第16章 初夏の烏三条高校に於いて
我が校の此の大会への出場は、内田先輩が出場してみたいと言った去年から始まったらしい。実際未だ五月で新入生が入ったばかりなので体制が整わぬ為か、出場校は其処まで多くなかった。昨年は内田先輩の適当な道案内でかえって学校から遠ざかり一行は道に迷ったそうだが、今年は僕が地図を読むのは得意だったので早めに到着した。因みに途中先生は「暇だし此処で飲んでようかな」等と言って居酒屋を指差す等して居た。全く無茶苦茶な人だ。いや本当に。
さて、会場に到着し、靴を履き替え対局室へ行くと、中に居る出場者は皆制服を着て居た。対して我々は抑も制服が無いので勿論素晴らしく浮いて居た。
先ず受付にて参加費(一人五百円)を支払い、受付処理の後、我々は組み合わせの発表を待つ事にした。すると武石先生は、立国高校の顧問として来て居る芋原先生が元附高白川の副校長だと云う事に気が付き、挨拶に行った。こんなこともあるのかと僕は少し驚いた。
さて、そうこうして居る内に、初戦の組み合わせが決まった。国際桔梗ヶ原高校の名場と云う人が初戦の相手であった。対局票を交換し、互いに名を記入する。尚此の大会は全て互先、即ちハンデは無く、先番が何方かを決めるニギリもした。其の後対局したのだが、結果二十目ほど足りず負けて仕舞った。どうやら稲田先輩も負けたらしい。武石先生は、「まあそんなもんでしょ」と言って居た。
続いて第二局。摂陰高校の富田と云う人との対局である。今度は五目半差で勝つことが出来た。稲田先輩も二局目は勝ったらしい。今回の大会は一人四局で、二局目と三局目の間に昼休憩を取った。そういう訳で買い出しに行こうと言い乍ら、先生含む三人で学校を出、通り沿いに歩くとラーメン屋が在った。折角なので其処で昼食を摂ることにした僕等は、其の店の暖簾を潜った。
神宝軒と云う其の店では、醤油豚骨や味噌など、六種の拉麺を用意して居た。武石先生は買い出しと掛けて貝出汁、稲田先輩は味噌で、僕は醤油豚骨とした。因みに昼間は握り飯がついてくるらしく、少し得した気分になった。が、そんなことよりも武石先生が奢って呉れたのが最大の驚きだった。意外と優しいんじゃん、武石先生。
さて、間もなく三局目の時間である。僕は会場へと戻る間に気を引き締め直した。




