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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第四話 旅立ち

目が覚めると、空には月が出ていた。

私は、森にできた小さなクレーターの中心にいた。

吸血鬼の、再生能力が作用するのは肉体だけだ。下着や服は再生されない。

肌に直接当たる風は、冷たかったが、そんなことはどうでも良かった。


「お義母さん!」


私は義母の姿を探した。

吸血鬼は夜眼がきく。深い夜の闇も探すのを妨げることは無く、すぐに見つかった。

見つけた義母の頭部は頭蓋が陥没し、頬の骨が皮膚を突き破り腐敗が始まっていた。

義母の変わり果てた姿に、人間への憎悪がふつふつと湧き上がってきた。


「ちょっと待っててね、お義母さん。必ず身体も見つけてあげるから。」


私は義母の身体を探すため、瓦礫の山へと向かった。



家にあったものは全て壊れていた。

崩れた煉瓦を運び、折れた柱を何度も取り除いた。

花瓶や霊薬の入った瓶は割れ、衣服は灰になっていた。

服を手に入れるため、軽い瓦礫に変成魔法を使った。

変成魔法は、物体の質量が同じであれば、生き物以外という条件付きであるが、物体を作り変えることができる魔法。

義母に教えてもらった大切な魔法である。

瓦礫に埋もれた家具や折れた剣を見て、義母との幸せな記憶が蘇る。

探している間、私の涙は止まらなかった。

吸血鬼の再生力があるため無傷であるが、裸足で瓦礫の山を歩き周り素手で瓦礫を取り除いていたため、手足は血や土で汚れていた。


朝日が昇るまで辺りを探したが、結局頭部しか見つからなかった。



私は、家の近くにある木の根元を手で掘り、丁寧に頭を埋めた。

義母がこの木に咲く花が好きで、よく二人で楽しんだ思い出の地であり、被害が一番少なかった場所だ。

義母との思い出を思い出すたび、胸が締め付けられる。

涙はもう枯れてしまったのか、流れてこなくなってしまった。


私は瓦礫の山と化した家を変成魔法で剣や弓などの武具や服に変成し収納魔法で自らが作った空間にしまった。

本来変成魔法は物の価値を変える魔法であるため義母から使用は制限されていた。


けれど私は決めたのだ。


これ以上は奪わせない。


禁呪だろうが禁忌だろが全てを使ってやる。


私の身体を流れる血潮の一滴まで奴らを殺しつくすために使うと。


私は瓦礫を全て変成し、土魔法で荒れた大地を整えた。

汚れた体は生活魔法で清潔にし、義母の墓を作った木のもとへ向かった。


「多分これから私がすることはお義母さんは嫌がると思う」


「でも大切な家族がここまでされて黙っていられないんだ」


「ごめんね。お義母さん。」


私は義母の墓に一輪の花を添えた。


「行ってきます」


私は義母に別れを告げ黒いローブに身を包み墓を後にした。


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