300 憲法草案
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次回更新は05/10(日)
(1583 一条房基(61))
織田内閣が発足しても体制は織田幕府のままだった。内閣が認めた領主が領地運営を行う。法治を進めるのも議会が決めた法令ではなく、内閣が主導で法令を考案し、議会で評定が行われ、修正が入って制定されている。織田内閣が最初に本腰を入れたのは憲法の制定であった。議会はあっても選挙はなかった。おおまかに言えば衆議院は旧幕府が指名した地方領主から構成され、参議院は朝廷で参議だった者と僧侶を含めた各分野から推薦されて旧幕府が認めた者とで構成されていた。旧幕府の独裁体制から合議制に移行するためには選挙が必要で、選挙制度を見据えての憲法が求められていた。
転生者達を中心に憲法草案が作成された。国民主権、基本的人権の尊重、三権分立などからなる。日本国憲法にあった平和主義(第9条)は明記されなかった。国民主権は朝廷関係者から強い反発があった。私は太政大臣を辞してからは内閣と距離を置き、帝や摂家の相談役のようなことをしていたが、内閣から朝廷との調停を依頼されることになった。
御所に参内し、上皇、帝、摂家当主、摂家前当主など限られた人たちに集まってもらった。
『内閣から説得を頼まれました。最初に申し上げますが、皆様方のお味方をすることはできません。国民主権は憲法草案の冒頭に書かれてあります。根幹であり、内閣は引くことはないからです』
「説得する気はあるのか?房基公は何をしに来たのだ?」
『公家が生き残る道を提案しに来ました。新しい時代が来ました。帝をお守りするために一人でも多くの公家が力を持つことが必要です。公家は武力を持ちません。対話や交渉で武力や暴力に対抗するしかないのです。皆様方は幕府が憲法という法律で帝の力を削いで無力化しようとしていると感じられているかと思います。ならば同様に法律で彼らを縛ることもできるのです』
「帝を軽んじることを許すわけにはいかない!」
『軽んじているわけではありません。国の行く末を決めるのは誰か一人によるものではなく、国民一人ひとりに持たせるつもりです。議会で一人一票持つように国民一人ひとりに一票を持たせるということです』
「そんなことができるわけがない!」
『衆議院では十万石毎に一票加算されていきます。土佐は一票しか持ちませんが、尾張は五票持っています。これを石高ではなく人数で集計し、各地で代表者を決めて委任する体制を整えることを目指しています。検地とともに戸籍を作っているのはその準備であり、憲法制定も準備の一つなのです。だから内閣が引くことはないのです』
「「「・・・・」」」
『参議院は勅選と内閣の推薦で議員が選ばれていますが、100年か200年も経てば民衆から選ばれるようになる可能性があります。公家も力をつけて存在意義を示していく努力が必要でしょう。帝のためでなく国民のためと意識を変えていただきたい』
「公家が生き残る道、と言われたが、どのようなお考えか?」
『遷都では公家は特別扱いされました。名古屋京に屋敷が用意され、移住も旧幕府が費用を負担してくれた。参議院の議員を輩出している堂上家は政府から俸禄が出ている。一方、地下家はギリギリの生活をしている。不慣れな新しい都では職も無い。京に残った一部の公家は生活に困窮している。これらを底上げしたいと考えています』
「具体的には?」
『まずは憲法制定に協力する。そして公家の経済基盤を強化する。石見銀山など御料地の多くを政府に譲渡する。同様に全国に散らばっている公家の領地も政府に譲渡する。その代わり、旧幕府が召し上げた寺領を中心とした天領を公家それぞれに再配分させる。それぞれ100石から1000石の領地を増やせればいいでしょう。暮らし向きはずいぶん楽になるはずです』
「内閣府は信用できるでしょうか?」
『今は大きな変革の中にいます。戦は無くなった。遷都も譲位も成った。相手の立場になって考えてみてください。ここでの反抗や抵抗は逆効果です。むしろ積極的に協力すべきです。急速に日本統一が進んだことで、内閣府は人材不足です。食い込む絶好の機会だと捉えるべきだと思います』
朝廷が全面的に協調路線に変更したことに織田内閣は驚愕した。私は内閣に入るよう閣僚ポストを提示されたが辞退し、代わりに教育大学校設立の許可を得た。基本的に読み書きの素養があり、教養のある人材を活用するために、職のない地下家の子弟を中心として教員を養成する。各種大学校の教育課程、地方にできるであろう高等教育機関、名古屋京での各屋敷での家庭教師など需要はいくらでもある。教員に向いていなくても教養さえあれば文官に就職することもできるだろう。
政府はできても憲法はまだです。なお、大日本帝国憲法が制定されたのは明治22年。
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