第14章【番外編6】 足立温泉に於いて
〈間もなく、足立温泉です。〉
発車から程なく、足立温泉に着いた。旅も既に折り返しが始まって居る訳だが、此処で何と二時間もの空き時間が発生した。其程本数が少ない路線なのである。折角の機会なので駅ノートを設置し、ツウィスター実況をしながら、近隣の温泉施設へ向かう事にした。足立温泉は、山間部の小さな温泉地で、交通量も多くは無い。但し高速道路が通って居り、其処に限っては結構な交通量が在る様に見えたが。さて、僕等はと云うと、舗装された登り道を十五分ほど温泉施設に向けて歩いていたのだが、そうして居る内に「足立温泉 富本泉」と云う大きな看板が見えて来た。建物の前には、広い駐車場が在ったのであるが、意外と車が多く、驚いた。どうも宿泊も出来る施設らしく、宿泊利用も多いのであろう。取り敢えず実況を切り上げ、建物に入ると、中もそこそこ広く、人も思ったより多かった。しかも地方だからか入湯料が安い。内装も綺麗だったので申し分無いと言えよう。早速入湯料を支払った僕と石川は、脱衣し温泉の引き戸を開けたのだが、其の瞬間、二人して掛けて居た眼鏡が一瞬にして曇って仕舞った。取り敢えず眼鏡を外し洗い場を見つけ、体を洗いつつ眼鏡を拭いた後、体を洗い終えてから辺りを見回してみると、随分綺麗で且つ中も広いことに気がついた。広い大浴場も在ったが、僕等は折角なので露天風呂に入ることにした。
露天風呂に行った僕と石川は、其の景色の良さに驚いた。美しい谷川や木々が、岩風呂に浸かり乍らよく見えるのである。また此の岩風呂には横たわれる様に竹が並べて在った。因みに打たせ湯も在ったのであるが、どういうわけか県条例に依って禁止されて居る様で、使用禁止となって居た。
さて、2~30分ほど風呂に居た僕等だが、そろそろ暑くなって来たと思った為、風呂から上がって水を飲んだり体重を量ったりしつつ服を着、ロビーに戻った。未だ発車まで一時間ほど暇が在ったので、珈琲牛乳等を飲みつつ、餅を買って二人して食べたが、固くて此れはまずかった。後日談だが、余りを持ち帰り焼いて食べてみると非常に美味であった...、即ち、つきたてで無かったのであろう。
さて、建物を出た後、丁度向かいに在った林の真ん中でまるで遭難したかの様な謎の茶番を実況した後、途中小さな神社に参拝して駅へと戻った。
よく晴れた初夏のこの日、僕等は此の後列車ですっかり寝てしまった。そして此の満足な心持ちと微妙な披露を感じながら、僕等は此の儘帰宅したのであった。




