第46章 国短の表彰に於いて
さて、本日の対局を全て終えた我々であったが、此の後は表彰式より前に、今回の対局戦績を基に段級位が認定される人が夫々認定段級位毎に呼ばれ、認定状を受け取る事になって居た。段級位に関しては、高い方から順に呼ばれる事になって居る。特に一年生の我々にとっては、初めての認定大会なのだから勿論緊張して居る。そんな時、内田の名前が呼ばれた。確か内田は1級を持って居た筈であるから、其れで呼ばれると云う事は、真逆......。
「初段貰えたわ(笑)」
内田は嬉しそうに、初段の認定状を持ってやって来た。どうも初段以上は認定を貰うのに幾らか払わねばならないらしいのだが、引退試合たる内田にとっては最後の機会であるから、勿論払ったようだ。
そうして居る内に、僕も呼ばれた。なんと5級申請であったのにもかかわらず、3つ上の2級が貰えるらしい。僕としては昔8級迄取った事が有る程度だったので、非常に驚いた。
然し事件は此処で起こった。と云うのは、此の後稲田が3級を貰ったのだ。実際は僕よりも強い様に思える稲田がである。此れでは僕が調子に乗ってもおかしく無い(正当化)。
以下こうして、杉村7級、仁科8級、多布施9級、梶11級、矢境12級となった。と、此処で矢境は初登場である。いきなりで済みません。唯、今回は残念乍ら我が校からトーナメントでの表彰は出なかった。引率の武石先生が、
「ん、別にうちから表彰出えへんのやったらさっさと帰ったら良くない? いや此の儘残っとったら片付けやらされるし、帰ろ?」
との事で、我々は早々に帰る事にした。一応会場の前の階段で記念写真を撮ったのだが、級を残念ながら貰えなかった人が、認定状に見立てて国短のパンフレットを掲げたり、安西に至っては手つきだけ認定状を掲げる手つきをするなどして居た。
写真を撮った後、我々は円形に集まり、解散前に部長の一言と云う事で、内田が此れからも頑張るようにといった旨の話をして居たのだが、内田は唐突に焼肉を奢ると云う話を始めた。何でも我々が卒業する頃に囲碁部が廃部になって居なければ焼肉を奢ると耳に入ってきたので、僕は言質を取ろうとスマホの録音機能を作動させてから問い掛けた。
「囲碁部が廃部にならなければ、焼肉奢って呉れますか!」
「いや、囲碁部が廃部になって無くて且つ皆がちゃんと毎日、いや毎日って云うか継続して部活来て呉れたら、焼肉奢ったるわ」
流石に此の発言には盛り上がって仕舞った。僕は此の録音ファイルを「内田の遺言」と名付け、今でも大切に保管して居る。
かくして、国短大会は終わった。皆と共に帰り、僕は辻八丁目で内鉄から地下鉄へと乗り換え、家へと帰った。明日は月曜日である。そろそろ学祭にも本気を出さねばなるまい。だが其れより、今日の引率の武石先生以外の顧問に今日の結果を伝えに行かねばならない。稲田より高い棋力が出たと伝えたら一体どの様な反応が返って来るだろうか。兎に角明日の学校が楽しみである。僕は大方其の様な事を考え、床に就いた。そう、全く明日の日常を疑わずに。




