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フレイア  作者: 待宵月
13/13

12.お兄ちゃん。

 アブラビ・ダハディーが宿にしている建物の中には大浴場が在り、フレイア達も使う事が許された。

というよりも、隊商に雇われた者は皆、身を清潔にするようアブラビから命じられていたのだ。大所帯で旅をする為、病気などの感染症を防ぐためなのだという。


流石(さすが)、大商人ともなれば、考えていることが違うな~」

「確かに、戦で亡くなる者は敵の剣で殺されるよりも、場合によっては流行り病などで亡くなる者の方が多い事もありますからね」

「オレもその大浴場っていう風呂に行ってもいいのか?!」


 アミールの興奮した声に、シアとギルは振り返った。


「もちろんだ。嫌だと言っても強引に連れて行くがな」


 ギルがニヤリと笑顔で応じれば、アミールは飛び跳ねて喜んだ。


「オレ! 風呂なんて入ったことがないんだ! ずっと川で水浴びしてただけだし、この町に来てからは、体を濡れた布で拭くしかできなかったから、すげぇ嬉しい! でも、その大浴場って、フレイア様もオレ達と一緒に入れるのか?」


 アミールの何気ない問いかけに、シアの顔が一瞬にして蒼ざめた。


「! 私としたことが……。侍女がいないことを失念しておりました。フレイア様を男風呂になど連れて行けるわけがありません!」


 頭を抱えるシアを横目に、ギルは何でもない事のように呟く。


「シアがフレイア様と一緒に女風呂に行けばいいんじゃないのか? 胸元と股間隠しときゃバレないって!」

「……その舌、切り落としますよ」

「ごめん! 冗談! 冗談だから! マジな目で見るの止めて! あっ! 剣を抜かないで!」


 ギルは椅子を蹴倒(けたお)して、シアから距離を取った。しばしギルを冷ややかに睨みつけていたシアだったが、静かに掴んでいた剣を腰に差す。


「あなたとふざけている暇はありません。ハサンに相談してきます」


 シアはフレイアを抱き上げると、部屋から出て行っていまった。パタンと閉じた扉を見つめ、ギルはやれやれと寝台の上に転がった。

 

「どうして、いつもシアが怒るような事ばかり言うんだよ?」


 アミールは寝台に近寄り、寝転がるギルを呆れた表情を浮かべて問いかける。


「それはな、あいつが俺を頼ってこないからだ」

「何で、そんなに頼られたいんだ?」

「だって、俺、あいつのお兄ちゃんだから♡」

「え? お兄ちゃん? 全然似てないんだけど?」

「そりゃそうだ。俺達血が繋がってないもん」


 口調はふざけて可愛く言ってはいるが、その実、ギルの表情はどこか愁いが感じられた。アミールは考える。


「もしかして、シアの気持ちを切り替えるため、とか?」


 ふと口をついて出た言葉だった。

 ギルと目が合う。


「……驚いた。アミール、おまえは本当に(さと)いな」


 本当に感心したのだろう。ギルは半身をお起こし、目を真ん丸にしてアミールを見ていた。


「あいつ、……シアは、頭脳明晰(ずのうめいせき)思慮深(しりょぶか)い男だ。だが、フレイア様の事になると、途端に冷静でいられなくなる。だから、気持ちを切り替えさせないといけない場合があるんだ。アミールも覚えておいてくれ」

「うん。分かった」


 アミールは素直に頷いた。ギルは微笑む。その顔はとても優しいものだった。本当にシアの事を(おもんばか)っていることが見て取れた。兄だと言っていたのは本当のことなのだろう。偶然とはいえ、ギル達と出会えたことは本当に奇跡だった。そうでなければ、母とは二度と会うことが叶わず、自分達を陥れた者達にいいようにこき使われ、自分の人生をすべて奪われていたに違いない。


(ギル達と一緒に旅が出来ることが本当に嬉しい!)


 アミールは心から幸運をかみしめるのだった。


お待たせいたしました!

読んでくださりありがとうございます。

楽しんでいただけていたら、嬉しいです!。

これからも宜しくお願い致しますね。

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