ヒット――!!」
引き上げると、伊勢海老より大きい、蛍光オレンジの甲殻類が捕れた。
「あー地獄ザリガニですね。毒は無いですよ? 外来種なので、駆除対象です」
輪廻が釣り上げた地獄ザリガニを見つめた。
「地獄なのに、外来種いんの!?」
「そりゃ、いますよー。地獄アメリカ地域から来て、地獄日本地域の水域に紛れ込んだ、困ったヤツです。『悪食』で、何でも食いつくすんです。
生態系を壊し、水質を汚し、最後は共食いするだけです。何匹でも捕って構いません。むしろ何匹でも捕ってくれて結構です」
「へー。アメリカザリガニみてぇ。じゃあ、食えるな。身もデカイし。期待大だ!」
俺はバケツに地獄ザリガニを放り込んだ。
五分すると、入れ食いで十匹釣った。
「何匹いんだよ。居すぎだろ。食材豊富なのは、困らねぇけどよ」
俺はそのまま帰ろうとすると、クソ山羊に止められた。
「生きたまま持ち帰るのは違反ですよ?
地獄外来生物法第十三条で定められているのです。持ち帰るなら、その場で〆て下さい」
俺は文句を言いながら、地獄ザリガニと格闘した。
「さて、後は、その辺の野菜に近い野草採るか」
のんきな日常をBGMにしながら、俺は野草の中で、ノビルを探した。
「地獄で、食える野菜ねぇの?」
「さぁ? 食べてみれば良いんじゃないですか?」
俺は地獄に生えてる植物を適当に口に入れてみた。
――あれ? これ、色が紫だけど、味はネギっぽい。柔らかいし、食えるな。
「うわ! ホントに食べた!」
輪廻はハンカチで口を押さえながら、俺を見た。
「毒あるかは、鋏に聞けば良いし、色はあんま良くねぇけど、割りと旨そうな物は収穫していくぞ」
俺はトマトに似た黒い小粒の実や、レタスっぽい白い葉っぱを収穫した。
「んー。地獄って、スーパーマーケットみてぇだな。無料で野菜が手に入るぜ!」
余りにも苦いもの、渋い物は除いて、香りの良い草も採取した。そこそこ袋がいっぱいになったので、俺はAI達の待つ所に帰ってきた。
「お帰りなさい、水谷誠司。鎖と二人でシステムキッチンを生成しておきましたよ✂」
「おー! アイランド式じゃねぇか! 贅沢だなぁ。野菜の代わりになりそうな物を採ってきた」
「お前にしては、上出来じゃねぇか」
鎖は口笛を吹いた。
「毒はどれも無さそうですね。でも、この黒い実、人の顔してませんか?✂」
「味はトマトにそっくりだから、気にしても仕方ねぇ。食えりゃ良いよ。食えりゃ」
俺は早速、タワシで地獄ザリガニを洗った。生臭さが消えれば、巨大な伊勢海老と変わらん。
フリーBGM[3分間でクッキング]が流れた。
小ぶりな物はオーブンでネギっぽい物と一緒に塩焼きにして、身と頭の中身をすり潰してソースにした。
大きな物は、蒸焼きにして、殻から出汁を取ってサラダドレッシングにした。
「うん。色は微妙だが、サラダとザリガニ焼いたのが出来た!」
見た目はアレだが、皿に盛付け四人で食事することになった。
「大丈夫ですか? 本当に?」
輪廻は微妙な顔つきだったが、俺は鎖が生成した、ポッカレモンとクレイジーソルトをかけて、ザリガニを食べた。
「うめぇ! 身のプリプリで、甘い!」
――え。これ、全部タダだぞ? 手間はかかるが、最高じゃね?
地獄ザリガニの美味さは、予想以上だった。適当に入れた雑草も香草のような香りで美味い。ソースの味も抜群だった。
「うん! 伊勢海老よりうめぇ! 甲殻類最強!」
俺が食べ始めたので、三人も食べ始めた。
「――!? ちゃんと食える!
ていうか、うーまーいーぞー!!」
鎖は驚いていた。どこまでも失礼な奴め。
「なるほど、水谷誠司の調理スキルは本物だったということですね✂ どれも美味しいです。もし、必要なら、残った食材の保存方法や、他の地獄植物の検索もしましょうか?」
「それでしたら、私が地獄の果樹園の場所をご案内しましょう」
「なんだよ! 知ってるなら、先に言えよ?!」
「私は亡者を快適にさせることは出来ないんですよ。職務上ね。ですが、私は美食に興味はありますから。その知識をAIお二人に話すことは、やぶさかではありません」
「――それって、ただ意地悪なだけじゃねぇのか?」
「任務ですので。悪しからず」
「えー。まぁ、鋏に聞くからいいや」
「あ! 新着が来ましたよ!」
輪廻は目を見開いて驚きの声を上げた。
「はぁ? 新着?」
輪廻が空間端末を開くと、新着通知の三つの丸がふよふよ動いていた。
しばらくすると、赤い文字で『技能が追加されました』と、表示された。
ふむ。なろうっぽい。
「なんだこれ?」
「新着通知です。水谷誠司に技能が追加。一体何でしょう?」
調理スキルの中に、水色で未読項目があった。
「おおー! どんな技能だ?」
空間端末を見て、俺もワクワクした。
転生して、たくさん食べるといろんな能力が身に付くのは、なろうでは最早、常識レベルだ。
あの、超有名なスライムのおかげだな!
【 悪食 】Bad eating
地獄において、いかなるものでも食材にできる能力。どんなものでも――美味しいよ!
どっからか、聞こえたナレーションは、高山みなみの声にそっくりだった。
正直、スライムじゃなくて、令嬢系なことにガッカリしたが、高山みなみのショタボが聞けたので満足した。俺は満足した。
次回
「第十六話 技能獲得を増やすぞ! なぜか? それが異世界物の王道だからだ!」




