第四十四話 事後
穴の開いた服と地面に落ちていた石を使って変成魔法で新たに服を作り着替えていく。
「フリフリ付けたら可愛いかな?うぅん、よしこんな感じかな」
自分でも中々可愛い服ができたことに満足した。
今まではあまりこだわらずに作っていたのだが、作ってみると案外楽しかった。
ついでにクレハやスライムに服を溶かされた二人の分も作っていった。
「鬼人族ってことは着物でいいかな?まぁ両方作ればいいかな」
私は辺りの石や枝を次々と変成していった。
「これで機嫌とれればいいけど。はぁ。そろそろクレハ起きるかな」
私は変成してばかりの服を一度しまいクレハのもとに戻った。
クレハのもとに行くと既に彼女は気が付いており身体を起こしている最中であった。
「クレハ起きた?」
「アリスか、なんだ、また続きやるのか?」
クレハは瞳を伏せ私の噛んだ場所に手でさすりながら言った。
傷口は既に塞がっており、傷跡を残すことなく新しい綺麗な肌ができていた。
クレハの態度は最初の男勝りな態度とは異なりひどく扇情的に見えた。
毛布の隙間から除き見える肌、恥じらった表情は同性の私ですらドキッとするほどであった。
「したいの?」
「……アリスがしたいなら……いいぞ。俺はお前のものだからな。でも、次は優しくしてくれ……」
本当はここでグッと我慢をして、気の利いたセリフを言うべきなのだろうけど、私にはそれができなかった。
私は瞳を緋色に染めた。そっとクレハを抱き寄せ、治したばかりの首筋に牙をゆっくり沈めていった。
クレハは声が漏れない様に手で口元を塞ぐが、艶やかな悲鳴は漏れ聞こえる。
私は一度牙を抜き首筋を伝う血を舐めとるように舌を這わせていく。
漏れ出た血を綺麗に舐めとったあと、不意にクレハの顔を見ると、のぼせた様な顔で私を見つめていた。
「アリス、俺はお前のものだ。ならお前は俺のものだよな」
「えっ、どういう——」
「こういうことだ」
クレハはそう言うと私の顎をクイッと上げ顔を近づけ、もう片方の手を背に片手を回し逃げられないようにした。
ゆっくりと距離を縮め、近づいてくる彼女の唇を避ける手段はいくらでもあったのだろう。
けれど、吸血中であったために頭の回転は鈍く、突然のクレハの行動に私は目を瞑ることが精一杯であった。
キスされる。
そう思いギュッツと目を瞑ったのだが、その感触は一向に訪れることはなかった。
恐る恐る目を開けると、顔を真っ赤に染めたクレハが目の前にいた。
「……その、放してくれないかな」
「……あぁ」
至近距離で見つめ合うというのは、これほどまで恥ずかしいものだろうか。
私の顔もクレハと同じ様に真っ赤になっているのだろう、顔が熱く熱を持っているのがわかる。
私は出来るだけ普段通りの口調で解放を要求すると、クレハあっさりと両手を引いた。
吸血行為には、快楽を伴う。
おそらくだが、優しく行為を行ったことで彼女を性的に興奮させてしまったのだろう。
そして、キスの直前に何ともタイミング良く正気に戻ったのだろう。
決してクレハのせいではないのだが、私に恥ずかしい思いをさせた腹いせくらいはさせてもらう。
私は乱れた衣服を整えながら未だに悶々としているクレハに言った。
「クレハのエッチ」
「あれは違う!って俺はその、エッチなんかじゃない。エッチなのはお前だ」
『エッチ』という単語だけ妙に小さい声でクレハ講義してきたが、私は持ち前のスルースキルで回避する。
収納魔法から先ほど作った服を取り出しながら私はクレハに言った。
「いつまでも裸でエッチなクレハ、服着る?」
「エ、エッチじゃない……その、服があるならくれ」
「着物と普通の服、どっちがいい?」
「着物があるのか?なら着物をくれ。ん?」
服を受け取ろうと伸ばした手から服を遠ざける様に抱きかかえた。
「その前に言うことあるよね」
「えっと、さっきは悪かった。これでいいか?」
「ダメ『エッチなことをした、いやらしい私でごめんなさい』って言えば許してあげる」
「なっ……エッチなことをしたいやらしい私でごめんなさい。これでいいか?」
「うん。許してあげる。はいどうぞ」
「あぁ、ありがとう」
私は笑顔でクレハに着物を手渡した。
「『エッチなことをしたい、やらしいクレハ』着替えたらご飯にするからね」
「俺はそんなこと——。んんー」
「はははは」
クレハは先ほどの発言を思い出しプルプルと震えていた。
私はそれをしり目に獣人二人のもとへ向かった。
獣人二人のところに行ったのだが、そこには凄惨な惨状が広がっていた。
事態を招いたのは私なのだが、思わず目を背け回れ右をして立ち去ろうか迷った。
目の前には、全身をスライムに拘束された裸の少女達が地面に転がっていた。
静かなので気絶しているのだろうかとおもったのだが、違った。
悲鳴が聞こえなかったのは、どうやらスライムに口元を塞がれているようで今なお二人は、意識を保っていた。
私はスライム達に影に戻るように命令した。
スライムから解放された二人は、裸のままゆっくりと立ち上がると私に向かって魔法を放ってきた。
「死ね、『金剛杭』」
「死になさい『増殖』」
ノアの放った杭にルナが更に上から魔法かけることで、大きな杭の数が増え私に放たれた。
私は急いで『碧玉ノ暴食』を行使し、魔法を吸収した。
幸い全て吸収することができたのだが、事態は好転などしてはいなかった。
両手で身体を隠しながら獣人二人が、氷の様な冷たい眼を向けてきていたのだ。
「やぁ……元気」
「死ね」
「元気だと思うのかしら?」
「いや、そもそもこれは二人が私に復讐なんてしようとしたことが原因で……」
「死ね」
「最低」
「はい、やり過ぎました。ごめんなさい」
有無を言わさず雰囲気になぜか私は謝ってしまった。
私が襲われたはずなのに、反撃しただけなのに不公平である。
「死ね」
「早く服、寄越しなさいよ」
「はいはい、なんでノアは『死ね』しか言わないのよ」
「死ね」
「あぁそれはノア『漏らしちゃったのよ』」
「漏らした?」
そう言うとノアのいた地面に目を向けると楕円状に地面が湿っているところを発見した。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
ノアは大声で叫ぶと羞恥のあまりに膝を抱えて蹲ってしまった。
普段から表情の乏しいノアとは思えない反応にとまどってしまっていた。
「アリスあんたのせいなんだから責任取りなさいよ」
「……」
ルナはそう言うと私から自分の服を奪い着替えに行ってしまった。
取り残された私はとりあえずノアの機嫌を取るために行動をするのだった。
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