13 囲まれました
エドとダンスを一緒に踊りましたが、ずっとエド特製大きな猫バージョンインチキスマイルを私に向かってしてました。何を考えているのでしょう。ダンスは特訓の成果もあり、そこそこ上手に踊れたと思います。意外にもエドも上手でした。でもその後が最悪でした。
ダンスの後、テラスに出て風にあたりに行こうと誘われ、いえ半ば強引に連れて行かれたのですが
「そうだ飲み物でもあるとよいですね」
と言って大きな猫を連れたままエドがいなくなりました。少しホッとして喜んでいたのですが、気が付くと全然知らないお嬢様方数名に囲まれていました。
友好的とは言い難い雰囲気、どう見ても多勢に無勢的いやーな予感がします。とりあえず、サマンサに教わったことを思い出して対処するしかないとは思うのですが、どう考えても思い当たる原因はエドしかいません。
お嬢様の中で真っ赤なドレスを着たセクシーなお嬢様が私の正面に出てきました。
「マリー様、初めましてわたくしデュラン ソウリス アンジェリークと申します」
デュラン家ああ、わかりました!デュラン侯爵家で王軍将軍してるデュラン ソウリスの長女アンジェリークですね。バトルカードにありましたよ!カードには艶やかさから社交界の薔薇と呼ばれていると書いてありましたが、確かに美人で迫力があります。
「こちらこそ、初めましてエディハム ウィンスター マリーでございます」
男爵家にわざわざ声をかけるなんて、お友達になりたいではない訳ではないでしょうからちょっと困りましたね。男爵家ですけれど、卑屈になる理由はこちらにはありませんし、何とかうまく切り抜けたいものです。
「王宮へは初めてのようですけど、今までは田舎の方にいらっしゃったの?」
田舎って……田舎じゃないんですけれど。まぁ、馬鹿にしたいのでしょう。
「ええ、地方におりました」
地方都市ですけれどね。ここよりも発展してます。
「まぁ、それは大変ね。それでは王宮のことも全く分からないのではないのかしら」
なるほど、田舎者扱い路線できましたか。
「ええ、皆様に教えていただいております」
「そうなのね。だからエドワード様も頼まれてあなたのお相手をしていらっしゃるのね大変だわ」
思いっきり違いますが……向こうから頼まれて迷惑してますという訳にもいかず、さて、どうして返したものかと考えていたら
「そうでしょう、エドワード様はお優しいからきっと断れなかったに違いありませんわ」
右横にいたアンジェリークお嬢様のお友達が言いました。
「そうですわきっと」
左横もヨイショ係なのですね。大変そうです。
「なのに、このドレスの色はどうなさったの?」
アンジェリークお嬢様、眉をひそめていますが、どういうことでしょうか?とりあえず、わからない時には曖昧スマイルで対応です。
「エドワード様がお優しいからといって、この色を選ぶのはどうかと思いますわ」
「そうですわ」
右横左横互いに相槌ですね。
選んだドレスの色が問題なのですね。選んではいけない色だったのでしょうか。ママさん達みんなこの色押しでしたけれど。エドにも止められませんでしたし。あの人自分の不利益になるのなら来る前にバッサリ私に言うはずですからね。暖簾に腕押し状態の私にアンジェリークお嬢様目を吊り上げて
「デビュタントは普通は白ですのよ、もしかしてそのこともご存じないの?」
と少し声を張り上げられました。
「信じられませんわ」
左横すかさず相槌ですね。素晴らしい連携プレーです。
右横勝ち誇ったように追随して、
「お互いに約束した婚約者がいる時のみ相手の瞳や髪に合わせた色を纏うことが許されますのに」
と言いました。
やっとわかりました。そういうことだったんですね。婚約者の様な格好をしている田舎者が目障りなのですね。
エドは黒のフロックコートみたいな服に銀のポケットチーフですから、私の瞳と髪に合わせた色、お互いの色に合わせた服装なら皆さん気になりますよね。どうしたらいいものでしょう。私が口を開かないでいるのが、腹が立ったようで右横が
「そんなことも知らないなんて、ありえませんわ。謝りなさい」
と言いました。
謝りなさいって、誰に? まさかアンジェリークに?
「そんなことも知らないなんて恥ずかしいと思わないの?」
左横また加勢ですね。仕方ありません、このまま無視するわけにはいかないようです。にっこり笑って余裕たっぷりに、
「家族もエド様も白を着るようにとは言いませんでしたし、エド様にもよく似合っていると言っていただきました」
と言ってみました。よく似合ってるは半ば兄さんが無理矢理言わせたんだけれど、嘘は言ってない。
「そ、それはエド様がお優しいからでしょ。それにつけ込むなんて恥知らずですわ」
「そうですわ」
斜め上な展開ですね。貴族の令嬢ってこんな人ばっかりなんでしょうか。
なんて言えば気が済むのでしょうか、面倒です。どうしたものかと考えていたら聞き覚えのある声がしました。
「誰が恥知らずなのでしょうね」




