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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第四十六話 異世界人


いつもよりも一人多い遅めのご飯を静かに食べた後、私達は今後の方針について話あっていた。


「さてと、今後の予定を決める前に話しておきたいことがあるんだ」

「何をそんな改まって、いまさら——」

「エロ猫、うるさい」

「誰がエロ猫ですって、このお漏らしワンコ」

「はいそこ、喧嘩しない。ご飯抜くよ」

「「はい……」」


余程ご飯を抜かれるのが嫌なのか二人はあっさりと喧嘩をやめた。

私はコホンと咳払いをしてから話はじめた。

新たに現れた脅威について。


「昨日私は死んだ。二人を転移させた後、転移してきた人間とその仲間に殺されたんだよ」


私が殺されたと言った瞬間、ノアとルナの目が鋭くなったようなに感じた。

殺意や怒気といった負の感情が滲み出ていた。


「でも私を殺したのは人間じゃなかった……」

「人間じゃない?」

「それってどういう」


私は獣人二人の驚きに応えるように続ける。


「彼らは『異世界人』少なくとも私の『虎目ノ計測(アザゼル)』で視た彼らはこの世界とは別の世界の住人だって映ったの」

「それで?」

「彼らは全員が化け物みたいに強かった。戦いとかそう言う次元じゃなかった。手も足も出なかったの」

「つまり化け物みたいに強い奴らが人間の味方にしてるってこと?」

「味方?どうなんだろう……わからない」

「うん?」

「私を殺したは『異世界人』の『勇者』だった。でもあの場を逃げるために助言をしてくれたのも同じ『異世界人』だったの」

「つまり人間達に味方する強すぎる化け物がいるってことでしょ?ならやることは変わらないじゃない」

「化け物なんか相手にしない。でも邪魔するなら化け物も殺す。あと『勇者』は絶対殺す」

「俺もよくわからないが、つまりは何もしないなら近寄らず、敵なら殺すということか?」

「はぁ……そうだね。あくまで殺すのはこの世界の人間だものね。なんか私、馬鹿みたい」


私は本当は『異世界人』も殺すべきかということを話そうと思っていたのだが、どうやら話すまでもなかった。

彼らは他の世界の住人であったのだから、この世界の人間ではない。

つまりは、標的の対象外である。

ならば私達のとる行動は何一つ変わらない。

この世界の人間を殺し、それを妨げる者も殺す。

それが同じ獣人であれ、魔族であれ私達は殺す。

それがたとえ常軌を逸した化け物であれ、私達の道を阻む存在は何であれ排除する。


「それじゃ『異世界人』については今までの方針と一緒で。次はこれを見て」


私は収納魔法から大きな紙を取り出した。

これはルナが貴族の屋敷から持ち帰ってきた彼女の戦利品、この世界の地図だ。

私は地面に大きな地図を広げるとそれをみんなで囲むように座り直した。


「これは私が持ち帰ってきた地図ね」

「そうだよ。えっと今、私達がいるのはこの辺の森の中なんだけどね。本当はこれから国の中央に向かって移動しようと思ってたんだけど、正直『異世界人』の強さが異常過ぎて今のままだとこの国を潰せないと思うんだ」

「ならどうするんだ?」

「別の国を先に潰そうかなって。今無理に攻めずに力を貯めつつ他を潰していく。このアイオーン王国の東にあるイエリス帝国っていう国を落としに行こうと思うんだけどどうかな?」


地図には大小様々な大きさの国が点在していた。

最も広い国土を持つアイオーン王国、無数の島からなる国ヘシヨン皇国など全部で十数個の人間の国が地図には書かれていた。

当然のことながらこの地図は人間の国の地図であるため、人間以外の種族の国は書かれておらず地図の下の方は途中で切れていて何も書いていなかった。


地図には囲郭都市ユーノは、アイオーン王国の東の端に描かれており山を挟んでイエリス帝国がそこにある。

このままアイオーン王国を攻めても返り討ちにあってしまうだろう。

今は力を貯めるときなのだ。


「私はアリスについていく」

「私もアリスに賛成よ。アリスがそう言うなら私はどこへでもついていくわ」

「俺の意思なんて関係ない。俺はアリスお前のものだ。お前の望むままに」

「うーんこれって相談じゃないよね……。まぁいいか。ありがとうみんな。それじゃ私達は東へ向かう。次の標的はイエリス帝国、目的は人間の殲滅」

「うん」

「了解よ」

「御意」


私は影から狼達を数匹呼び出すとその背に跨った。


「それじゃあ行こうか」






私達は狼の背に乗り森の中を静かに走っていた。

いつもはノアやルナが狼に振り落とされないように叫びながら走っていたのだが、私が体を魔法で固定していることがバレてしまったため仕方なく三人の身体にも魔法をかけたのだ

森の中を疲れ知らずな狼に乗りながら移動する私達の移動速度はとても速い。

だがそれでも山を一日で踏破することはできない。

単純に距離があると言う訳ではない、森や山の中には当然他の生き物達も多く存在する。

虫や動物、そして魔物がいるのだ。

私の魔物でも当然歯が立たない相手は多くいる。

普段であれば陸と空の両方から魔物達を先行させ安全かつ速く移動しているのだが、先の戦闘の影響で今はそれができない。

紫晶ノ契約(メフィストフェレス)』の代償は想像以上に大きかったのだ。

今私の使える隷属した者達は、屋敷に居た人間と魔物達数十匹のみである。

人間達はともかく今まで殺した魔物達が使えないのはまずい。

単純な戦力の低下だけでなく索敵能力の低下のせいで敵の発見に遅れてしまい、結果慎重に移動しているために移動速度が普段より遅くなっていた。

安全に移動するためというのもあるのだが、何よりも獲物を見逃さないために——。


魔物も今の私達には必要な獲物ではある。

しかし、魔物が多くいるということはそれを狩る者達も森にはいるのだ。

私達が最も忌み嫌う存在であり、殺すべき存在が——。


「見つけた」


私の呟きと共に狼達は徐々にスピードを落としその場に止まった。


「アリスどうしたの?」

「まだ日は暮れてないわよ」

「獲物よ」


狼が急に止まったことを不信がった獣人二人であったが、私の一言で表情が変わった。

普段の緩んだ愛玩動物のような顔から獰猛な獣の様に。


「数は六人、剣二、弓一、杖一、御者一、子供一。商人とその護衛ってとこかな。ルナ、私と一緒に剣を持っている奴らを先に片づけてその後、私は弓を殺す」

「まかせなさい」

「ノアは杖」

「わかった」

「クレハはノアを守ってね」

「心得た」

「他はどうするのよ」

「生け捕りで」

「ふーん。まぁいいわ」

「生け捕り?あ、わかった」

「?一体どういうことだ?」

「気にしないでいいよ。それじゃ行くよ」


私の生け捕りという言葉に獣人コンビは察しがついたのだろうが、呆れた顔をしている。

しかし、これは必要なことなのだ。

申し訳ないとは思うが、クレハが本当に人間を殺せるのかどうかここで試させてもらう。

さぁ命を奪う覚悟を私に見せておくれよ。


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